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トイレの長い女たち。

渋谷駅の建物は工事をしていて、元からややこしい造りなのに、とにかく今はさらに迂回路につぐ迂回路で入り組んでいて、昨年から何かと不便を感じてる。

駅ビルもそうだが、とにかく渋谷駅前の開発がすごい。ここ20年で駅前の風景はずいぶん変わったと思う。これらは「必要なのだろうか?」とか「必要とされているのだろうか?」と疑問を思うが、こうやって建設して、完成したら話題性で人が集まる。様々なビジネスにつながるのだろう。

ビジネスは、必要とされるものを提供するものだが、「必要性」を「話題性」で持ち上げ、商品を売るという、なんだか自転車操業のような状態が日本でずっと続いているが、いい加減飽和状態でパンクしそうなシステムだと思う。

さて、オレは京王井の頭線を降り、ハチ公口の方面に行こうとしたんだが、JR駅を迂回し、迂回に次ぐ迂回をし、なんだか知らんが数年前にはなかった新しい商業施設に入ってしまった。

目的地はようやく見えてきた。しかし実は電車に乗っている時からずっと尿意があった。

商業施設なので当然トイレくらいある。いや、当然、なんて思ってはいけないな。こうやってどこでも水洗トイレがある環境なんて、ここが日本という世界一インフラの整った清潔な国だからだ。

一度でもアジアの国を旅を経験した人間なら誰でも知ってるが、とかく日本のトイレは綺麗だし、その環境はありがたい。

で、オレは天井からぶら下がった案内図に従い、混み合う施設の中でトイレへ向かう。

トイレの前では、行列ができていた。

どこかのショップに並んでいるのだろうか?と思ったが、なんとそれは女子トイレへの行列だった。

その日は土曜日。コロナ規制が緩和されたせいか、どこもかしこもこの頃は人で溢れているが、渋谷は人間の大渋滞。駅ビルの施設のトイレも、利用者は多い。

恐る恐る男子トイレへ。男性側も、空いてはいなかったが、並ぶことはなく、すんなりと入り、出すべくものを出し、すっきりとする。

オレは今年で44歳だ。世間では立派な大人と呼ばれる年齢だ。

あまり自覚はないが、どうやらオレは大人の男であり、若い人から見たら立派な「おっさん」なんだろう。

オレ自身が10代20代の頃、44歳の男なんて、問答無用で「オヤジ」か「オッサン」というカテゴリーに分類した。だからきっと今のオレもどこかの若造に、そのようなカテゴライズを受けることを批判はしない。

もちろんそんな若造が何を思ったところでどうとも思わんし、「ふふふ、かわいいもんよのぉ」と、大人の対応を醸し出せる余裕もある。とかくまあこんな反応も含め、オレは大人の男なのだろう。多分…!

今でもこの世界は不可解で不可思議なことが多いが、子供の頃や、若かりし頃、わからないことがもっともっとたくさんあった。

当然だ。知識がないのだ。なんせ経験がないのだから。

だけどオレはその「知らない」という現実に無力感を抱き、数々の疑問に対する回答が得られないことに不満をたくさん持っていた若者だった。

だから「知りたい!」と、様々な知識欲を持ち、好奇心を満たすべく、あれこれと人生を推し進めていったわけだが、「大人になればわかるのだろう」と、いくつかの漠然とした思いもあったことも事実だ。

誰もがそうだろうけど、そのように子供の頃や若造だった当時はまるでわからなかったけど、大人になって知り、理解したことはたくさんある。

それは例えば“サウナ”の心地良さや、お酒やコーヒー、辛いものという趣向品はもちろんのこと、夜が深まった時に「酔ってません!」と言ってるおっさんの大半は酔っ払いだという事実や、こちらの誘いに対して「行けたら行きますね」と答える人の99%は来ないというという世間知的なものもある。

他にも例えば若い頃はわからなかった、「あのお店はどんなことをするんだろう…」とか「女の人の〇〇は一体どういう構造をしているのだろう?」などという、健全な少年らしい無垢な疑問に対する明確な回答など…。

まあ、そこに関しては割愛するとして、とにかく大人になって理解することはたくさんあったわけだ。

だけど、オレにも未だにわからないものはたくさんある。

その一つが「女のトイレは長い」だ。

謎だ。確かに「化粧室」という呼び名があるくらいだから、化粧直しをする人がいるのは想像できるが、それが気になって数人の女性にリサーチしたところ、デートでもない限り、逐一トイレで化粧を直さないし、彼氏が待ってたら軽くチェックしてリップを塗る程度、という意見が多かった。

もちろん、がっつり化粧直しする女性もいる。何度か、女性と二人きりで食事なんかしてて、「ちょっとトイレ行ってくるね」とその女性が言って、遅いなぁなんて思ってたら、がっつりメイクになって戻ってきて、その気合い入れっぷり本気モードに、いささか草食男子な一面を持つオレは“ドン引き”した、という経験はあるが…。

先に伝えておくが、オレは何も“女性がトイレが長い”ことに関して、いささかのディスり感情はない。「時間の無駄だ!」などと、近代合理主義の元、それを批判する気もサラサラない。なぜならそもそもオレにとって女子トイレがいかように混み合っていたとしても、オレの尿意や便意にはまったくカンケーないのだ。

しかし、女性のトイレが長いことは、子供の頃から謎だったのだ。様々な行楽地やらデパートのような場所で、オレが先日渋谷で見かけたような女子トイレ渋滞にお目にかかることはザラだ。

考えられる可能性を、いくつか挙げてみると…。例えば女性はお出かけの際に「大」をする可能性が高い…。

いやいやいやいや…。そこは男女比率関係ないでしょ。出かけた時に限ってうんこするって…。むしろ家の方が落ち着くだろう。

となると、いわゆる男にはまったくわからない「月のもの」というやつか?いやしかし、実は渋谷に行った理由が、今回とあるコンサートへ行ったのだが、そこでも休憩中の女子トイレは大渋滞だった。そして、お客さんの半分は年配だった。先月、クラシックコンサートへ行った時もそうだったが、年配の方が多かったとしても、常にそのような場での女子トイレはいつも大渋滞だ。

男ならイチモツを「ぴっ、ぴっ」とするだけだが、女性は紙で拭くから、という行為があるので、確かに男性よりはやや時間がかかるのはわかる。しかし、どうその動作をシュミレーションしても、そんなに時間がかかるとは思えない。

さらにその謎を深めるのは、世の中には「トイレが早い女」がいる、ということだ。

現に、オレの妻はむちゃ早い。いや、早い、というか、男性のオレからしたら「平均タイム」だ。女子トイレが混んでいない限り、サクッと入って、サクッと出てくる。

妻以外にも、何人かそういう女性はいた。

一度や二度ではわからないが、親しくなると自然とそういうトイレへ行く女を待つなんてことはある。そして、

(あれ?こいつ、早いな)

と思うと必ず訊いた。

「ねえねえ。君はトイレ早いと思うんだけど、なんで女の人ってみんなトイレ時間かかるの?いつもすごい混むじゃない?」

そして、“トイレの早い女たち”は決まってこう言うのだ。

「そうなの!みんな何してんの!?なんであんなに時間かかるのか意味不明!」

なんと!同じ女性同士でも、トイレの早い女たちには、トイレの長い女たちの行動は理解できないとのことだ!ならば男のオレにわかるわけなどないではないか!

ますます謎は深まるばかりだ…。

オレは「大人の男になった」なんて冒頭に書いたが、オレよりももっと大人の男はいる。となると、オレがもっと大人の男になったら、この謎は解けるのだろうか…。

しかし、こうとも言える。

「そもそも知る必要がない!」

うん。確かに、知る必要などない。皆無だ。そしてその答えを知ったからと言って、オレの人生に何か影響があるとは思えない。多分、確実にないだろう。

だが、そう理屈で分かっていても、無性に気になることってある。無駄の多い人生。無駄のある人生。人生って、そういう余裕があるから、楽しいものなのだ。

終わり。

続きは、日記など。

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