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picture Hiroshi Kamoto.

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香本博が描いた絵。描いた動機など、作者自身のメッセージを添えて。
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#香本博絵画

『おろち雲』

『おろち雲』

キャンバス(910×910)に交響水彩 無数の大蛇(おろち)に似た夕焼け雲が、
八方にエネルギーを発している。
色でも線でも構図でもない。感じたのは"擦れる空気の音
まさに命の息吹だ。ここ数ヶ月で大切な方々が亡くなられた。
是非観ていただきたかった作品が
ようやく完成した。
こんなに時間がかかってしまったのは
その方々への思いを、私が重く引きずってしまったからだろう。
描いていて抜け出せなかったト

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『みどり雨』

『みどり雨』

小雨がほぼ止みそうな
明るい昼下がり・・
水溜りの出来た山道を歩いた。
直射ではない暖かい陽に透過して
様々な緑が合唱しているようだった。
写された水は、まさに美しい『みどり』で
メトロノームのように波紋ができていた。

長野県大鹿村での光景を描いた。
落ち葉と土の路の 濡れた感じを出すのに
苦労した。厚手ワトソン 交響水彩 八つ切りサイズ
個人所蔵

瞳を閉じて描いた絵

瞳を閉じて描いた絵

『春を抱く恋人たち』
(power to the people)

セヌリエコットン紙 交響水彩 400×470

この作品は目を閉じて描いた。

究極の絵画とはどんなものだろうか?
もし盲目の人が私の個展に入ってきて
ある絵の前で立ち止まったとしたら
色でも線でも構図でも土地の愛着でもなく
絵がかもし出すエネルギー
作品の出すパワーのためだろう。

では、自分は何によって絵を描いているのだろうか

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『薄透紅(うすべに)』

『薄透紅(うすべに)』

春の朝の空気を感じながらに歩いていた。
路の脇には水路があり菜の花が咲き
わずかだが、桜の並木のようになっている。
薄いピンクのドレスを着て
両手を広げているような桜の木があり
光を帯びて美しかった。

向こうから女子学生が自転車に乗って来る。
紅色のスカーフが風に泳ぎ
かごに赤いバックを入れている。
部活に行く少女はこれから
少しずつ大人の色香を持つ女性となる。
けばけばしい不透明さではなく

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『山かまど』

『山かまど』

武甲山にぶつかる雲は
まるで 釜戸の扉を開いたかのように
燃えている。
巨大な鯨のようにも見えるし
下の影や色の違う地層の形は
魚影の群れに見える。
約10年前、かまど色の空という題名で
こうした雲を描いたことがあり
東京都美術館に展示してもらったことがあった。
しかし秩父盆地の特別な光の屈折は
冬の大気と武甲山を出会わせて
ドラマを見せてくれるのだろう。
本格的な釜戸に これからも出会いたいもの

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『旅立ちの詩』

『旅立ちの詩』

一年で最も寒い2月 が過ぎて3月・・そして
一番待ち遠しい春
比喩的に言って、現代の世情は冷え冷えとして2月だ。
路はヌードの木々が立ち並ぶ..
創造性の無いものに囲まれる町並み
以前からタンポポを描きたかった。
でも『飾り』や『脇役』としては制作したくなかった。
そして『タンポポとはこうなっている』という絵にも
したくなかった。
自分が描きたかったイメージとは
タンポポの胞子たちが、良い風に乗っ

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『帰ろう!』

『帰ろう!』

厚手ワトソン 交響水彩 八つ切りサイズ

毎夕同じ時刻になると
海岸沿いの場所から
海猫たちが群れを成して帰って行く。
ヨブ記の中にある記述で
創造者が地の基を据えたときに
海に対して
《ここまで来ても良い、しかし超えてはならない》
と命じたとある。
鳥取砂丘は海よりとても高いわけではないのに
波は目ったなことが無い限り暴走しない。
幻想的な日暮れのドラマの中で
砂丘に打ち寄せ、帰っていく波が

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