離婚物語3
「どうしたの?」という母の声が電話越しに聞こえた瞬間、私は堰を切ったように泣き始めてしまった。涙が止まらない。自分でも驚くほど、心の奥に溜まっていた感情が一気に溢れ出したのだ。
「ごめん、なんでもないの…」と言いかけたが、母の優しい声が続く。
「大丈夫よ、話してごらん。何があったの?」
その言葉に私は心がほぐれ、これまでのことをぽつぽつと話し始めた。結婚生活に感じている虚しさ、悠斗の無関心、そして私自身が限界を感じていること。母に打ち明けると、今まで溜め込んでいた重荷が少し軽くなった気がした。
「悠斗とはもう、ほとんど会話がないの。私が話しかけても返事はそっけないし、家にいても、まるで他人みたいに感じるの。毎日、ただ一緒に過ごしているだけで、心の距離がどんどん広がっていくようで…。でも、美奈のためにこのまま続けるべきかどうか分からないんだ」
母はしばらく沈黙していた。そして、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「結婚って、本当に難しいものよね。私も、あなたのお父さんと上手くいかなかった時期があったわ。あの頃は、あなたもまだ小さくて…毎日どうやって過ごしていたのか、今ではよく覚えていないくらい。でも、あなたに辛い思いをさせたくなくて、何とか耐えたのよ」
母の言葉には深い共感と経験が込められていた。私が知らなかった、両親の結婚生活の一面を初めて知る瞬間でもあった。
「でもね、絵里子。大切なのは、自分がどうしたいのかってこと。もちろん、子供のために頑張りたいって気持ちは分かる。でも、あなたが無理をしてまで続けるのが本当に幸せなのか、考えてみてほしいの」
その言葉は、私の心にまっすぐ届いた。母は続ける。
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