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四国・四分の三周の旅 第3日 2023/02/14

旅は折り返し後半に突入します。
松山から高知までの大移動がメインの第3日のようす、ぜひお読みください。

前回、前々回の記事はこちら。


2月14日(火)

6:30 ひとっ風呂とノーマルご飯

私一人だけ若干小さめなエキストラベッドで朝を迎えた。
例によって既に白湯の入ったコップが用意されていた。

泊まっているホテル、「ホテルクラウンヒルズ松山」は「備長炭の湯」という二つ名でアピールしている大浴場を売りにしている。
昨日は道後温泉に行ったので、バスタオルなど一式は未使用のまま残っている。大浴場は6:30からの営業ということで、朝風呂に出向いた。

先客がいた。
オジサンだった。
5人で湯あみしながらダラダラ喋ろうかと考えていたのに、たった一人の中年男性のせいで計画は失敗した。
さっさと湯を被ってまばらに部屋に戻る羽目になった。別にオジサマが悪いわけではないのだが。

朝食バイキングでは割と量を食べた。
ビジネスホテルという括りのはず(?)だから、スタンダードな料理が並んだが、明らかにそこらへんのホテルよりも美味しそうだったし実際そうだった。

朝風呂と美味しいご飯で今日も良いスタートを切った。

9:00 特急 宇和海

松山駅舎を見て、少し驚いた。思ったよりも質素な建物なのである。
勘が鋭い方ならお察しかと思うが、このJR松山駅は、松山の中心街からは離れたところにある。そしてその中心街には、伊予鉄の松山市駅がターミナル駅として君臨していて、もうJRに付け入る隙などないのである。
JR松山駅も1927年開業で歴史があることに疑いはないが、伊予鉄の方はそれよりも前に松山に線路を引いていたのである。
ちなみに各都道府県JR線主要駅(46駅)中では最もあたらしいのだそうだ。四国においてはJRもとい国鉄は少し遅れをとってしまったのか。

前日に私たちが乗ってきたのと同様に、1番線ホームには朝イチの特急しおかぜ・いしづちが停車していた。そのわずか数メートル先、同じ線路の上に特急宇和海がいた。なるほど、岡山・高松からそのまま宇和島方面へ特急を乗り継ぐ客に向けて、「縦列停車」みたいなことをしている。

宇和海には、松山駅の先、伊予市駅からの非電化区間に対応するため、ディーゼルカーが使用される。
今回は2両編成のN2000系気動車が充当された。
利用者もそこまで多くないこともあり、2両編成のこぢんまりとした特急はかわいいが、一般にスピードの出ないとされるディーゼルカーでありながらも最高時速130kmで山間部をぶっ飛ばしていくことができる。
余談だが、こちらも例によって「振り子装置」を装備していて、日本初の制御付き振り子式列車であり、世界で初めての振り子式気動車なのだという。

ちょうど先頭の席が空いていて、全面展望を楽しむ権利を得た。座席と乗務員室の間にはデッキ(≒通路 ※伝われ)があって、目の前すぐ展望!とはならないが、仕切りが窓になっているおかげで景色を楽しむことができる構造だ。

小さなカーブが連続する山あいの地を、車体を傾けながら快走していくのは気分が良かった。

今回、内子線という山を縫うように走る路線を経由するルートを通っているが、従来の予讃線というのは海側を通っていて、今は「愛ある伊予灘線」と呼ばれている。速達系の特急列車は、のちに内子線を含んで完成した短絡線を通ることになり、現在の愛ある伊予灘線には一部の普通列車と、観光特急「伊予灘ものがたり」が走るのみとなっている。青春18きっぷの広告にも採用された下灘駅が有名なので、1度は訪れておきたいところだ。

https://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/jikoku/sp/
JR四国HPよりダウンロード
地図の左側に注目

10:00 エクストリーム八幡浜観光

10:00より少し手前に八幡浜駅に着いた。
八幡浜市というのは、新海誠監督の『すずめの戸締り』の舞台のモデルとなった都市なのだそうで、Rの希望により立ち寄ることにした。
もとより、何もしなければこの先乗り継ぎの関係で余白の時間が生まれることが確定していて、時間を四国の山奥で無下にする訳にもいかなかったので、八幡浜で下車することにした。
一方で11:05の後続の宇和海に乗車しなければ、この先の計画も全て破綻する。したがって時間との戦いを伴いつつ観光をすることになった。

Rが行きたかったのは八幡浜港で、駅からは徒歩で25~30分かかるところをかなり早歩きで20分くらいで到着した。しかしかなり疲れたので、すずめの戸締りを未履修の私は都合良いバスで帰ることができないかどうか港のバス停を確かめることにした。ほか4人は履修済み(?)のため、聖地を拝みに行った。
ちょうどいいタイミングのバスがあることが分かり、帰りまで早歩きをする必要はなくなった。程なくして4人と合流したが、聖地巡礼が奮ったようすはあまり感じられなかった。もっと時間をつくってゆっくり来るべきだったか。

帰りのバスだが、乗車口にでかい階段が付いていて、如何にも昔のバスという感じだった。私たち以外の乗客と言えば、白髪かグレイヘアかスキンヘッドで、田舎に来たなぁと感じた。もしかしたら旅の中でいちばんそれを感じたかもしれない。

発車までかなり余裕を持って駅に戻ってくることができた。自分たち以外誰もいないホームでおもしろ写真とか撮って遊んでいた。

大漁旗。

11:40 宇和島下車不可でかっぱうようよ

11:05発の特急宇和海に乗って、引き続き宇和島駅に向かう。もはや景色を見る前に休みたかったので、とりあえず座った。40分ほど走ったところで、高松から297kmに及ぶ予讃線の終着駅、宇和島に到着した。

さて、宇和島城に行ったり、宇和島鯛めしを食べたりして観光をしたいところだが、手持ちの乗車券では宇和島で途中下車することはできない。簡潔に述べると、宇和島駅はルート外にあるのだ。ここから先、予土線という路線に乗り継いでいくが、予土線は特急が止まらない北宇和島駅から延びている。
しかし、東京駅(東海道本線と東北本線の境界)のように「区切り」になっているのではなく、宇和島駅からは角のように2つの路線が生えている(正確に言えば予土線は北宇和島駅から始まるのだが便宜上)。
したがって、片道乗車券の前提となる「同じ区間を2度通らない」というルールを破ってしまうことになる。

乗車券のルートは矢印のとおり。

つまりは宇和島駅にいる時点でルール違反になって手錠を持ったお巡りさんが出てくる所なのだが、この宇和島駅には特別なルールが存在する。

次の区間の左側の駅から枝分かれする一方の線区から他方の線区まで乗車する場合で、列車が左側の駅を通過するため左側の駅と右側の駅との区間を折り返し乗車する場合は、同区間のキロメートル数は含めないで運賃計算をします(定期券は除きます)。ただし、折り返し区間内では途中下車はできません(途中下車される場合は同区間に対する運賃が必要になります)。

https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/guide/normal_tickets/special_provisions11.html

要するに、宇和島駅の改札から外に出さえしなければ良い、ということだ。改札外に出るには、北宇和島~宇和島間の運賃を別途支払う必要がある。このような区間は他にもあるので、ぜひ知っておきたい。
予讃線は普通列車の数に対して特急の本数も多く、それらは北宇和島には止まらない。路線図の構造もあるが、運行形態もこのルールが適用される理由の一つだろう。

折り返し松山に向かう宇和海を見送り、次に乗る車両は早々にホームに入線した。
1両編成の可愛げな気動車、、、と思いきやそうではない。
通称「しまんとグリーンライン」とも呼ばれる予土線には、 “Yodosen Fun Fun Trains” と銘打った車両たちが走る。全種別が普通のみの予土線では、(おそらく)路線と沿線の活性化を目的とした個性豊かな車両を運行している。

そして、今回我々が乗車するのが、、
「かっぱうようよ号」
だ。なんやそれ。
車体の前面と側面には緑でラッピングが施され、車内にはデカいカッパとカッパにちなむ作品がボックス展示されていて、、、もうとにかくカオス。

30分ほどの空白時間を何も無いと言って差し支えないであろう改札内で過ごしたのち、予土線の旅が始まった。
トイレのない車両は、単線非電化の線路をゆっくりと進んでいく。途中から、日本最後の清流こと四万十川と併走する。蛇行する四万十川に沿うようにカーブしたり、あるいは一旦離れてトンネルでショートカットしてまた合流したり。
決して乗り心地が良いとは言えないが、軽便鉄道を前身として1914年に開業したこの路線からも、山を切り開いて線路を敷いていた日本の土木技術の高さや先進性をうかがい知ることができた。

予讃線の終着。
一定の歴史を感じる天井装飾
半家駅の手前が一番綺麗に写真を撮れた。
「はげ」駅です。

14:20 若井沈下橋と徒歩修行スタート

約2時間の乗車、列車の終点の窪川の一駅手前、若井駅で下車した。
四万十川といえば、地理の教科書でもおなじみの沈下橋がひとつの名物になっている。いくつか有名な橋があるが、若井駅から程ない距離のところの沈下橋を見に行くことにした。
沈下橋を斜め上から見下ろす形で一般の道路の橋があったため、そこから何枚かシャッターを切ってみた。
なぜか川辺に下りて水切り大会が始まった。

ちなみに、若井~窪川はJRの区間ではなく、「土佐くろしお鉄道」という他会社の路線であるため、別途210円の運賃が必要である。今回の乗車券はそれを含めた1枚のきっぷで発券されているが、18きっぷなどを利用する方はご注意願いたい。
予土線というのは北宇和島~若井までのことで、実は窪川から先の土讃線とはつながっていないのである。
土佐くろしお鉄道は若井駅から分岐して足摺岬の方へ延びている。、

窪川まで向かうと、そこからは高知方面の列車が走っているのだが、若井駅に戻っても次の列車は1時間20分待たないと来ない。

私たちは窪川駅まで歩くことにした。
乗車券のルール的には「不乗区間」となり、認められているルールなのでJRを利用しなくても問題はない。
国道381号という大きな幹線に沿って歩くのだが、歩道などはなく、田畑と建物が点在するだけの道を1時間くらい歩いた。後ろからも前からも自動車が高速で走り抜けていく様を見ると、クルマ社会であることを実感する。

16:00 古民家カフェで和菓子

窪川というのは、かつて窪川町という自治体であった所で、現在では他の自治体と合併されて四万十町の中心となっている街である。

「古民家カフェ 半兵」を訪れた。ラストオーダーギリギリだったがありがたくも丁寧にもてなしてくださった。名前の通り木造家屋を活用したお店で、靴を脱いで畳のお部屋に通していただいた。

注文したのは、「季節の和菓子」と「半兵抹茶パフェ」。
1時間歩いてくたびれたのと、そういえばろくに昼食をとっていなかったのとで、美味しさ倍増。
和菓子は見た目の美しさもさることながら、素人の舌でもわかる奥深い味わいが心を癒す。
抹茶パフェは濃い抹茶の味とアイスクリームと小豆とが安定感抜群の美味しさ。ザクザクのフレークも欠かせない。

建物のほかのスペースではひな飾りの展示を行っていて、そちらも楽しむことができた。

窪川駅へ行くまでに多少時間があったので、近くの「岩本寺」というお寺にも行った。お遍路巡りの霊場でもあり。なんだかアルファベットが多めな境内だったが、あれはなんだったのだろう。

17:30 特急あしずり高知行き

窪川駅からは特急あしずりに乗車する。
その名の通り、土佐くろしお鉄道を通って足摺岬方面の宿毛や中村と高知を結ぶ特急だ。車両は2000系振り子式気動車。

自由席に楽々と着席し、早々に夢の世界に落ちていった。

18:30を少し過ぎて、列車は既に日の暮れて真っ暗の高知に到着した。
向かいのホームにアンパンマンのラッピングがされた特急が停まっていた。JR四国では何本かの特急がこうしたアンパンマン列車で運行されていて、内装もそれに準じたものだ。実は乗ったことも見かけたこともなかったが、とりあえず目に入れることには成功した。

これしか写真を撮っていない。
Live Photosの長時間露光のやり方を教えるために撮っただけの写真
高知にも路面電車あり。

20:00 カツオのたたき!

先にホテルにチェックインして各々ぐーたらしていたら、それなりの時刻になっていたので腹を膨らしに繁華街の方へ向かった。
「とさ市場」という居酒屋に入って、カツオのたたき定食とクジラの刺身を注文した。
藁焼きにしたカツオは口に入れた瞬間はスモーク特有の香りがするが、噛むほどに身本来の旨みも楽しんだ。タレと絡めたり、米と食べたりするのも美味だし、さらに生ニンニクと食べるのも意外においしかった。
クジラを口にしたのはいつぶりだっただろうか。もしかしたら初めてかもしれない。魚類ではないのでそれはそうなのだが、思ったよりも肉感を感じた。独特の味がして、上級者向けの食べ物と感じた。

21:00 「観光名所」はりまや橋

「とさ市場」から少し歩くと、観光で有名な赤い橋、「はりまや橋」がある。
江戸時代のこの地で有力だった二つの豪商が、両家を隔てる川の上に架けていたのがこの橋のいわれで、昭和の時代にこれが登場する歌謡曲がヒットしたことで知名度が上がったのだそうだ。
この橋は幾度と架け直されていて、今では川は埋め立てられて小さな公園になり、肝心の橋は10mあるかないかのこぢんまりとしたコンクリート製なのだ。
したがって「日本三大がっかり名所(札幌時計台と長崎オランダ坂に並ぶ)」と言われることもある。実際観光名所と言われている理由もよくわからなかった。純信とお馬の恋物語の舞台であるから有名、らしいが、申し訳ないがそのエピソードもあまりよくわからない。やはり旅先の観光名所を楽しむには相当量の知識が必要なのだと痛感した。
どちらかといえばそこかしこにあるアンパンマンのキャラクターの石像の方がおもしろかった。

帰りがけに名産品の芋けんぴを買い込んで、その日は終わった。


〈主な出費〉

自由席特急券(松山→八幡浜) ¥1,200
自由席特急券(八幡浜→宇和島) ¥530
古民家カフェ 半平
季節の和菓子(生菓子) ¥300
抹茶パフェ ¥1,050
自由席特急券(窪川→高知) ¥1,200
とさ市場
カツオのたたき定食 ¥1,300
クジラ刺身 ¥1,500
芋けんぴ ¥700

だいぶ間が空いてしまいました。
次回が最終回です。お楽しみに。

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