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天国きたらええやん

時代の流れだろうか。

昨今、天国地獄の他、新たに『自由エリア』なるものが新設された。人間の生活様式や価値観などが変わってきたためだ。人間は死後、希望すれば『自由エリア』に属することができる。
具体的にどんなところかというと、まあ地獄の”それ”よりも遥かに楽であるし、天国の”それ”と比べると割と大変だ。
”ほぼ”現世と思ってもらえればいいんじゃないだろうか。
仕事をし、余暇を使って遊びたければ遊べばいいし、習い事をしたければすればいい。
お金という概念が無いため、労働への対価はポイント制だ。ポイントが多ければより良い暮らし、遊びができるようになる。当然、貧富の差ができるという事だ。
しかし、故人のニーズによって自身に合ったスタイルを送れることもあり、とても人気だ。
今までのように、決められたところに行くのではなく、自ら選ぶことができるというのも人気の理由だろう。

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そこで困ってしまったのが天国界である。

天国にくるはずの人間がそれまでよりも6割程減ってしまったのである。
現代人というのは、どうも、やりがいとかそういうものを大事にしているらしく、「はい。あなたは天国へどうぞ!」と言っても「いえいえ、私は自由エリアで、今までのように仕事をしながら暮らします!」等と言う人間が激増したのだ。
天国にくる資格を持ちながら、自由エリアを選ぶのである。

神様は考えた。

今までは黙っていても多くの人間が天国へと送られてきた。しかし、この現状はどうだ。なにかアクションを起こさねば天国は衰退してしまうだろう。                            

はて、どうしたものか、、、、、、、、                                

悩みに悩み、あることを閃いた。

あっ!天使達に競走させて、新規顧客増やせばいいんじゃね?と。
そして、天使のトップ3と言われる3名を呼びつけ、
「ミカエル、ラファエル、ガブリエルよ。
もう分かりきっていることと思うが、今、天国界は非常にまずい事態になっておる。
そこで、じゃ。 お主らを筆頭に天国界を3班制にすることにした。人間達がどうしても天国に来たくなるようなアイデアを各々企画し、競い合うのじゃ!今後の天国界はそなたたちにかかっておる。良きライバルとして、切磋琢磨するのだぞ。新規獲得してらっしゃい!ワッハッハ。」等と言って何処かへ行ってしまった。

残された3名は
よっしゃ!いっちょやったろやないかい!!
等となるはずもなく、ほとほと困ってしまった。
【ミカエル】
「またしょうもないこと言い始めたであのオッサン。」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」
【ガブリエル】
「せやな、、、、」
【ミカエル】
「まあ、言い出したら聞かんからなぁ、あのオッサン。競走て、、、、どないせえっちゅうねん。」
【ガブリエル】
「協力してやった方がええんちゃうか。」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」
【ミカエル】
「おお、ガブよ。それええな。そうしよか!」
【ガブリエル】
「せやろ。あれやな。ミカちゃん1番年長やねんから、企画してくれへん?イベントやらなんやら。
そしたら、アタシ段取りするし。
ラッファーは実行する役な。」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」
【ミカエル、ガブリエル】
「ほんまっスね!ちゃうわ!!」

こうして、天使達による『天国盛り上げプロジェクトチーム』が発足した。

天使達はそれはもう今までないぐらい協力し、様々な企画を実行した。

カジュアルな雰囲気を出すために
天国居酒屋なるものをやってみたり、
やっぱり音楽やろ!ということで
天国ラップをリリースしてみたり、
天国Tubeで
チャンネル登録よろしくね。と言ってみたり、
天国ッターで
天国なう。等と呟いてみたり。

しかし、そのどれもが上手くはいかなかった。

【ミカエル】
「上手くいかへんなぁ、、ワシ、これ以上なんも思いつかへんで、、、、」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」
【ガブリエル】
「せやな、、、、天国がどんなところか分かってもらえればええんやけど、、、、」
【ミカエル】
「おお、ガブよ!ええ事言うやんけ!!
それや、それ!あれや、体験ツアーや!なんかええ感じのキャッチコピーとか作ったり、あとは、その、なんや、”魅惑の天国グルメツアー”とかそんな感じのプラン作ってみたらええんちゃうか?」
【ガブリエル】
「おお!ミカちゃん、それええなぁ!なぁ、ラッファー!」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」
【ミカエル、ガブリエル】
「もうええわ!」

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【ガブリエル】
「おお!ミカちゃん、メチャ凄いことなってんで!
対前年比400%やで!!めちゃくちゃバズっとるやんか!!!」
【ミカエル】
「おう!せやな!!これで天国も安泰っちゅうもんやろ!なぁ、ラッファーよ!」
【ラファエル】
「ほん、、、」
【ガブリエル】
「ほんまっスね!」
【ミカエル】
「ラッファーよ、こりゃ、ガブちゃんに一本取られたな!」
【ミカエル、ラファエル、ガブリエル】
「アッハッハッハッハッ!」
【ラファエル】
「ほんまっスね!」

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☆天国きたらええやん☆

そのキャッチコピーが人間にハマり、募集人員を遥かに上回る応募が殺到した。
それはもう、寝る暇もないほどの忙しさであった。
しかし、爆発的な人気の影で新たな問題が発生していることに天使達はなかなか気づかなかった。

まずは、環境問題。
ゴミは持ち帰りましょう。
人間達はそんなこと知ったこっちゃないといった感じでその辺にポイ捨てしまうのだ。
次に、観光客同士での小競り合いが頻発するようになった。並ぶ順番をズルしただの、肩がぶつかっただの、まあ、つまらないことでケンカを始めてしまう。
そのうちに、護身用のナイフを持ち込んだり、なかには拳銃を持ち込むものまで現れた。
そして、極めつけは不法侵入だった。
本来、地獄へ送られるはずの人間達が裏ルートを使って、侵入してくるようになったのだ。

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天使達は緊急ミーティングを開いた。
【ミカエル】
「もうあかんな、、、、しばらく人間達の立ち入りを禁止した方がええんちゃうか?」
【ガブリエル】
「潮時やな、、、、」
【ラファエル】
「ほんまっ、、、」
【ミカエル、ガブリエル】
「うっさい、ボケ!!!!」
【ミカエル】
「まあ、ワシらもやるだけのことはやった。そろそろ自由に暮らしてもええんちゃうやろか?」
【ガブリエル】
「悔しいけど、諦めよか、、、、」
【ラファエル】
「悔しいっスね、、、、」
【ミカエル】
「おぉ、、、、ラッファー、成長したやないか、、」





こうして天国は美しさを取り戻す変わりに廃れていった。