EMDR治療#11 前夫のDVと向き合う


原家族から逃げるように18歳で家を出て、家族の愛を渇望していた私は二十歳で結婚し、新しい家族を作った。

一緒に暮らしてみると、想像以上に私も夫も未熟で、子育ては生きがいになったが、夫婦という大人同士、他人同士の関係性はとても難しかった。


頑張りたい私と、何も頑張りたくない夫と価値観を擦り合わせる為に、大きな労力を要したけど、結局は夫の暴力性を目の当たりにすることになった。


事前カウンセリングでも、あまり話さず、治療が必要とわかっていても、1人では触れることはできなかった。

そもそも恋愛から始まった夫婦だから、時間の経過とともに「キレイな思い出」に書き換えられていた面もあり、わざわざ1番酷い記憶を掘り出し再体験することは、恐怖だった。


いつもの手順で、視覚、聴覚、触覚を刺激しながらのEMDR治療。

話しながら無意識に目をつむってしまうから、視覚だけより、聴覚触覚も必要、私の場合。


あの頃の部屋の隅々まで蘇り、身体反応もあの時と同じになってしまう。

言葉と身体的な暴力も思い出すけど、不思議と痛みはなかった。

おそらく麻痺してたんだろうけど


掘り下げていくと、

1番怖かったのは、夫がキレるのを待っている時間だった。

前にキレてから3日経ち、1週間くらいになると、気持ちが沈んでいく。

夫がきげんよく家事を手伝う日ほど、実はキレやすく、、、


むしろ夫がキレると
どこかホッとしていた私がいた。


暴力の痛みより、
嵐を待つ時間の方が恐怖だった。


涙と嗚咽の中で、
ぼんやりしていた恐怖と対面し、

あの時出せなかった感情を全て吐き出し、

安全な記憶へと修正していく。


「思い出した時の辛さは1〜7でどのくらい?」

治療の前後に確認される。 

6から始まり、途中で3になり、
足りないところを掘り下げて、ようやく1になった。

いつも0にはならない。



「事実は変わらないから0にならなくても大丈夫」

そう、あれは事実だった。

なかったことにはならない。

でも、もう思い出しても大丈夫。

良い思い出ではないけど、
恐怖で眠れなくなるほどではない。

ただの悪い思い出。


試しに、
今目をつぶって思い出してみた。

ちゃんとリソースが機能して、修正されてる。

よかったよかった。


次はいよいよ今現在にいちばん近いトラウマに向き合う。

治療は順調にすすむが、次が気になってしまい、どこか気が晴れなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?