解剖学で、側弯症の謎が解ける! 垂直軸を構築しなおす「あるくんメソッド」
1.はじめに
側弯症の歪んだ背骨を元の動く背骨に
次の記事が、『あるくんメソッド』の考案に至った理由で、パッケージデザイナーの経験から医療や理学療法といった考えとは、別の視点から考え始めたものでした。
側弯症の歪んだ背骨を、運動で元の動く背骨に戻したいと願って、姿勢トレーナーになり、体操教室をオープンしました。
側弯症の背骨の歪みが、体に及ぼす影響は、研究すればするほど奥深く、尽きることのない発見があります。
それは、人それぞれの習慣が違うことと、骨格は全身繋がっているために、背骨だけで考えても解決できず、レッスンでは、一人一人の立体パズルを解くような難しさを感じています。
コルセットやインソールの着用と運動制限について
〈側弯症コルセット、インソールについて〉
『あるくんメソッド』では、側弯症コルセットや脚長差のためのインソールの装着は必要ありません。
腰回りの筋力低下で、腰痛の心配がある時は、筋力を補うために、市販の布製のコルセット使用を、一時的におすすめしています。
『あるくんメソッド』では、筋肉の不均等の改善を行う時に、脚長差の改善を第一に進めますので、インソールで補う必要はありません。
〈運動制限について〉
生活上で必要なことは、特に制限しておりません。
運動軸の改善が見られるまでは、他の運動を行うこと、健康のためのウォーキングも距離は抑えていただきます。
中高年では、仕事の姿勢から起こる、筋肉の習慣の影響が強いため、仕事中の姿勢を伺って、仕事の後のメンテナンスの運動指導をしています。
筋肉バランスの改善が進むと、生活の中の偏った習慣は、自然と無くなるのが理想で、補助具で習慣を矯正することはありません。
ー生活の中の偏った習慣の例ー
・靴を履く足の順番や、階段など踏み出す足が左右のどちらかに決まっている。
・脚を組む時に、上にする脚が左右で決まっている。
2.『あるくんメソッド』と解剖学
解剖学の運動面と運動軸
人の体の運動面と運動軸は上の図の通りです。
解剖学では、体を左右で分ける面と、前後で分ける面と、下半身と上半身に分ける面を運動面と言い、次の3つになります。
①矢状面:正中矢状面とも言い、体を左右で分ける面
②前額面:正中前額面とも言い、体を前部と後部で分ける面
③水平面:上半身と下半身で、体を二分する重力方向に垂直な平面
そして、運動面に対して垂直に、3つの運動軸があります。
A垂直軸:③水平面に対して垂直で、正中矢状面と正中前額面が重なる軸
B矢状‐水平軸:②前額面に対して垂直になる前後方向の軸
C前額-水平軸:①矢状面に対して垂直になる左右方向の軸
歩行など、空間における運動は関節を中心とした体節の回転運動で、その回転中心が運動軸になります。
『あるくんメソッド』と解剖学の一致
側弯症運動療法の考案を始めたきっかけは、全く違う分野の考え方が元でしたが、継続して側弯症改善に取り組むうちに、解剖学の運動面と運動軸は、まさに『あるくんメソッド』の核となる考え方そのものです。
一度、崩れてしまった運動軸を、どう元に戻していくか?
運動軸を作れななくて、非対称になっていく体、運動しても非対称にしか筋肉が付かない体を、どうすれば対称に筋力強化できるのか?
このことをずっと考えてきました。
骨格の歪みは、側弯症の改善を阻んだ上で進行させます。骨格が歪んでいることで、何をしても正しい運動軸で運動できなくなり、歪みを強める運動になります。
逆に考えれば、運動面と運動軸を作ることに徹した運動をすることが、側弯症をなおすことになるのではと考えました。
3.脊柱側弯症は解剖学で説明できる
⑴側弯症と矢状‐水平軸とのズレ
上図は、軽度な猫背や反り腰といった姿勢ですが、前傾している時点で、矢状‐水平軸から実際の運動軸がズレます。
矢状‐水平軸と実際の運動軸がズレ、運動による体節の回転運動が、体の前と後で、不均等に発生することが考えられます。
本来は、均等であるはずの前と後の運動の強さに、強弱が生まれます。強弱の発生は、1ヵ所でおさまることはなく、互い違いに積み重なります。
⑵側弯症と前額‐水平軸とのズレ
本来、左右対称である背骨に、側弯が発生すると、上図のように前額-水平軸で、対称に起こるはずの体節の回転が、左と右で不均等になることが考えられます。
左右の歪みは、運動を頑張っても、姿勢の改善が難しい理由になります。
本来は、均等であるはずの左と右で運動に、強弱が生まれます。強弱の発生は、1ヵ所でおさまることはなく、互い違いに積み重なります。
⑶側弯症と垂直軸のズレ
上図のように、背骨で側弯が発生すると、垂直軸から左右にズレている背骨の部分では、体節の回転が背骨に捻れを作り、左と右の不均等を固定化させていくことが考えられます。
捻れの発生は、弯曲した背骨が、柔軟性を無くし硬化していく理由になります。
脊柱側弯症の運動軸
側弯症は、原因不明の病気といわれていますが、解剖学の運動面と運動軸で考えると、何が起こっているか分かります。
⑴矢状‐水平軸のズレと⑵前額‐水平軸のズレは、単独で存在するのではなく、下図のように、連動して全身に折り重なり、足部から頭部へと問題が積み重ねられた状態になります。
上図は、矢状‐水平軸から実際の運動軸がズレ起こると思われる、筋肉バランスの非対称です。脊柱側弯症は、この非対称に加えて、前額‐水平軸からのズレが原因で、左右にも筋肉の非対称が重なります。
複雑に折り重なり筋肉の強弱が発生したところに、⑶垂直軸からズレることで起こる背骨の捻れで、鍵をかけるように改善を困難にするのが脊柱側弯症といえます。
4.乱れた運動軸を整理する運動療法
複雑な運動軸を整理する
側弯症では、上図にある矢状‐水平軸、前額‐水平軸、垂直軸と実際の運動軸が、全てズレて凝り張り捻じれが発生します。
『あるくんメソッド』は、毎回のトレーニング前に、姿勢分析から予想して、準備運動で左右前後の凝り張り捻じれを解除します。実際の運動軸のズレは、個々の側弯のカーブや全身のバランスでも違うため、同じではありません。
同一人物でも、側弯の状態が進行する時に、バランスが変化するように、元の動く背骨に改善していく過程でも、全身バランスは変化していきます。
『あるくんメソッド』では、その時の状態に合わせ、凝り張り捻じれの解除を行い、運動条件を可能な限り整えて、左右と前後に、対称にこだわってトレーンニングを行っていただきます。
運動軸が複雑になることを防ぐ
『あるくんメソッド』では、立位のトレーニングは、”あるくんボード”のみにすることで、間違った運動軸で、筋肉の非対称を強めない方法を選んでいます。
立位で運動をする時は、全身のどこで間違った運動軸が反応するか分かりません。全身の関節の回転運動が、正しく行われるためには、運動のフォームはシンプルである必要があります。
側弯症のように、運動軸が複雑に崩れている時には、正しいフォームで運動が出来ているかの確認が最も重要になります。その観点から考えると、運動軸を正す必要がある時は、関節の動きを複雑に使うことは逆効果です。
脚関節を全てを動かして使うスクワットや、体を捻るヨガポーズなどは、複雑で運動軸が正しく行われない可能性があるため避けるべき運動と言えます。
5.元の動く背骨を目指す運動療法
筋力低下や骨格の歪みから脱出するために
脊柱が弯曲した状態では、いくら努力して運動しても、傾いた運動軸での運動になります。運動軸が、でたらめな状態で努力するより、本来の運動軸に近い状態を模擬的に作って運動をすれば、筋肉バランスを理想に近付けること、そして、効率的に筋肉を増やすことにもつながると考えました。
そのまま運動すると、必ず歪みが生まれるために、模擬的に運動軸を作ることを助ける運動器具が必要と考え”あるくんボード(特許取得)” ”かなめボード(特許取得)”を考案しました。
運動軸を整える”あるくんボード”の運動
〈あるくんボード左右の運動〉
”あるくんボード”の左右の運動は、上半身でB矢状‐水平軸を維持して行われます。
もちろん、これが側弯症の方には難しいことなのですが、天板を傾斜させて片足に重心をのせて、体の垂直を意識することで、A垂直軸が保ちやすくなり、①矢状面で分けられた、体の左と右で、筋肉バランスを構築しなおすことが可能です。
〈あるくんボード前後の運動〉
”あるくんボード”の前後の運動は、C前額‐水平軸を維持して行われます。
これも、側弯症の方には難しいことなのですが、天板を傾斜させて前足踵に重心をのせて、体の垂直を意識すること、後足踵に重心をのせて、体の垂直を意識することで、A垂直軸が保ちやすくなり、②前額面で分けられた、体の前と後で、筋肉バランスを構築しなおすことが可能です。
上半身を整えるため”あるくんボード”を補う器具
”あるくんボード”の運動は、下半身を強化して、全身を繋げることができます。しかし、弯曲した上半身を、直接、解して鍛えるまでのことはできません。
脊柱の歪みが重度で、筋力低下がある場合にも、大腰筋や脊柱起立筋群を、直接的に解して働きかけ、上半身だけで運動軸を整える必要性を考えました。
座位で上半身を整えるトレーニング器具が、”かなめボード”です。
〈かなめボードの骨盤と背骨の連動トレーニング〉
”かなめボード”の運動は、弯曲した背骨も、左右前後にたわまして解し、腰椎、胸椎、頸椎の連動した動きを取り戻すことが可能です。
客観的に背骨の動きを観ることで、可動域が正しく行われない理由や背骨の動きの引っかかりの問題解決をしていくことで、側弯や回旋して動かなかった背骨は動きを取り戻します。
上の写真の使い方以外に、頭部と胸部を止めて、腰部だけを動かすインナーマッスル強化のトレーニングも可能です。
腰椎、胸椎、頸椎の連動性を高め、インナーマッスルの強化する、どちらもがサポートで行うことが可能で、筋力低下があって自発的な運動ができなくてもトレーニングが可能です。
そのため、年齢性別や障害を問わず、座位さえ取れれば、理想の可動域に近付けて、筋肉の伸縮を続けることで、体幹強化が可能になります。
6.まとめ
ここまで、
1、『あるくんメソッド』の簡単な説明
2、解剖学の運動面と運動軸について
3、側弯症で起きている運動面・運動軸の問題
4、乱れた運動軸を整える準備運動
5、垂直軸を再構築する運動療法
であることについて、お伝えしてきました。
『あるくんメソッド』では、側弯症を病気であるとは考えていません。運動軸の乱れたことによる問題の集積であると、考えています。
どんな姿勢も、悪化した状態から自己努力での改善は難しいものです。
姿勢分析ができて適切な運動指導があれば、軽度の側弯症なら運動軸を構築しなおして、元の動く背骨にすることは、3カ月程度あれば可能です。
そして、体の垂直軸を構築しなおす『あるくんメソッド』では、筋力低下が深刻でも、垂直軸の構築と、本来の動く背骨にすることを、諦める必要はありません。
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