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生命の風景
未来に残したい風景を思い浮かべようとするといくつものシーンが脳裏をよぎる。しかし、それらはいつでも見られるものではない。
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季節によって表情を変える山形の風景はまるで絵のようだ。
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時に大雪がもたらされる冬。雪の下では温度と湿度が保たれ野草や山菜などの植物も育まれる。
水が生命の源であるとすれば、雪は生命の結晶だろうか。
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山を渡る雲や霧、そして雨は樹々と大地に磨かれ里へと流れ下る。
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自然とは何かと考えたことはあるだろうか。聞くところによると太古の昔から人間の手が入っていない森はごく限られているという。多くの森は伐採され林へと姿を変えているらしい。植生が変わり植物相が変化すれば、そこに生息する動物や菌類の構成も変化しているだろう。意図したものでなくとも日本の風景に人間の手が加えられていることは少なくないのだ。
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山は雨などによる浸食で少しずつ姿を変えているという。人の一生のうちに知ることが難しいほどゆっくりしたものであるかも知れないし、台風などの影響で急激に変化することもあるだろう。生き物は変化に対応しつつ生命を次の世代へ紡いでいる。
そんな風に自然の風景はそんなに絶えず変化しているのだ。
もし生き物が存在しなかったら殺風景な山や渓谷が広がっていることだろう。
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多様な生物とは多様な生命とも言えるだろうか。
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ともすれば、水が姿を変え、大小様々な生命体となって活動しているようにも思えてくる。
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刻々と変化する季節。生命は表情を変え、山肌を彩る。
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小さな生き物も限られた季節をただ生きることに余念がない。
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一見乾いて見える花も生命の証だ。
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米の収穫が終わり秋深まる頃。
外来種のセイタカアワダチソウの勢力に圧されてススキのある風景が珍しくなった気がする。
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秋といえばきのこの旬と思われがちだが、実際には年間を通じて様々なきのこが発生しているようだ。
きのこにとっても大切な水。適度な降雨が山に潤いを与え、きのこはその季節に相応しい気温との相互作用によって静かにそして力強く姿を見せ始める。
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菌糸によってシロを形成するきのこもあれば枯れ木や倒木に発生するきのこもある。分解が進むとやがてきのこは見られなくなるという。
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山奥で普段目にすることのない見事なきのこタワーに出会った。立ち枯れの木に発生しているきのこを素直に喜ぶことはできないが、硬い木質を分解しリセットする役目を担っているのだろう。
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静かな山の中、小さな沢のそばでふと気がつくとカモシカに見られていた。聞くところによればカモシカはド近眼らしいので正確には見られていたのではなく見ようとしていたのだろう。ただ黙ってじっと視線を投げかけていた。
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野生の大型動物の中でも人に狩られる事のないカモシカは、比較的中立的で特別な存在かも知れない。必要最低限の警戒心で静かに距離を保っている。お互いに危害を加える意図のない人と野生の自然な距離感かも知れないとさえ思える。
彼らの目にはこの自然の風景がどんな風に映っているのだろう。
大地は生命を育み、生命は大地を彩る。
未来に残したい風景。それは水が司り大地が育む生命の風景なのだ。
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…頼風…
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