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「アートケアだより」バックナンバー紹介 2004年9月号

 今年20周年を迎えた「アートケアひろば」のバックナンバー紹介。2004年9月号はKさんご一家のインタビューでした。

 現在、Sくんは大学院で老化に関する研究に取り組んでいます。Mちゃんは紙をテーマに雑貨からライフスタイルを提案する素敵な会社にお勤めです。 

 進路をお聞きして、Sくんが6年生の時に、割り箸をいくつものパーツにカットし、組み合わせて作った大坂城のことや、Mちゃんが折り紙を折ったり切り貼りして、たくさんの愛らしい人形を作っていたことが思い出されました。
 写真の粘土の「家族」は、3年生の頃だったか、Mちゃんの作品です。

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「アートケアだより」2005年7月号

●我が子を伸ばす案配。Kさん流は「教えて、見せて、やらせて、ほめる」

 昨年の展覧会で注目を集めた「粘土の生き物シリーズ」の作者がSくん。お父さん(Kさん)と制作して作品の精度が上がるとともに、親子の距離の取り方も自然に変化してきました。Mちゃんもお母さん(Yさん)から離れて1人で表現し始め…。親子の距離、その秘訣は?
(実はご夫妻は学生の頃からの友人。というわけで今月はちょっとくだけた文体になっています)

冨田:今日はまず「親子の距離の取り方」について聞きたいです。
 子どもが自立する過程で親が子へ力を貸す案配って変わるじゃない。私がよく例えるのは自転車の乗り方。初めは我が子を乗せて2人乗り、そのうち補助輪をつけて、ようやく1人で乗れるようになり。1人で乗れるけど甘えて2人乗りしたいって気分の時もあったり。
 お二人はうま~く子どもが安心して自立できるような距離の取り方だったので、何か心がけていることがあったら聞かせてほしいんだけど。

Yさん:そうだな…しいて言えば「手を出しすぎないように」かな。
 私は学生の時、心理学を専攻していたこともあって、親がよかれと思ってすることも子どもにとっては負担になる場合があるって知っていたから、子どもが生まれると「この子って一体どんな子なんだろう。何を考えてるんだろう」って客観的に見ることが多かった。

 子どもが小さいうちは充分安心すれば 自分から親から離れてチャレンジしていくと思っているから、その時が来るまで甘えるのも大切かなとも思っている。今、上の子は小学2年だからいろんなことにチャレンジする年齢になってきたよね。

 それに私はわりと子どもに「できることは自分でして」っていう方で、どっちかというとうちはお父さんの方が「お母さんタイプ」だよね。

Kさん:そう?!俺は安全に気を配ればあとは子どもに任せる。人を育てるには「教えて、見せて、やらせて、ほめる」だよ。 理論を説明して実演してやって、それをやったらほめれば伸びる。

冨田:それわかりやすい!書いとこ(笑)。まずきちんと説明するっていうのは参考になるね。親子だと感情が先に立つことが多いから。

●やりたいことだけやってればいいの? 協調性、集団ルールの育み方

Yさん:親子の距離といえば、今、悩んでるっていうか考えてるのが「やりたいことをやりたいだけさせていいか」ってこと。子どものペースを尊重するのはうちの基本だけど、学校や集団生活の中でそれだけじゃまずい面も出てくるでしょ。

Kさん:周りの状況を理解して臨機応変に反応できるように、とは思うけど、どう説明して身に付けてもらうか。

冨田:今、Sくんは小学2年。そうだねこのくらいの学年から集団 のルールについて要求されることが増えるよね。協調性を育てる上でよく混同しやすいのが、表現上の自由と社会生活上の約束事。

 社会生活での協調性って、自分も含めてみんなで気持ちよく過ごすための知恵じゃない。だから知っていたほうが勿論いいんだけど、その子の考えは置いといて、とにかく合わせなさい、じゃ子どもは人格を否定されたように思うことがある。

 そうすると強く言われたから従いましたっていう受け身の協調性、自分の心は別、表面だけいい子ってことになったり、自分を出すことまでできなくなってしまうこともあるんだよね。

 子どもを尊重した関わり方だと子どもも諭されたとき、時間がかかっても自分で考える。結果は同じ協調性だけど、中身が全然違う。

Yさん:なるほどね。

冨田:おとなしい子、一見いい子が事件を起こす、なんて報道を見ると、大人に受け入れてほしいけど限界って言う気持ちの子どもも少なくないのかな、とも感じる。

Yさん:うん。ここでもうちょっと日常的なことを言うとさ…私は「ほめ下手」なの。子どもと一緒にいる時間が長いと新鮮味がないっていうか、生活の中だと何かやりながら「そう」 って感じで目を見てほめてあげられない。

 だけどアートケアは自己表現の場で親子ともにそのためだけの時間でしょ。だからちゃんとほめてあげられるのがいい。出来上がった作品を評価するのではなくてプロセスを親子で共有するというのがとてもいいと思う。

 母親って毎日子どもと一緒にいる分、つい辛い(からい)見方をしてしまいがちだけど、めぐちゃん先生の愛情に満ちたコメントに毎回救われてます。ほんとに。

冨田:そう!?その言葉に私も救われる!

Yさん:「あーこれでいいんだなぁ」って親も思えることって子育てしている中で本当に大切だと思う。

 あとね、親も人間だってこと、伝わるといいなと思ってる。私、怒るのあんまり我慢しないんだよね。大きくなったときに「うちのおふくろ、すげえ恐くってさ~」って言われるのも面白いかな、なんて(笑)。子どもがいつか親を超える日が来るのも楽しみだしね。

冨田:そうだね…。その日が来たら、またしみじみ話そう!

(以上、ご家族に確認の上、掲載しています)

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