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私的解釈 -「視覚的人間」ベラ・バラージュ

映画の歴史は、現在まで、まだ、120年ほどしかない、この書籍はその創世記に書かれた。
「視覚的人間 映画のドラマツルギー」それは、無声映画の時代に、ベラ・バラージュによって書かれた先駆的な映画論であるが、現代に通じる映像言語等、多様な示唆を与えてくれる。例えば、映像言語を使った今日の放送業界や、その報道のあり方もだ。

映画ができて20年目あたりは、瞬く間に生活の一部となった時代であった。この1924年、無声映画の時代に書かれた先駆的な映画論である。
*ベラ・バラージュは、ウィーンでの映画批評家としての体験し、映画の芸術哲学の試みとして1924年に出版された書物である。クローズアップや、モンタージュ理論から、新しい視覚芸術の独特な表現方法と、その原理、そして、今後の可能性を示唆した。

ベラ・バラージュは、印刷術の発明以来、言葉という概念的なものに頼りすぎるようになっていた西洋の文化は、映画の登場によって、視覚的なモノの方へと根底から転換した。
「視覚的人間」(それは、目に見える人と理解できる)とは、映画に映し出される表情や、その人の身振りによって、人間の精神や魂が直接目に見えるものになったという事態を要約する言葉である。
こうした展望に基づいて、文学や演劇といった先行する諸芸術と映画との根本的な異質性を強調しながら、とりわけ映画における俳優の様相や表情の重要性、それらの表象にとって不可欠な、現実の隠された細部を啓示するクロース・アップという技法が、具体例と共に論じられる。

この書籍は、後年の「映画の理論」のように体系だった理論の形態を取っていない。
ただ、それが、むしろ、映画における風景、労働、動物、人間像、子供、スポーツなどといったテーマについての明敏な記述が、今、尚、さまざまな示唆を与えてくれる。

(註)*ベラ・バラージュ(Béla Balázs/1884-1945)ハンガリーの映画理論家、哲学・美学・作家。

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