祝福のルーレットが廻る⑧ きょうだいが狂った日

姉は、高校生になった。
なんとか高校生になった、というような印象だった。
中学も学年が進むに連れ、姉の言動は行き過ぎが目立つようになった。
姉と喧嘩になった時、私は後頭部をゲーム機の本体で殴られたこともあった。

高校受験も大変だった。
両親は姉の受験にかかりきりで、何とか進路確定したその日には両親は疲れきってしまったのか大寝坊をしてしまい、私が学校を遅刻したこともあった。

姉は高校には進学したものの、今で言う不登校ぎみな生徒であった。

元々のきっかけは、中学での友達関係の悩みと受験のストレスであったようだ。
両親に対して暴力的な態度も見られるようになっていた。
そして「その日」は来た。

「やめてー!!」
母の叫び声が聞こえた。
驚いて振り替えると、台所で姉が包丁を持って立っていた。
包丁の先には、父がいた。
父は逃げ、トイレの中に駆け込んだ。
「○△す~!!」姉も叫んでいた。
母は私の方に駆け寄り「おばあちゃんの家に行ってなさい!」と私を玄関から外に出した。
私は言われるがまま、慌てて階段をかけおりて1階の祖母の家に避難した為、この件がどう着地したかは知らない。
だが、私を避難させ時の、目も鼻も大きく開かれた母の顔は後にも先にも見たことがなく、この後も私の心に深く刻まれることとなった。

おばちゃんの家に避難しても、上の階からは家族の怒声と罵声と悲鳴か鳴り響き、震えが止まらなかった。
我が家は、どうなってしまうのだろう。
「家族内での悲劇!」とけばけばしいテロップが映し出されたワイドショーの画面が、12歳の私の脳裏に浮かんで、怖くなった。

「おやおや、うるさいね」
祖母は子と孫の修羅場が想像できるような物音や怒声にも動じる様子を見せず、祖父が亡くなってから時折家に来るようになっていた同年代の男性と、のんきにお茶を飲み続けていた。


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