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「高尾山」 ーー 山と瞑想の日々 ーー

「そこに山があるからだ」

1923年、ニューヨークタイムス誌のインタビューで、登山家『ジョージ・マロリー』は、山に登る理由を尋ねられて、

「Because it's there」と答えた。直訳すると「そこにあるからだ」なんだけど、「そこに山があるから」と訳され、名言だとは思えないのだが、なぜだか有名な偉人の「名言」となっている。

マロリーがエベレスト登頂したかは定かではないが、1924年のエベレストアタックで遭難し、遺体は1999年に発見された。75年後。

まあ、そんな伝説の登山家の話は置いといて、何が言いたいのかというと、多くの「登山」をする人間にとって、登る理由なんて、言葉にしてしまうと、「ただ好きだから」とか「そこに山があるから」とか、そんな言葉になってしまうのだと思う。

僕はそんな世界レベルの山なんてチャレンジはしたことはないけど、山が好きです。今は都内に住んでいるので、都内近郊の山や、旅先でも登ります。

個人的な話をすると、僕自身は北海道の海沿いの街の生まれで、青春時代は「海に住んでるのか?」ってくらい、いつも海水浴場にいました。

山に登るようになったのは、35歳に東京から八ヶ岳山麓に移住してからです。それまで、山登りなんて興味もなかった。むしろ海が好きでいた。

それがある時からすっかり山に夢中になった。

登山やトレッキングが好きなので、当然自分の「好き」を、周りに紹介したくなる。自分が良いと思うものを、人にも教えてくなるものです。

しかし山登りは、人によってはただの拷問になりかねず、時と場合によっては苦行になってしまうので、万人にはおすすめはしない。

それは体力とか、足腰が丈夫とか、そういうことではなく、気質的に「M体質」な人ではないと楽しめない性質があるからだ。なぜなら、はっきり言って何時間も険しい道を登り続けるって、苦しいに決まっている。

山頂に立った時の達成感や清々しさはあれど、今度は戻らないとならない。登山は山頂がゴールではなくて、登山道に戻った時がゴールなのだ。

だから、そういう「苦しさを楽しむ」「苦しみを面白がれる」という性格が何よりの資質だと思われる。

しかし、密かに「山」とか「自然」に興味を持っている人は多いと思う。登山、とまでいかなくても、ピクニックとか、森歩き、山歩き…。

でもどうしていいかわからないし、なかなか重い腰や、大きなお尻が上がらない場合も多い。

関東県内の人向けだけど、そんなあなたにぜひお勧めしたいのが「高尾山」である。

前置きが長くなったが、これから時々、山について書いていこうと思う。このnoteは以前のように「自己啓発」や「啓蒙」的な内容はあまり書かなくなるので、とにかく自分の「好き」を書いていこうと思う。

さて、今回の「高尾山」は新宿から、京王線か中央線で一本で行ける(JRだと最後に一駅だけ乗り換える)。アクセスが便利であり、登山道もバリエーションに富んでいて、手ごろにトレッキングを味わえる山だ。

いかんせん、年間300万人の登山客が訪れると言う、「世界一登山客の多い山」だ。

僕は多い時は週に一度、少なくても月に1度以上は、高尾山へ行く。それは僕が高尾山を愛してやまないから……、ってことでもなく、理由は至ってシンプルで「行きやすいから」だ。

日本全国、新宿のような主要都市から電車で一本。1時間もかからずに麓に到着して、駅前から“即登山道”ってなかなかない。

僕は「歩く瞑想の会」というのをやっていて、京都だとよく鞍馬山に行くが、鞍馬だってそこまで行くのに何本か電車やバスを乗り継ぐし、山というよりはほんとどは「寺の敷地内」を歩くので、登山という感じでもない。

高尾山にも真言宗の薬王院という由緒ある寺院があり、1号路、4号路などのコースを選ぶと、寺院を通過してから山頂へ向かうルートのなる。

1号路は寺までの道中も完全に舗装され、整備された道路だ。登山道ではないので、歩きやすいというのなら、一番歩きやすい。そして寺の近くまでならケーブルカーやリフトでも登れる。そこから山頂を目指してもそこそこの運動量にはなるだろう。

しかし、2号路〜4号路の途中までと、6号路、そして稲荷山コースで歩く道は完全な「山道」であり、ここでは登山を楽しめる。

僕はもっぱら「稲荷山コース」で行く。

一番コース的にも長い距離で、標準タイムは1時間30分となっている。ゆっくり歩くとそれくらいかかるし、ハイペースで行くと1時間くらいで行けなくもない。

6号路もかなりお勧めだ。ラストの約390段の階段はかなりきついかもしれないが、ゆっくり行けば良いと思う。ちなみに稲荷山もラストは、たしか270段くらいの階段がある。

6号路は途中でうっすらと水が流れている場所もあり、靴を濡らさないように歩いたりもするのだが、そういうのも登山ならではだ。ただただ整備された、歩きやすい道を歩きたいのなら、山になんて来なければいい。

僕らはなんて贅沢な時代に生きているだろうと思うのだが、キャンプやトレッキングがレジャーやスポーツとして流行っている理由の一つに、便利すぎる世界のアンチテーゼなのか、あえて「不便」を体験しにいくことを楽しむことだと思う。

しかし、その「不便」さの中に、人生の中で得られる大きな喜びや豊かさが詰め込まれていて、現代人が忘れてしまったもの、忘れそうになっているものを思い出すことができる。

「登山」と聞くと、とにかくびびる人もいるが、基礎疾患とか脚、足、関節、骨などに物理的な制限がある人以外ならば、高尾山くらいなら行けてしまうと僕は思っている。

登山は、上記した通り確かにM体質が合うと思うが、残念ながら僕くらいのドMになると、高尾山くらいではほとんど苦しく(気持ちよく)ないレベルだ。だからあえて「今日はハイペースで」とか「今日は姿勢を崩さないように」などの肉体への負荷や制限をかけたり、または「歩く瞑想」を実践して「今日は呼吸を意識した瞑想」とか「体軸へのマインドフルネス」とか、「〇〇のテーマについてひたすら考える」という内観など、とにかくメンタルや精神的な負荷やルールを与えて歩くことが多い。

もちろん、歩きながら自然は楽しむ。土の感触。岩や木の根、落ち葉を踏む感触。そして何よりが「音」だ。鳥の声、虫の声、木々の擦れる音、風の通り抜ける音。耳には捉えきれない、山が発する静かな唸り声や、植物たちが発する超音波のような、聞こえない音…。

聞こえない音、というのは矛盾しているけど、それは一種の「気配」と言ってもいい。様々な存在たちの気配。

もちろん、そういう音や気配の気配の世界は、年間300万人の高尾山より、もっと人のいない山の方が満ち満ちている。高尾山も紅葉シーズンなどは、人で行列して、自然の気配どころか人の気配と、鳥の声より学校行事の遠足でやって来た子供たちのにぎやかな声ばかりだ。

僕が「歩く瞑想の会」をやってて困ることの一つに「トイレ問題」がある。男なら最悪その辺で済ませればいいが、女性だとそうはいかない。しかし、高尾山はその点安心だ。麓、寺院、山頂、トイレがたくさんある。

また、観光地と化しているので、麓にはお土産屋さんや食事処、茶屋や、少し離れた場所にカフェも充実している。

山頂や、ケーブルカーの駅にもお店はたくさんあり、高尾山山頂から少し過ぎたもみじ平にも茶屋あるし、一つ向こうの小仏城山(高尾山から1時間ほど歩く)にも茶屋がある。途中にいくつかトイレもある。

とにかく便利だ。手ぶらで行っても良い。山で飲み食いできてしまう充実っぷりである。

アクセス便利、店も充実、トイレも充実。なのに、東京都とは思えない、大自然を満喫できるのだ。

特に稲荷山コースは、最初から最後まで山の中を歩き切る。途中でほどよいアップダウンもあり、平地もあり、ベンチもあるし、自然観察しながら、森林浴しながら楽しめるコースとなっている。

ちなみにコースの中盤に小高い丘があり、そこで少し見晴らしがあり、休憩できる場所がある。そこは「稲荷山」と呼ばれるので、稲荷山コースなのだが、はっきり言って稲荷“山”というほとではないので、二つの山を行くわけではない。

もしあなたが自然に触れ合いたいとか、自然の中を歩きたいと思うのなら、おすすめは、稲荷山コースだ。

そして高尾山の山頂が混んでたら、5分ほど歩いてもみじ平で休憩。昼食。

帰りは薬王院などの荘厳な寺院を周るのも観光になるし、僧侶達の読経の時間と重なると、なかなかの迫力だ。

そしてケーブルカー駅を過ぎて、疲れてたらケーブルカーやリフトを使ってもいいし、まだ歩けるなら2号路から下山しよう。途中で琵琶滝コースで下山し、最後は川沿いを歩くと、左手に小さな洞窟があるので、中の仏像に手を合わせると、なんとも言えない満足感がある。

ただ、上にも書いたが、山頂手前、ラストの長い木段はとにかく疲れる。登山を経験してる人ならわかるだろうが、膝や腿をを上げる動作が、一番疲れるのだ。できるなら「すり足」のように坂道を登るのが、一番足への負担は少ない。

高尾山にしろ、観光地化されている山はとにかく「階段」が多い。歩きやすくして、雨の日でも滑らないようにしている配慮なのだが、僕としてはあまり面白くない。今年の春に数ヶ月間工事をしてたと思ったら、階段の手前も、数百メートルは木道にされてしまった。歩きやすいのだろうけど、ちょっと残念だ。

できることなら、土を踏み、落ち葉や木の根や、石や岩の感触で足裏で感じながら、凹凸のある道を歩きたい。

まあ、そんなこと言う人は高尾山ではなく、もう少し本格的な山へ行けばいいので、初心者が簡単なトレッキングを体験したいのなら、とにかく高尾山はおすすめである。

最後に、登山の心得。

「目の前の一歩を踏み出すうちに、必ず目的地に辿り着く」

これは人生と同じだろう。我々にできることは、常に目の前の一歩だ。もちろん、方向性を決めたり、時々過去を振り返って、自分の功を労い、癒やされる時間も必要だろうけど、やるべきことはたった一つ。目の前の一歩。

空想していてもどこにも行けない。地図だけ見て、コースの内容を頭に入れても、前には進めない。だから、とにかく歩く。一歩、また一歩。自分のペースで。人のペースにごまかされず。登山は競争ではない。自分と向き合い、自分自身でいられる時間だ。


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