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遠隔診療IoTで妊産婦を救うーインド・Janitriの挑戦 #起業家シリーズレポート

こんにちは!NPO法人ARUN Seedでインターンをしている、大学院博士課程の後藤です。
新入生・新社会人の方々は、そろそろ新しい環境に慣れてきた頃でしょうか?
私は現在、大学院の研究と両立してARUNイベントチームに所属し、イベントの企画・運営に携わっています。またこのnoteの管理担当でもあります。

さて今回は先月(2022年3月26日)開催した、ARUNのオンラインイベント・起業家シリーズの様子をお届けします!!

本イベントでは、妊産婦の健康状態を遠隔診療するIoTデバイスを展開するインドのベンチャー企業Janitri(ジャニトリ)より、Arun Agarwal(アルン・アガーワル)CEOをお招きしました。

「そもそも起業家シリーズって何?」
「どんな内容のイベントだったの?」
「イベントチームってどんな仕事をしてるの?」
「インドの妊産婦の現状って?」
など、このレポートを読んだ方に、起業家シリーズ、そして途上国で活躍する社会起業家に関心をもっていただければ幸いです。

ARUN起業家シリーズとは?

認定NPO法人ARUN Seedによる、途上国の社会起業家を紹介するイベントです。
本イベントでは毎回起業家を招き、起業に至った経緯や、これまでの取り組み、今後の展望などを語っていただいています。
また、ご参加の皆さまからの疑問・質問をもとに、起業家と議論を深める場も設けています。
ご参加いただいた方には、社会起業家の想いやその取り組みを知っていただき、彼らを支援する社会的投資や、ARUNの活動に参画いただきたいと思っています。

こんな方におすすめ!
途上国✖ビジネスの現場の声を聴きたい
将来はソーシャルビジネスや起業をしたい
途上国支援に関わる人とつながりたい
ESG投資やインパクト投資に興味がある

今回のイベント概要

イベントバナー画像

【名称】認定NPO法人ARUN Seed 起業家シリーズ
   「インド発ー距離と格差を超えて、妊産婦を救うDXイノベーション」
【日時】2022年3月26日(土) 15:00~17:00
【プログラム】
   15:00-15:25 オープニング:本イベントの目指すところ
   15:25-16:00 第1部:Janitriの事業概要、事業の現在地
   16:00-16:10 ブレイクアウトセッション:気づきの共有
   16:10-16:50 第2部:トークセッション
   16:50-17:00 クロージング
【実施媒体】Zoom

妊産婦や新生児の死亡・疾患の99%は途上国で発生

ーーイベント前半部では、アルンCEOよりJanitriの事業概要をプレゼンしていただきました。

事業説明SS

アルン インドを含む途上国の多くは、母子保健分野で様々な問題を抱えています。なかでも出産時に起こる母親と新生児の死亡・疾患は深刻です。世界では年間およそ25万人の母親と200万人の新生児が分娩時に亡くなっていますが、その99%超は途上国で起きています。

インドの妊産婦死亡率や新生児死亡率は、ここ数十年で改善してきました。しかしながら人口が多いため、死亡数では世界で最も深刻な状況にあります。

安心で安全な出産を支える母子保健が、インドをはじめとする途上国で求められているのです。

分娩時の母子保健の課題はモニタリング装置の不足に

アルン 私は元々ヘルスケアに関心があり、大学院では生命医工学を学びました。卒業後インドのヘルスケア、特に妊娠・出産に関わる母子保健の現状を調査するため、2年間国内の病院を100ヶ所以上訪問し、数多くの医師・看護師・妊産婦と出会いました。そのなかで見えたのは、分娩時に母子の健康状態をモニタリングする装置が不足していることでした。

母子の健康状態には、重要なパラメーターが2つあります。母親と胎児の心拍数、子宮の収縮圧です。これらを正確に可視化できさえすれば、出産に関わる健康課題の8割以上は解消できると考えられています。

では、インドではなぜモニタリング装置が不足しているのでしょうか。それは既存の装置が高価であることと、専門知識をもった医療従事者が不足していることに起因します。50%を超える国内の分娩施設は、高額すぎるという理由でモニタリング装置を備えていません。また既存の装置は、母親の腹部の決められた位置に正確に取り付けなければならず、専門のオペレーターが必須でした。このような状況は過去40-50年間変わっていませんでした。
安価で装着が容易、かつ遠隔診療も可能なモニタリング装置が求められていたのです。

革新的なモニタリング装置で安全な出産を実現

アルン 私たちは数年間の調査とプロトタイプ開発を経て、出産に関わるこれまでの課題を解決するモニタリング装置をリリースしました。

それが、母子の健康状態を測定する”KEYAR”と、測定データを可視化するソフトウェア”DAKSH”です。KEYARは母親の腹部に取り付けるパッチ状の装置で、母親と胎児の心拍数、子宮の収縮圧を測定します。簡単に装着できるため、専門のオペレーターは不要です。また、軽量かつどんな姿勢でも測定可能なため、妊産婦は自由に歩き回ることができます。
測定データは逐次DAKSHに送信され、オンライン上で管理されます。医師はリモートでデータにアクセスし、遠隔で診断を下すことができます。データを分かりやすく理解できるように、ユーザーインターフェースに配慮しているほか、多言語にも対応しています。異常値を警告するアラート機能もあります。

キャプチャ

コストに関しても、既存の装置の数分の一に抑えている点も私たちの製品の強みです。これまでにインド国内の170以上の医療機関と、4万人を超える妊産婦にサービスを提供してきました。

”Janitri”はサンスクリット語で”母”を意味します。Janitriのビジョンは、テクノロジーを通じ妊娠から出産に至る過程で生じる母子の課題をなくすことです。これからもビジョンの実現に向けて、事業を進めていきます。

参加者も積極的に意見交換

ーーアルンCEOのプレゼン後に行われたブレイクアウトセッションでは、二つのグループに分かれ、参加者の皆さまどうしで意見交換していただきました。
話が尽きないあっという間の10分間でした!

メインターゲットは低~中所得者層

ーーイベント後半には、アルンCEOとARUN代表功能のトークセッションが行われました。

トークセッションSS1

功能 皆さま、ブレイクアウトセッションお疲れ様でした!鋭い疑問・質問をたくさんお寄せいただき、ありがとうございました。アルンCEOに訊いていきたいと思います。

まず、Janitriのメインターゲットはどの層なのでしょうか?ビジネスモデルについても教えて下さい。

アルン 私たちが想定する受益者は、低~中所得者層の妊産婦です。医療機関が私たちの製品を購入し、妊産婦は医療費を医療機関に支払うことでモニタリングのサービスを受けます。私たちの製品は$300-1,000で3つの価格帯を設定しており、病院の規模によってどのモデルを導入するかは異なります。

陣痛が始まった段階で来院した妊産婦にモニタリング装置を装着してもらい、出産までの間必要なデータを測定します。データに基づいた医師の判断のもと、母親は安心して出産にのぞむことができます。

功能 なるほど。妊産婦はあくまで医療機関の受診を通じてサービスを受けるわけですね。

アルン その通りです。私たちのビジネスモデルはBtoBtoCです。妊産婦自身が判断を下すことは決してありません。必ず専門医がデータを見て適切な診断を下します。

強みはデータの活用

功能 競合他社と比較してJanitriの強みはどこにあるでしょうか?

アルン 場所を選ばず出産期のデータを蓄積し活用できる点でしょう。大手ヘルスケア企業が手掛ける既存のモニタリング装置には、データをクラウドで管理する機能がありませんでした。また装置に重量があり、センシング位置に制限があるため、測定中母親は身動きをとることができず、長時間のモニタリングは困難でした。

私たちの製品は軽量なIoTデバイスであるため、妊産婦に負担をかけることなくデータを集めることができます。こうしたデータは今後、臨床研究の面で活用されていくはずです。

トークセッションSS2.11

世界中の出産をモニタリングで変革

功能 最後に、今後の展望について訊きたいと思います。これからの5年でJanitriが目指すものは何でしょうか?

アルン これから取り組みたいことは二つあります。一つは、遠隔診療サービスの拡充です。インド農村部は都市部と比較すると、出産に関わる医療従事者やモニタリング装置が質・量ともに不足しています。私たちの製品を活用すれば、都市部の専門医が診断を下しながら、現地の助産師に適切な指示を与えることができるでしょう。

もう一つの目標は製品・サービスをより多くの人に届けることです。インドの出産件数は年間3,000万件にのぼります。今後5年でその半数の人々に私たちのモニタリングサービスを提供したいと考えています。また、モニタリング装置が不足している国・地域はインドだけではありません。将来的にはアフリカや南米の途上国にも展開し、世界中の出産をモニタリングで支えたいですね。

ーーアルンCEO、そしてイベントにご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!

集合写真

登壇者プロフィール

Arunプロフィール写真

Arun Agarwal(アルン・アガーワル)
Founder&CEO - Janitri

インド有数の私立工科大学Vellore Institute of Technologyで電子工学学士、生物医学工学修士を取得。大学ではテクノロジーで学校教育に取り組むベンチャーを設立し、1万人以上の生徒を支援した。その後はヘルスケア分野に参画し、政府出資のヘルスケアプロジェクトや特許アナリストに従事。政府系企業BIRACの母子保健プログラムから支援を受け開発した、妊産婦向けIoTデバイスのプロトタイプをもとに、2016年、Janitriを創業。

次回起業家シリーズ

ARUN起業家シリーズは、4月も開催します!今週末です!!

2022年4月23日(土)
Mosabi(シエラレオネ)
Chris Czerwonka / Founder & CEO
小規模・零細企業家向けにビジネスに特化したモバイル教育コンテンツ・金融サービスを提供する社会的企業です。

詳細・お申込みはこちら!
https://arunseed202204event.peatix.com/

今回ご参加いただいた方はもちろん、ご参加が叶わなかった方にも、次回お会いできることを楽しみにしております。

おわりに

いかがだったでしょうか。
ARUNはこのように途上国の社会起業家の活動を紹介するイベントを定期的に開催しています。

ご興味をお持ちになられた方は、ぜひ次回のイベント(4月23日)にお越し下さい!

またARUNでは現在インターンを募集中です。一緒にインターンとして活動してみませんか?お待ちしています!

✴︎インターン紹介ページ: https://arunseed.jp/arun-intern-introduction 

✴︎インターン募集要項: https://arunseed.jp/archives/5800 

✴︎FB: https://www.facebook.com/ARUNLLC 

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