世界一を誇る、世界で一番の自分たちの寺院を作るんだ!
マリア様に捧げたれた、
フィレンツェの大聖堂。
サンタマリア・デル・フィオーレ。
花の聖母大聖堂。
1296年に着工され、
正面の部分が一度取り払われ、
空白の時間を経て、
ようやく完成したのが
1887年。
その間、591年。
完成から現在まで134年。
建設途中を見てきた人たちの方が、
完成後の姿を見ている私たちより
ぜんぜん多い。
まるでサグラダファミリアのようだが、
こちらは1882年に着工し、
2030年前には完成予定。
もちろん約6世紀の間、
中断していた時期もあったわけで、
結果的にこんな長い時間が
かかってしまったけど、
1296年当時のフィレンツェの民衆たちは、
まさか、さすがに、
こんなに時間がかかるとは
思わなかったんじゃないかしら。
経済的に急成長を遂げて
財政的にも余裕ができて、
世界一を誇る、
世界で一番の自分たちの寺院を作ろう。
という街全体の大きなエネルギーが、
大聖堂の建立に向かわせたに違いない。
それにしても、
クレーンも、トラックもない時代に、
よくこれだけの大きな建物を作る気になり、
作ろうとしたものだ。
もちろん、古代ローマ時代も
圧倒される大きな美しい建造物を
いくつも建立していて、
なにもないと、
うんうん唸りながらも
なんとかするために、
知恵をひねり出すのが、
人の素晴らしいところ。
当時の建設業は、石工・木工組合が担当。
組合は、イタリア語でアルテ。
教科書で習ったギルドと同じで、
同業種組合。の意味。
大聖堂の設計&建築を担当した、
アルノルフォ・ディ・カンビオも、
1400年代にクーポラを建てた
フィリッポ・ブルネレスキも、
組合(アルテ)に加入して
初めて仕事をすることができたのです。
フィレンツェで目にする、
教会、邸宅、市庁、塔、橋、etc…
建設されたものは、
すべて石工・木工組合によるもの。
ご加護がありますようにと
組合ごとに守護聖人を祀り、
石工・木工組合の聖人は、
4人の殉教聖人。
オルサンミケーレ教会という
フィレンツェ中心街の教会の外壁に
この4聖人が祀られています。
彫刻を担当したのが、
ナンニ・ディ・バンコという彫刻家。
1つの祠に、4人の聖人を、
押し込めなければ、、、もとい、
うまく配置しなければならない。
だめだ。うまくいかない。
4人の聖人にどんなポーズをとらせ、
どんな風に手の動きをつければいいのか。
3人ならなんとかなりそうだけど、
4人は多すぎるよ。
あぁぁ どうすればいいんだ。
と悩めるナンニに、
友達で同僚だった
やがて初期ルネッサンスを代表する
彫刻家として名を馳せるようになる
ドナッテロが力を貸したらしい。
石工・木工組合らしく、
自分たちの仕事の風景も
4人の聖人の足元に、
表現されています。
左から、
壁を積んでいるところ、
装飾柱を作っているところ、
彫刻を作っているところ。
装飾柱を作っている
職人の手にしているものはドリル。
財力に任せて、
ただ大きいものを作るのではなく、
黄金比を基準にした
均整のとれたプロポーションや、
色の配置などに設計者は、
細心の気を配り
より素敵なもの、
より美しいものを
創造しようと努めた文化。
距離を縮める乗り物じゃなくて、
時空を飛び越えられる乗り物があれば、
美しさが文化である。
文化は美しさである。
という基準で生きていた時代に
タイムスリップしたいもんだ。
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