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筋肉のXバランスと側弯症脚長差


はじめに

あるくん歩行体操教室、姿勢トレーナーの東 史(アズマ フミ)です。

この記事では、 “あるくんボード”を使用した側弯症トレーニングで、モデル男性の脊柱側弯改善と脚長差の関係考察から、筋肉の「Xバランス」の重要性についてお話しさせていただきます。

側弯症と脚長差について

側弯症とは、背骨が左右に弯曲または回旋した状態です。

脚長差とは、側弯症など背骨の歪みや骨盤の歪みよって、片側に負荷がかかることで起こる左右の脚の長さの違いです。

別々の問題と考えられている方もいらっしゃいますが、当教室では、側弯症は必然的に脚長差を伴うと考えています。

Xバランスとは

「Xバランス」は、体の筋力バランスがアルファベットのXに見えるからと、私が作った造語です。側弯症の運動指導で観る後ろ姿、姿勢チェックで観る写真の後ろ姿が、アルファベットのXに似ていると、いつも思います。
そして、単純に見えるから言っているだけでなく、ちゃんとした存在する筋肉の関係性です。

Ⅹバランスのイメージ

アナトミートレイン

人間の体は、アナトミートレインと言われる、筋肉のつながりで足の裏から脳天までつながっています。(つながりはいくつもあるので詳しくは検索してみてください)
筋肉を包む筋膜は、全身に3次元で張り巡らされていて、第二の骨格ともいわれます。
この筋肉がつながったまま、「引っ張り合うバランスを保っている時」と、「バランスが崩れている時」をイメージしてください。
脚長差のある側弯症の後ろ姿は、癖のある筆記体のXそのもので、骨盤の歪みによって、元のバランスを取り戻すのを難しくしています。

整ったⅩバランスと崩れたⅩバランス

あるくんボードのトレーニング

”あるくんボード”は、側弯症改善のために開発した運動器具です。
左右対称、前後対称に筋肉を強化するのに、このアナトミートレインのつながりを利用します。
側弯症のように、歪みで体の筋肉が凝り固まっている時は、トレーニング前に全身を解してから行うこと、手すりの使い方を工夫することで、足裏から筋肉の緊張と緩和を繰り返し、姿勢矯正を可能にします。

トレーニングに役立つ使い方 ホームページで、手すりの利用方法など詳しく紹介しています。


モデル男性の脚長差発生の経緯

仕事の姿勢がそのまま残る


仕事中の姿勢の再現

モデル70代男性は、右足を少し後ろに引いて体重をかけた状態で、肩を丸めて下を向き集中する立ち姿が、仕事で長時間になるそうです。
若い頃は、別に問題を感じなかったそうですが、仕事で右に寄せた筋肉の習慣が、そのまま残るようになっていました。
構築性側弯症で背中が硬く、反り腰猫背で、長い距離を歩けない、足が前に出ない、ふらついて転倒しそうになることが日常的にあり、問題を感じて、教室に来てくださいました。

姿勢矯正トレーニング開始前の姿勢

姿勢分析と改善計画

教室では、後ろからと横からの写真を撮ることで、姿勢分析を行っています。側弯症の改善が難しいのは、歪みや捻じれがあることで、運動が思い通りにいかないことです。
写真を観て、解す必要のある場所や筋力強化の必要な場所など、筋肉のつながりを考えて、改善計画を進めていきます。レッスンで、意図した結果が出ているか姿勢のチェックは、改善計画が進むほど必要になります。

脊柱弯曲改善と足腰強化

順調に進む改善計画

姿勢矯正の経過①
姿勢矯正の経過②

初めの時にあった、反り腰猫背の改善と脊柱の弯曲の改善を進めていくと、随分と長身のイメージに変わりました。
全身の歪みが改善することで、”あるくんボード”のトレーニングが、大きな筋肉のつながりで動かせて、足腰の安定感も増していきました。

約4カ月後のレッスン前の姿勢チェック(経過②)で、全身が整って見えたのと、中殿筋の働きやふくらはぎの筋力の改善なども感じる後ろ姿に、次の段階に移ることにしました。

※背骨の整え方は、下の記事で紹介しています。


自己メンテナンス計画

次の段階 自己メンテお試し期間

今まで週2回のレッスンで、姿勢矯正を進めてきましたが、レッスンを週1回に減らして経過をみることに変更しました。
多少の歪みが残るものの、週1回のレッスンで姿勢保持できるかを試すことを提案しました。

日常のメンテナンス指導

仕事中の筋肉の使い方が、大きな問題であることを説明しました。
仕事中や仕事の後にも、逆側に体をひねる動きや、体重移動をこまめに行うことなど、体重の偏りを極力減らす工夫なども提案してみました。

〈補足〉
モデル男性は、ご自宅でトレーニングスペースが確保できないとのことで、”あるくんボード”は教室に来た時と、近くに住むご親戚の家に行った時にだけ使用していました。

メンテナンス計画失敗

あらゆる問題点を考えて

側弯姿勢 背中の柔軟性ビフォーアフター

側弯症で固まって動かない背中(2023.9.11)から、姿勢矯正を行い背中の柔軟性も出るように、あらゆる可能性で、自己メンテできる体づくりを目指して運動指導を行いました。
ビフォーの何とか、下を向いて屈む状態から、アフターの自然に背中を丸められる(2024.3.18)までに変化しました。

しっかり整えてもしっかり崩れる

姿勢矯正レッスンのビフォーアフター①
姿勢矯正レッスンのビフォーアフター②

上の比較写真は、4月1日と4月8日の1週間違いのレッスン前とレッスン後の写真です。レッスン後にはしっかり整うようになっていましたが、気になるのは1週間後しっかり崩れていることでした。

改善が週1回では難しくて、週2回に戻す必要があるのか、もしくはモデルの姿勢矯正がこれ以上無理で、ずっと運動指導によるメンテナンスが必要なのか考えるようになりました。

教室の目標は、歪みに気付けて自己管理できる体づくりです。

果たして、この方は、お仕事の習慣に勝てないのだろうか?
教室の目標は、年齢的に無理なのだろうか?
レッスンの度に、結果を見て方向性に悩んでいました。


計画の行き詰まりと問題点

短期間で側弯症重度に戻る事実

2週間レッスンが空いた時の脊柱の弯曲

ゴールデンウイークで教室の休みもあり、レッスンが2週間空きました。心配だけど、それも良い判断基準になるかと思いました。
その結果が、思っている以上に姿勢の状態が悪くて驚きました。
柔軟性がでるように頑張ってきた背中が、脊柱側弯でガチガチに固まっていました。この写真の後にレッスンで、背中の凝りは解れて楽になっていただきましたが、簡単にここまで戻るのはショックでした。
毎回、整えて、残っていくはずの正しい筋肉の習慣が、こんなにもろいとは思ってもいませんでした。

見落としがないか考え、姿勢分析を振り返り問題点を探しました。

問題点こそが突破口

整ったレッスン後の写真で、ずっと改善ができなくて残っている問題がありました。右足の不自然さです。
頭からお尻の位置まで、対称に整うのに、「足が後ろに残る」「足の角度が捻じれる」「中央によって残る」など、問題がありました。
その日によって違いはありますが、気になるのは必ず右足で、右の腿裏も伸びてない印象と、左肩に服のシワが多く残るのが気になっていました。

この問題の解決が、突破口かもしれないと考えました。

Xバランスの改善計画

アプローチ方法の見直し

今まで、Xバランスを無視していたわけではありません。
”あるくんボード”の運動では、左右の運動ではXバランスを意識して、筋肉のつながりを感じることも可能ですし、前後の運動では、骨盤周辺のストレッチと筋力強化も可能です。

モデル男性のように、「常にXバランスを崩す使い方をする場合」「脚長差が大きくXバランスの改善が難しい条件にある場合」には、もっと骨盤の歪み矯正を意図的に行い、Ⅹバランスのアプローチも強く行うことが必要なのだと考えました。

・骨盤周辺のストレッチで準備運動する
・Xバランスで引っ張り直すトレーニングをする
上の2つを行っていくことにしました。

骨盤周辺のストレッチ

Xバランストレーニング

Ⅹバランストレーニングの様子

あるくんボードのXバランストレーニング

”あるくんボード”のトレーニングを、上図のように行っていただきました。
手すりの持つ位置や、目線の位置などに注意していただきました。
左右で筋肉のバランスが、大きく違っているのが分かります。

この初回のXバランスの比率が、左右で同じになるように、改善していきたいと考えています。

Ⅹバランストレーニングの結果

Xバランストレーニングでの変化

1回目トレーニングの後(中央)の姿勢は、いつもより背骨の歪みが残っているように感じますが、腰から両足が左に流れていた前の週(左)より、腰の安定感が改善しました。2回目(右)は、下半身と上半身ともに、回旋が取れて、脚の非対称が大きく改善しました。
動きの面では、腰回りが柔らかくなり、今までより、腰から背中への柔軟性が改善していました。

今後更に、骨盤の歪みに伴った、脚の筋肉への影響を取り除いた上で、再び脊柱の弯曲を整えてからの変化に期待したいと思います。

トレーニングの経過から見た結論

骨盤の歪みと筋肉つながり

正常な骨盤と歪んだ骨盤の筋肉のイメージ

上図のように、骨盤が正常な時は、筋肉のXバランスは保たれやすいが、歪んだ骨盤では、筋肉のつながりが屈折して伝わります。
本当の意味での側弯症改善は、骨盤の歪み改善と筋肉のXバランス改善はイコールで、同時に行う必要があると考えられます。

骨盤とXバランスの関係性を考えると、筋膜が第二の骨格と言われることに、改めて合点がいくと感じます。

Xバランスの法則

⑴背骨の歪み、脚長差が確認できる時に、Xバランスも崩れている。

⑵Xバランスが整わないと、側弯症は簡単に再発する。

⑴⑵、が言えるのではないでしょうか?
Xバランスのコントロールが、側弯症の予防改善の運動療法を効果的にする鍵になるのではないかと考えます。

脚長差の改善

側弯症脚長差について投稿した↓記事「コンパス理論」は、脚長差の脚を縦に走る筋肉についてでした。
今回の「Xバランス」は、交差して足に影響を与える骨盤が作る脚長差について、お伝えさせていただきました。

脚長差改善は、エビデンスが無く不可能であるとも言われていますが、筋膜に支配された筋肉の関係性を理解して臨めば、難しくても可能であると考えます。


生徒さんの変化の続きは、下の記事で↓

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Ⅹバランストレーニングの結果とともに、脚長差改善トレーニングをまとめました。Ⅹバランストレーニングの前に、必要な準備運動をすることで、脚長差改善の期間短縮が可能になります。(下の記事)

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