【キャリア形成】国際協力プロフェッショナルの「実践的」外国語の身につけ方

1.はじめに

 「学問に王道なし」という言葉もあるが、実は世の中の全てに、いわば「王道」というか「定石、定跡」というものが実はあるのではと気がついたのは、つい最近のことである。

 ここでは、主に外国語としての「英語」と他の外国語を身につけるためのコツみたいなものにふれてみたい。

2.実践的な外国語とは

 まず、「実践的」とわざわざ括弧付で断っているのは、以下の理由による。私は、かれこれ10数年前に、開発コンサルタントの海外部の業務部といういわば渉外・契約管理を行う部署に新入社員として配属になった。年間約40~50件のアジア・中近東・アフリカの海外業務(主にODA案件が多かったが)を扱うこの部署では、日本での国際協力事業団(JICA)や国際協力銀行(JBIC)(当時は海外経済協力基金(OECF)が円借款を扱っていた。)や外務省、農林水産省などの、いわばドナーである日本の役所との日本語での文書のやりとりも多かったが、相手国政府とのやり取りや成果品(調査結果の報告書や設計図面等)は、基本的に英語やフランス語で書かれることが多かった。

(その他、主要な開発援助機関の成果品の利用言語として、スペイン語、中国語、ロシア語などがある。これは、国連の公用語6ヶ国語(英、仏、西、中、露、アラビア語とも対応するだろう。たまたま我が社の案件の対象国が英語圏とフランス語圏が多かったからである。)

 しめしめ英語は仕事で使うから、きっと‘自然’とうまくなるだろうと思ったのは、大きな勘違いであることに気がついたのは、かれこれ3~5年も経ってからだった。上司から、「(アラビア語はともかく)英語をちゃんと勉強しておけよ」と口をすっぱく何度も言われていたのにもかかわらずである。

 仕事の都合上、「ビジネス英検」という検定試験を、なんどか会社で受けさせられたが、なかなかGrade A(137点以上)に達することができないまま、この英検自体がなくなってしまった。(結局、最終ベストが134点のGrade Bのままでした。)

 これはまずい、外大のアラビア語をでておきながら、アラビア語はできないし、英語もできないと社内で話題になっている。社内の外大の先輩方の手前もあるし、これは本気で英語の勉強をしなければならないと思ったのが、入社5年後、ほぼ5年前のことである。

 ここで、はっきりいっておく。開発援助に仕事として携わろうというするものは、英語ができることはマストである。「フランス語やスペイン語も少しはわかるしぃ」なんて言いたい人がいるかもしれないが、仕事で使うレベルは遊びや観光旅行で使うのと次元が違うことを肝に銘じてほしい。「フランス語」や「スペイン語」ができるというのは、仕事で使えるということである。確かに、それらの言葉ができるに越したことはないが、全世界のほとんどの情報が英語で書かれている世の中である。逆に、英語ができなくて、仏語や西語だけでコンサルタントの業務が勤まることは、まず100パーセントの確率でないといってよいのではないか。

では外国語を効率的に身につけるのには、どうしたらよいのか。次にそれを述べたい。

3.外国語をものにする3つのコツ

① 身につけようとするレベルを設定しよう。

② 学習法について人の意見を聞こう。(しばやん流、語学のツボ)

③ 生活の中に、学習を組み込もう。

 以下にポイントを説明する。

① 身につけようというレベルを設定しよう。

 これは、いわば何をどこまでやるかという初期設定の場面である。開発コンサルタントは、いわば先進国でない全世界の国での事業の対象としているため、現地の人々と英語や仏語などだけでは、コミュニケーションを図ることができない。確かに、政府の役人や上層部のエリートやインテリは英語などのいわば先進国の言葉ができる場合が多い。また逆に、ホテルやレストランや観光に携わる普通の人たちも英語ができるかもしれない。しかし、私は以下のように学習すべきレベルを設定している。

英語:

実践(実用)英語のレベルとしてTOEIC 730点をコンスタントに取れる実力は、最低でも必要だと考える。(理由は後述する。)

現地で使われている現地語(主要な公用語):

国によって、公用語として、主要な現地語の数種類を選定する場合、主要な現地語と英語、仏語などの組み合わせ選定する場合などがあるが、とりあえず主に活動する地域で使われている主要な現地語について、とりあえず日常(旅行)会話レベルは身につけたい。

上記のレベルを表にすると以下の通りである。

英語現地語レベルの表

注: *運用語とは、実際に書いたり話すときに使いこなせる語彙をいう。辞書のレベルとは、辞書を引くことにより理解できる語彙レベルで、通例、大学以上のインテリ層は、どの国においても80,000~100,000語を知っているといわれている。

② 学習法について人の意見を聞こう

 さて、上記のレベルを仮にめざすとしても、なぜそうなのか、どのように学習を進めるかについて、それぞれ各人自分の経験と環境に照らして、もう一度考えなおす機会をぜひ設けてほしい。

 私個人の話に戻るが、いざ英語を真剣に勉強しなくてはならないと気がついてからも、一体、何から取り掛かっていいのか、思い悩む日々が続いた。結論からいうと、大学入試までの英語の勉強法と、実践(実用)英語の学び方は、別物だと考えたほうがよいということである。

 巷には、それこそ、「ビジネスレターの書き方」なり、「契約英語の基礎」なり、初級から上級まで、網羅的な入門書や個別の専門分野に関する英語の本が、五万と並んでいる。はっきりいって、大学までの英語は、かなり分野の偏ったものだということを知らなければならない。偏った経験に加えて、中途半端な専門英語を身につける前に、ここでは、TOEICという実用英語のテストを自分の実力を測る手立てとして活用することをお薦めしたい。

 会社では、ビジネス英検という試験を推奨されていたが、結局、数年前に試験そのものがなくなってしまった。日本では実用英語検定(英検)が、以前より英語資格の権威的なところがあったが、問題は、受験した級に対して受かったかすべったかしかない。一年に受けられる回数が絶対的に少ない。(基本的に年間、春期と秋季のみ)3級以上は一次試験と二次試験と2回の試験を受けなければ合格できない。(海外出張など物理的な制限の多い社会人には厳しい)などというデメリットがある。したがって、以下に述べるTOEICとなる。

TOEICテストとは

 TOEICとは、Test Of English for International Communicationの略であり、アメリカのETS(Educational Testing Service)という公共機関が作成している。

このテストを受けた実感的な特色は、下記のとおりである。

1.単語や構文が、いわゆるアメリカで標準的にフォーマルに使われている言語レベルである。

2.リスニングテストが充実しており、実戦的な出題内容である。

3.長文や読解、作文問題についても、学術的な問題ばかりでなく、ビジネスレターで使うような商業的な言い回しや法律的な話題が取り上げられることもある。

4.とはいっても、決して専門用語の知識を問うのでなく、あくまでアメリカの知識人としての言語運用能力を問うている。

5.スコアが最低10点から990点までの5点刻みの偏差値となっており、試験回数や時期に関わらず自己の勉強の成果を図る目安となる。

6.全世界的に実施されており、国際的な英語の公的資格となりうる。

7.受験回数や受験可能な都市が多い。

 必ずしも上記にいうようなよい点ばかりでもないのだが、話を先に続けよう。

 私が、実践英語のマスターを考えたときに、何が難しかったかといえば、まさに何をどうやって、どのくらいまでやればよいのか、皆目検討がつかなかったことである。よい「学習の仕方」の本を手にした。それは、池田和弘氏の下記の本である。

○ 池田和弘 『200点以上アップのためのTOEIC最強の学習法』 日本実業出版社 1995

ある意味で行き詰まっていた私に、この本は、まさに目から鱗の効果をもたらした。特に、「第3章 TOEICアップのための神話破壊-日本人の学習法の決定的間違い」の部分だけでも、全く一読に値する。この本では、池田氏自身の英語習得の道を具体的な数量データと共に、その苦労を経て体得した実践的な学習法を惜しげもなく開示している。(池田氏の英語学習本は、最近では数種類販売されており、比較的に手に入れやすいと思われるので、ここでは細部に立ち入らない。ノウハウぎっしりなので、実際に手にとってみてほしい。)

私自身の語学のツボと考えていることは、後述させていただくが、とにかく人の勉強の仕方を本で読んだり、実際に話して教えてもらうことは、単調でつらい学習の日々を楽しいものにしてくれるに違いない。

③ 生活の中に学習を組み込もう

 ある意味で、このことが一番、難しい。確かに、外国語を学ぶ必要性も目標レベルも、漠然とでも定まった、しかし、では具体的にどういう風に実行しようか、というところで、多くの人はつまづきがちである。確かに、必要性は感じるけど、会社も忙しい改めて机に向かう時間もないし、ラジオ講座も、毎日は聞けないようなあというのが現実であろう。

 ただ確実にいえることは、語学というものは、毎日少しずつでもやっていかないと、なかなか学習の波にのせられないということだ。ただし、日々の生活のマネージメントは、すなわちその人自身の価値観や生きかたの問題である。したがって、ここでは、ヒントのみ簡潔にのべる。

締め切りを決めよう

これは、できるようになってからなどといわず、とにかくTOEICの試験を申し込んで強制的に、いついつまでに何かをしなければならないところに自分を追い込んでしまうということだ。実際の会社の仕事でも同じだが、締め切りのない仕事はいつまでたっても完成できない。大体、2,3ヶ月前から試験の申し込みができるのだから、とにかく初めてでも何の準備もしていなくても、申し込んで、試験日までとにかく頑張る。とりあえず、2、3回試験を受けるだけで、試験の様式にもなれ、自分の弱点も見えてくるものだ。それから学習戦略を練っても遅くない。

日常生活に時間を組み込む

 たしかに、改めて机の上でテキストを開くことは、かなりつらい。となればこそ、生活習慣の中に学習を組み込むしかない。かろうじてというか、私がやっていることは、トイレの中にテキストと辞書と蛍光ペンを置くというただそれだけのことである。そのテキストは、暗記専用で単語集とか短文集で、どこで読むのをやめてもかまわないもので、確かに、一日、5分か10分のことだが、大体、毎日2~4ページ分ぐらいこなすことができる。これは、二日酔いだろうがなんだろうがどれだけつらい日でも、とにかく日々の行動一緒なので、ほぼ間違いなく実施することができる。

 継続は力なりとはよく言ったもので、一日、どんなに小さな一歩でも歩を進めているという事実は、非常に気持ちよく精神安定上にも非常に安らかになれる。通勤途中に英語を耳で聞いたりとか、いくらでもやり方はあるはずだ。毎日少しでも習慣として語学学習にあたることをお薦めする。

4.しばやん流 語学のツボ

さて、ここでは、私が日々、実際に気をつけている点を下述する。(英語、その他の言語にも共通なコツである。)

① イラスト入りの簡単な会話の本を使って、まず基本的な2000語~3000語の単語を身につけよう。

今までの学校で習うテキストでは、あまりにイラストが少なく、文法もやさしい基礎から始めるという編成をしているものが多すぎ、特に独習で語学を身につけようとする場合、テキストの半分も行かないうちに挫折してしまうケースがよくある。本格的に勉強するならともかく、気楽に、まず挨拶でも覚えてみようという人にとっては、詳しい文法説明は、とりあえずは不要である。また、初級文法のテキストでは利用される単語に、かなりの偏りがあり、難しい抽象語はならったけど、日常生活ですぐ必要となるやさしい誰でも知っている単語を知らないということが多々ある。

② まず、文法体系の全体を俯瞰してしまおう。

その際に、日常的によくつかわれる項目から押さえるほうが効率的である。日本人は、英語を中学生から学びはじめ、大学でもフランス語やドイツ語を第2次外国語として履修するケースが多いが、これらゲルマン系やラテン系のいわばローマ字で綴られる言語体系には共通点も多い。しかし先に書いたように、その他の圧倒的多数の国々では、全く違った言語体系の言語が日常的に利用されている。そんなときに、英語を身につけるつもりで他の言語をマスターしようというのは、ちょっと現実的でなく、全く違った文法体系をもった別物として、どこがどう違うのかという観点で、全体を概観し、違っているところを重点的に攻めていったほうが、はるかに効率がよい。

③ 生きた文例で、重要単語と構文を、そのままひとかたまりのものとしてインプットしよう。

動詞や前置詞、形容詞、副詞と名詞の語順やつながりは、実際に使われているパターンをそのまま覚えるしかない。(これを統語法や連結法という)よく日本人の英作文は、文法的に正しいうんぬんと言われることがあるが、語感というか、この場面ではこの単語、この動詞や名詞に続く前置詞や形容詞、副詞は、この語しかありえないというしかない場面がよくあるネーティブにしてみても、これは理屈ではなく、とにかくこれしかないという言い回しは、意外と多いものである。そんな時は、うろ覚えの単語を、文法的に正しいと思われる別の単語につなげてなどと、頭で考えたら、会話はつながらないし、そのとき一瞬のタイミングを逃してしまう。日本語にも、決り文句が多くあるように、ちょっと気になる言い回しは、現地の人が使っているそのままを丸暗記してしまうのに限る。(これは、ビジネス英語の習得にもいえる。)

④ 単語や文章は、カタカナでもよいから口にだして覚えよう。

「発音できない単語は書くことができない」とも、よく言われているが、会話の場面では特にうろ覚えの単語を使うことは、結構度胸がいる。まあ、相手も人間なので発音がおかしければおかしいでちゃんと直してくれるので、会話では、とにかく話すことが大事であるが、どうせなら単語や文章を読む時点からアウトプットをある程度、意識しておいたほうがベターである。またアジアやアフリカの言葉って、結構、変な発音の単語や短文があって、それはそれで口にだしてみると楽しい。あと、気をつけたいのが、同じローマンアルファベットを表音文字として採用している言語でも、それぞれの言語によってアルファベットの文字の読み方が違うということ。日本式のローマ字読みでは全く違った発音となってしまい、相手の言っていることと書いてある文字が全く結びつかなくて、この綴りをなんでそう読むの?ということは、非常にママあることである。

さらに気をつけたいのが、日本語の普通の単語やちょっとした感嘆詞などの言動が、相手の国では、隠語やタブー語になっていることもあるということ。ちなみに、こればかりは気をつけようとしてもどうしようもなくて、現地の友達からこっそり教えてもらうとか(注意してもらう)とか、その都度、気づくようにしないとどうしようもない。ただし、このボディランゲージとか特定の単語による失敗談というのは結構、笑い話やバカ話の話題となるので、他人の失敗談を笑って聞きつつ自分も同じ間違いをしていないのかこっそり胸に手を当てるしかない!

⑤ 外国人として恥ずかしくない礼儀正しい言葉をつかおう

やはり、他の国の言葉を外国人として学ぼうとするものは、その国の文化や言葉に対して最低限の敬意とつつしみをもって学習にあたりたい。たぶん、日本人の誰もが感じていると思うが、外国人が、くだけた日本語を使うことに対して、必要以上に感情的に反応してしまっているのではないか。これは、いい悪い以前に、人間感情の問題なのである。大阪時代のこと、英米人だと思うが、それなりに教養のありそうな外国人が関西弁で、しかもくだけた日本語で話し掛けてきた日には、日本人をバカにするなとわざと無視したこともあった。日本人ならまだ許せるものの、他人に言われたくないというか、俗語というか卑語を、外国人が使うのはもっての他だと思う。それは、親密さを表すとかそういうレベルの話でなく、感情的に、私は受け付けられない。

 これは、日常社会でも日本語の世界でも同じことで、いい年をした大人が、学生言葉やタメグチを叩くというのはもっての他で、やはり、特に外国では、外部からきた人間である限り、例えその言葉を知っていたとしても自分では使わないという、品位と節度をもったうつくしい言葉を使いたいものである。

 ここで、英語資格のTOEIC試験に話を戻すと、この試験の730点レベルというのは、スコアレベルのBを意味し、評価ガイドラインとして、「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。…」とあり、このレベルが例えばアメリカの大学留学の目安となっているように、大学教育をうけるような教養レベルの目安と言えるのである。

5.言葉の先にあるもの(おわりに)

 今までに述べてきたことは、誰もが無意識にやってきていることかもしれないし、多分、語学の達人達にはとっては、もっとすごい秘訣なりノウハウをもっているに違いない。私の意見といったところで、先人が書いたり身近な友人や先輩からの話で聞いたことかもしれない。この点については、全く先人にお礼をいうしかない。

ただ、ここまで書いてきて、ふと大阪外国語大学のアラビア語の恩師である福原信義先生(現在は教授、当時は助教授)の以下の言葉を思い出した。これは確か1年生で入学して間もない頃のことだ。

「あなたたちは、外国語の専門学校に入ったんじゃないんです。大阪外国語大学というと外国語だけを勉強していると外部の人から見られがちだけど、英語では、Osaka University of Foreign Studiesと言っているように、言葉を通じて文化や歴史や外国のことを学ぶのです。単に言葉ができるようになりたいのなら、専門学校に行けばいい。」

多分上記の趣旨のことを、どんな文脈だったかはわすれたが、アラビア語の授業の時に話されたかと思う。確かに今思えば、この言葉を1年生の時に聞いていてよかったと思う。専攻語の授業に4年間追われつつも、言葉の学習のその先にあるものについて夢と希望をもちつづけられたと思う。

 とはいえ、言葉なんて、趣味というか遊びでやるもの、別に強要されたり無理に勉強させられるものでは決してない。ただし、仕事でとかやむを得なくさせられたことでも、やってみたら結構、個人的にでもおもしろかったとか、ついはまってしまったとか、まあ、海外旅行でもなんでも、きっかけがありましたら、英語プラスワンとして現地語の会話帳でもカバンに入れていったらいかがでしょうか。そうしたら多分、英語や日本語ではみえなかった世界が眼前に開けてくるかもしれません。そして多分それは、現地の人から、彼らの言葉を通じて教えられるものであることを私は信じてうたがわない。

付録.テキスト・辞書等の選び方

・言葉の勉強の仕方について

池田和弘 『200点以上アップのためのTOEIC最強の学習法』 日本実業出版社 1995

 英語検定受験業界では、池田氏に限らず多くのカリスマ受験教師がいるので、語学書のコーナーで、受験案内的な本を実際に手にとってみるとよい。多分、その中に自分にあった勉強法を教えてくれる人がいるのに違いない。

野口悠紀夫 『「超」勉強法』 講談社 1995

 『「超」整理法』(中公新書1993)で一世を風靡した感のあるおなじみ野口先生の、英語だけに限らない特に「受験生とビジネスマン」のための勉強法の本。続編もあるが、最初の本のほうが野口先生のエッセンスがつまっていて新鮮な驚きが多いと思う。

齋藤孝 『三色ボールペン情報活用術』 角川書店 角川ONEテーマ21 2003

 『三色ボールペンで読む日本語』で大ブレークした感のある齋藤先生の「情報活用術」の本。今年の6月に発売されたばかりだが、この本は、上記『「超」整理法』以来の「知的生産」のニューメソッドとして多分、めちゃくちゃ売れるだろうと思っている。「整理法」と「活用術」と何がどう違うのか、ぜひご一読あれ。仕事にも語学学習にも使える「術」である。

・TOEICの参考書

木村恒夫 『スコア730点をとるためのTOEIC必須単語2400』 語研 1989

 TOEIC受験用の参考書は、今日非常にたくさんあり選ぶのに困ってしまうほどだ。そんな中からあえて単語集を選ぶとしたら、次の点に留意してほしい。

① 必ず例文付で日本語の対訳があること。

② 難易度あるいは出題頻度がわかる編集になっていること。当然のことながら優しい単語からしかも出題頻度の高い単語から覚えていったほうが効率がよい。

③ よい英文例がついていること。上記に述べたように「品位と節度をもった礼儀正しい」文章を覚えるには、当然、よい例文をつかむことだ。

この木村氏の参考書は、上記の①から③までの条件を全て満たした上で、派生語、類語や反意語も同時に学べるようになっている。いずれにせよ、参考書は実際に手にとって選んで欲しい。

神部孝 『TOFEL英単語3800』(TOFEL大戦略シリーズ 600点突破をめざして) 旺文社 1997

高木義人 『続必修単語集 例文で覚える読解英単Network』(TOFEL TEST対策) トフルゼミナール英語教育研究所編 テイエス企画 1996(2000新装版)

 上記の神部氏と高木氏の単語集も、上記の①から③をみたした非常によく練られた英文集である。TOFELは、アメリカ等の英語圏の大学や大学院の英語能力資格として有名であるがTOEICと同じ検定機関が試験問題を作っており、点数についても一定の換算式がなりたつといわれている。特にTOFELを受験しない場合でも、語句の水準が参考になると思われるため、積極的にTOEIC学習に活用したい。実際に、頻出単語など、かなり似たものとなっているため、クロスでチェックすると重要な単語があぶりだされてくる。

 TOEICもTOFELも、それぞれレベルによってリーディング、単語、文法、リスニングなど分野ごとのシリーズ展開をしている場合が多いので、気に入った著者やシリーズがあれば、横断的に取り組むのもよいかもしれない。

・旅行会話のテキスト

情報センター出版局編 『旅の指さし会話帳シリーズ』 情報センター出版局 1998~

①タイ、②インドネシアから、⑨アメリカ、⑰フランスなどアジアや西欧の言葉を基本的に国毎にまとめている。特徴として、非常に日常的な単語から旅行名所の地図や流行の文化についてもイラストを中心にまとめてあり、3000語程度の単語集もつき、まさにこれ一冊で現地の人と仲良くなれるという本である。『インドネシア語』を読了、今『エジプト(アラビア)語』に取り掛かっているが、イラストを見るだけで楽しく、外国語を学べる。当然、文法とかをきちんとやるのには別の教材が必要だが、とりあえず、よく使われている言葉の輪郭と単語を身につけることにより、ずいぶん文法の勉強がはかどると思う。

・辞書・事典類

英和・和英辞典

木村研三編 『コンサイス英和辞典 第13版』 三省堂 2002

三省堂編集所編 『コンサイス和英辞典 第11版』 三省堂 2002

 辞書の一つの完成形として、コンサイス版の辞典を上げたい。仕事で辞書を使うとなると、なによりスペースというか簡便性が強く求められる。上記の辞典は、確かに近年の進歩の著しい学習英和・和英辞典とは一線を画すものであるが、その編集方針は今となっては非常に潔く、豊富な語彙数(英和が13万語、和英が7万語)とよく練られた例文は、かなり英文法の力を求められるが、この携帯性とサイズや製本も含めた辞書の引きやすさは、特筆にあたる。(初心者の英作文には使えないが、そもそも英作文に使える単語というのは、上記でも述べてきたようにひとかたまりのまとまった英文として覚えていない限り、適当なつなぎ合わせでは使えないことを肝に銘じるべきである。)

 これより小さいサイズの、デイリーコンサイス版の辞書は、私も英和・和英を一冊に合冊したものを数種類もってはいるが、積極的に仕事や学習に進める気はない。例文や文法事項の説明が少なすぎるのが、やはり致命的な欠点で、現場では、とてもこれ一冊というわけにはいかない。やはり最低でも、コンサイス版の辞書が手元にないと不安である。

他の国の言葉と英語の辞書

辞書というのは、基本的に使われている国で、求めるのが合理的である。私は出張先の大概の国で現地語と英語の文法書や単語集や辞書を買うようにしているが、大体3つのレベルのものに分けられる。

① 簡単な会話帳(単語、短文集であり、大概、初級文法書もかねている。語彙数は多くて3000語程度)

② 簡単な辞書(現地語と英語の2つの辞書をまとめたハンディなものが多い。語彙は数千から3万語くらいのものが多い)

③ コンサイスサイズの辞書(現地語と英語の2つの辞書をまとめたもので、大学生や社会人を対象としたもの。特に外国人の学習用の辞書ではないが、語彙数が8~10万語程度のものが多く、書かれた文章を読むという観点からは、一番使える辞書である。

結局、上記の語彙のレベルが、先に述べてきた学習到達度のレベルに一致していることに気づかれたかと思うが、とりあえず①と③を買って、初級から中級までのレンジを見切ってしまえば、後はどうその間をつないでいくかという問題である。

事典類

日本語と外国語の対訳事典は、英語や一部の外国語を除き、手に入りにくいのであるが、外国語と英語の対訳事典は、非常に多く出版されており、比較的手に入れやすい。これは、現地語で学ぶものが結局、結局高等教育を受けようとすると英語などの西欧語に頼らざるを得ないため、主に学生向けに事典類の整備が進んでいると考えられる。

特に、現地の動植物などの図鑑や子供向きの絵入りの事典は、見るだけでも楽しく、実際の仕事にも役に立つ。個人的な趣味や必要性にもよるが、ぜひ事典類や図鑑類にも、注意を払ってほしい。意外に、掘り出し物が見つかるかもしれない。

(この項、了)

■初出:「「実践的」外国語の身につけ方(前半)(後半)」 2003年8月31日、HP版 歩く仲間

http://arukunakama.life.coocan.jp/rc001.htm

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