漢字ハンター
僕は皆川マキオ。
小学5年生だけど、漢字ハンターをやってるんだ。
あ、そうか。漢字ハンターなんて知らないよね。
みんな。
みんなが知らない間に漢字を捕まえるのが僕らの仕事なんだ。
みんなが使ってる漢字は全部僕らが捕まえたんだよ。
知らなかったでしょ。へへっ。
難しいことはよく分かんないけど、漢字ハンターになるためには” テキセイ ”っていうのがあるみたい。
僕は7才のときにJKB、えっと、日本漢字防衛隊っていうんだけど、そこのえらいおじさんに誘われてテストを受けたんだ。世界中に支部があるんだよ。
僕は難しい漢字を書くのはそんなにできなかったけど、難しい漢字を読むのは得意だったから、それで選ばれたみたい。そこが” テキセイ ”だったんだってさ。
あと、書き順とかも関係あるみたいなんだけどね。
書き順を知ってると、弱点とかが分かるんだってさ。
この仕事にはブロンズから始まって、ゴールドとかプラチナ、ダイヤとかいろいろとランクがあるんだ。
だけどね、僕はこの間、反物質ランクになったんだ。
すごいでしょ。
え?よく分からない?
しょうがないな、ちょっとだけ教えてあげる。
反物質ランクは世界に7人しかいないんだよ。
僕は7位なんだけどね。
漢字を捕まえてもらえるお金でいうと、ダイヤランクの人が1漢字だいたい600万円ぐらいなんだって。でね、反物質ランクだと、1漢字ででだいたい640兆円ももらえるんだって。捕まえた漢字によってもちがうみたいだけどね。
640兆円てどのくらいなのか分からないけど、すごいでしょ。
だってそんなにお金があったらお父さんも働かなくていいし、お母さんだってずーっとキレイでいられるもん。弟や妹だって、ずっと家族一緒に楽しく暮らしていけると思うんだ。ね、いいでしょ。
でも、反物質てなんだろ?よく分かんないや。
ま、いっか。
あのね、僕が反物質ランクになれたのは、激レア漢字を続けて捕まえたからなんだ。おとなのハンターに手伝ってもらったんだけどね。
僕が捕まえた激レアを特別に見せてあげる。
4月にはコイツ。
” たいと ”って読むんだよ。知らなかったでしょ。
捕まえるのはとっても大変だったんだけど、ハンター仲間のスサノオって世界ランク3位のおじさんが手伝ってくれたからなんとか捕まえられたんだ。
おじさんにもらった” 酒 ”って漢字アイテムを使ったらとてもおとなしくなって、自分から漢字カゴに入ってきたよ。後から教えてもらったんだけど、ヤマタノオロチのお話を読んで考えついたみたい。
僕はそのお話は知らないけど。
あ、そうか。
漢字カゴってどんなのか分からないよね。
あのね、虫カゴってあるでしょ。
あれとおんなじで、カゴに閉じ込めてフタを閉めたら逃げられなくなるんだ。
みんなもハンターめざすなら覚えておいてね。
それで、コイツは先月捕まえたやつ。
” ぼんのう ”っていうんだ。
コイツは漢字の中でも最強クラス。
とってもこわくて1回逃がしちゃったんだ。
でも、僕は運がよかったみたい。
何日もしないうちにまた現れたんだ。
今度はシャカって世界ランク1位のおばさんが手伝ってくれて、なんとか捕まえられたよ。
コイツに使った漢字アイテムは2文字。
” 涅槃 ”てやつ。ネハンて読むんだってさ。
僕は難しくって読めなかったんだけど、とにかくシャカおばさんにもらったネハンを” ぼんのう ”に投げつけたんだ。そしたら、なんかココロの迷いがなくなったみたいでやっぱり自分から漢字カゴに入ってきたんだ。
僕はとってもラッキーだ。
だって、世界のトップハンターにかわいがってもらって激レアを捕まえることができたんだから。
だけどね。ハンターのみんなにはナイショなんだけど
僕はコイツを捕まえようと思ってるんだ。
” びゃん ”て読むみたい。
あんまりコワイ感じもしないけど、” ぼんのう ”と一緒で最強クラスなんだよ。
コイツを捕まえることを考えて今からワクワクしてるんだ。
あ、でもみんながカンタンに使える漢字も捕まえなきゃね。そっちの方が先だね。
僕はこれから世界ランク1位目指してガンバっていくからみんなも応えんしてね。
また難しい漢字を捕まえたらみんなにも教えてあげるからね。
それじゃ、バイバイ。