見出し画像

「精神科」の薬のプロ、薬剤師の中村さんにインタビュー!

みなさんの中では薬剤師はどんなイメージですか?
(私は稀に風邪を引いた時に、診察後に薬局へ行って薬を渡されて終わり、というイメージしかありませんでした…)

そんなイメージを変えよう!と精神科で活動している薬剤師さんにインタビューしました。

中村さんのプロフィール

駒木野病院の精神科で薬剤師として働いている中村純子さんです。

画像2

総合病院や大学病院で働いた経験があり、今は精神科の専門病院と調剤薬局で働いています!
(中村さんは病院勤務が計12年、調剤薬局が14年になります‼︎)

薬剤師として:精神科以外の診療科との違いとは?

精神疾患で使用される薬の多くはその効果を採血結果やレントゲンの画像などで客観的に評価することができないため難しいです。また、精神科病院は他の病院と比べて少ない薬剤師で運営されています(今勤務している精神科専門病院は450床で薬剤師が7名、以前勤めていた総合病院は520床で薬剤師が23名です)。在籍する薬剤師が少ないためは自分一人で担当する患者さんが総合病院勤務時代より多いということを意味します。

ちなみに、薬剤師は学生時代に精神科医療の分野を深く学ぶ機会が少なく、薬物療法が複雑であるため苦手意識を持ちがちかもしれません。

薬剤師の毎日

画像1

中村さんの子供時代
小学校:
忘れ物が多く、好奇心が旺盛で、やりたいことが広がりすぎて収集つかなくなるような子供でした。
中学校:
軟式テニス部に入っていました。
高校:
ドラッグストアでアルバイトをしていました。親からは、県立高校に進学するように言われていましたが、その高校に制服がなく、どうしてもルーズソックスを履きたかった私はわざと県立に落ちて私立へいきました。県立高校受験の際に国語をほぼ白紙で出しました。(実は、親はこのことを知りません。)残念ながら、最終的にルーズソックスは履けませんでした…

大学はどうやって選んだの?

昭和大学薬学部に推薦入試で入りました。昭和大学では一年目は全員寮に入ります。両親が寮に入っていた経験があり、寮生活に興味もあったので自分も寮に入ってみました。

寮では4人部屋に入っていました。メンバーは薬学部学生3人、歯学部学生1人でした。寮で友達がたくさんできました。医学部、歯学部の学生に知り合いが広がり、人のネットワークが広がりました。

これからの薬剤師は、訪問医療、病棟診療、チーム医療参加のためコミュニケーション能力が絶対に必要になります。寮などでいろんな人と出会い、人とのコミュニケーションの経験をもつのは大事です。学生時代には、人との交流が多いところへ行った方が良いかもしれません。

薬剤師になりたいと思ったのはなぜ?

実は、高校1年生まで薬剤師という仕事を知りませんでした。高校で様々な仕事を紹介してもらう機会があり、その時始めて薬剤師という仕事に興味を持ちました。あとはドラッグストアでアルバイト中、自分は時給690円なのに、薬剤師は時給3,000円で働いていることを知って、時給の良さに興味を持ちました。

なぜ精神科に? 診療科の選び方

これは大学の恩師の教授の影響です。教授に「ガンの分野ではあと何年寿命を伸ばせるか考え、精神科では人がその人らしく、地域で生きてゆくためにどうしたらよいかということを考える」と言われ、患者さんと長く関われる方を選びました。私の身内にうつ病を患った人がいたのも影響していると思います。キャリアは、1つの診療科で長く働く薬剤師になるか、色々な診療科を経験する薬剤師になるかは、人それぞれです。

薬剤師以外の仕事では薬の専門家として治験審査委員会のメンバーも務めています。治験とは、企業が開発した新しいお薬や機器が安全で効果があるか確認する研究です。病院で行う治験の内容について確認しメンバーで議論します。(日本製薬工業協会 治験について

現在のチャレンジ

患者さんとどれだけ信頼関係を築けるかが、難しいです。薬剤師と患者さんとの関係を早く構築して行きたいと思っています。
医師の処方箋に基づいて薬だけ渡して終わりというやり方をしたくないので、医師の回診についていき、患者さんの病状や他の病気などを把握して薬のプロとして患者さんがその人らしく生活できるよう考えて、医師に治療のお薬を提案したり、安全に複数のお薬を使ってもらえるよう気をつけています。他には病棟を回って患者さんの話を聞いたりもしています。

精神科で薬剤師をやっていて嬉しいこと

精神科では、薬を渡す以外にも介入できるのが楽しいです。患者さんとコミュニケーションをとり、患者さんが良くなって行く様子が表情や行動から見えて楽しいです。退院した患者さんと外来でも継続して関わることができるのも嬉しいです。

精神科で薬剤師をやっていて悲しいこと

反対に、提案した薬で症状がよくならないとか、副作用があったことを聞くと悲しいです。過去には、「薬剤師の中村が毒をいれた!」と言って、薬を飲まなくなって症状が悪くなった患者さんがいました。精神の病気による妄想と、わかっていても悲しいです。

薬剤師として大事にしていること

薬を渡して「はい、終わり」には絶対にしません。患者さんが困っていることを探ったり、お薬によってその困ったことが解消・改善されているかを確認したり、話を聞いたりして、その後どうするか考えるようにしています。

〜薬剤師あるある〜
あるある 1:薬剤師は手を怪我しやすい。処方箋の紙でよく手を切ります。
あるある 2:患者さんの顔を見ても時に「この人誰だっけ?」と思い出せないことがありますが、その患者さんが飲んでいる薬がわかると必然的にどういう患者さんかを色々思い出すことができます。このあるあるは鉄板ネタです…
あるある 3:ベテラン薬剤師の調剤は超人レベル。薬剤師が調剤をする時にはスパーテルという専門のスプーンを使います。0.何mg単位の粉薬の調剤はベテラン・素人でスピードの差が大きく出ます。
あるある 4:薬剤師はダジャレに敏感。薬の名前にはダジャレが意外と多いんです。リピトールという薬は血液中のコレルテロールを減らす作用を持ちます。Lipid(脂質)をとるから「リピトール」という名前になっています。他には、下剤のヨーデルは「よく出る」から、昔行われていた治療法で冬眠療法というものがあり、その際に使われたウインタミンという薬はwinter (冬)眠で「ウインタミン」となっています。記事を読んでいるみなさんがお薬を買う時にはダジャレを探してみてください。

画像4

お仕事中の中村さん

新型コロナウイルスの影響:病院・調剤薬局で変わったことはありましたか?

新型コロナウイルスのおかげで、手洗い・うがい・マスクを徹底する人が増えたせいか、風邪やインフルの患者さんが例年にくらべて少なかったです。新型コロナウイルスが落ち着いても、手洗い・うがいは変わらず続けた方が良いですね。

調剤薬局で仕事をしていた時に患者さんが大阪府知事の会見に影響されてすぐにイソジンを買いに来たりしました。いろんな情報に右往左往している患者さんの対応が大変でした。当時は仕事中でテレビを見ていなかったので、調剤薬局のメンバーと「なんでみんなイソジンを買いに来るんだ?」と首をかしげていました。

<小中高生のみんなへ> お薬のことはテレビなどのメディアの内容を、薬剤師に再確認する癖をつけて情報を正しく理解し行動するということを考えてみよう!

薬剤師になりたい人へ

薬剤師になるには、大学の薬学部を受験して、その後薬剤師の国家試験に受けなければなりません。

とても大事なポイント:薬学部のある大学には、4年制と6年制があります。6年制のコースに行かないと薬剤師の国家試験を受ける資格が取れません!

精神科で薬剤師として働くのに薬剤師の国家資格以外に必要なものはありません。日本病院薬剤師会には「精神科薬物療法認定薬剤師」と「精神科専門薬剤師」という資格が存在します…が、取ってもあまりメリットがないので私(中村)は取得していません。

「がん専門薬剤師」は、医療機関に収益上のメリットがありますが、残念ながら精神科の認定薬剤師や専門薬剤師にはありません。薬剤師の認定専門資格も多くの種類があり、資格によっては、論文を書いたり学会発表をする必要があります。今は論文や学会ののために時間を使うより、もっと患者さんの近くにいたいので今は資格は取っていません。

モットー

仕事は楽しく。仕事中も喜(怒)哀楽の感情はしっかり出す。表情を見せることで仲間とも患者さんとも通じあう。(「怒」は例外。)

中高生へのメッセージ

人と接することが好きな人は薬剤師になってください。最近は、医療系ドラマとかで薬剤師が注目を浴びることが増えて来ています。医療機関で働く以外に、製薬企業の研究や薬の開発、食品や化粧品会社、医薬品卸、ドラッグストア、保健所、麻薬取締など色々なところで活躍できる職種です。

これからの薬剤師には、今の薬剤師のイメージをぶち壊して欲しいです。これからは薬剤師も治療を行うチームメンバーとして患者さんに接していく時代です。「患者さん」とコミュニケーションをとり、医師や看護師など他の医療スタッフと協力して、薬の専門家として活躍していきましょう!

コンピューター依存?ゲーム依存?

今は新型コロナウイルスの影響で外に出るのが困難になり、学校が閉じている地域もあると思います。自宅でゲームやパソコンやスマートフォンによるインターネットの利用時間が増え、生活上何かしら困ることがあれば、家族や友人に相談したほうがよいです(例えば、寝坊遅刻など生活のルールが守れない、ゲームやパソコンが第一優先になるなど)。まずはちゃんと「寝る」「食べる」「運動する」を大事にしましょう。

私も学校がオンライン授業に移行し、一日中パソコンを利用する毎日です。ゲーム、携帯、パソコンを使いすぎて生活や、家族や友達とのコミュニケーションに問題が生じる場合は、一旦離れようと思います。

画像4

バックにある薬の量がすごい…

ここから先は

0字

¥ 500

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?