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最新のお仕事|美術手帖 2024年1月号

『美術手帖2024年1月号 特集 目[mè]』(美術出版社、2023年)のアート&デザイン学校ガイドにて、武蔵野美術大学&女子美術大学の卒業生インタビューを担当いたしました!

武蔵野美術大学

冨田美穂さんは、北海道を拠点に牛の木版画を制作しています。冨田さんの牛は、本当にかわいらしく、それぞれの牛の性格や仕草・振る舞いが伝わってくるようです。人間とは違う生物としてではなく、友達やご近所さんのような距離の近さを感じました。
それもそのはず、冨田さんは酪農の仕事をしながら作品をつくっているのです。

フリーランスも似たようなものですが、制作一本で食べていける作家さんは少なく、他の仕事をしながら活動している方も多いと思います。本業以外の仕事でも、その経験が作品に注ぎ込めるのなら無駄ではないのかなと、ちょっと勇気づけられますね。

今回は『美術手帖』という現代のアートを表象する媒体での取材でしたが、冨田さんは農業新聞や地方新聞で取り上げられたことでブレイクしました。
美術媒体に関わる者として、いち早く目をつけられなくて申し訳ない気持ちになりながらお話をお聞きしていました。

冨田さんの作品は「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」(2023年11月16日~2024年1月8日、東京都美術館)でも展示されていました!
左の子牛のタイトルは《1177》。どんなにかわいらしくても、やがて人間に食べ物・飲み物として供給される命、家畜です。「モーちゃん」「はなこ」といった名前ではなく番号で識別されることに現実を突きつけられた気がして、ドキッとしてしまいました。お肉の情報館やミノアのこと思い出しちゃうよ……。

女子美術大学

女子美からは、丸山純奈さん杉田万智さんの2人を取り上げています。

「自分とは何者か」をテーマに少女像を描き続ける丸山純奈さんは、海外での展示経験・販売実績も豊富な作家です。一方で、国内で団体展にも出品されていて、卒業後も先輩作家と交流をしながら切磋琢磨しています。

コンセプトや制作はもちろん、キャリア形成についても確固たる考えをもっている、とても軸のしっかりした方でした。女子美には珍しいタイプ。

杉田万智さんは光と看板を組み合わせ、人々を理想の世界へ導くような作品を制作しています。人種差別や争いのない理想の世界を実現するのは、完全には難しいけれど、近づくことはできる。そんな願いを込めて描かれた作品は、どこかホッとします。

別媒体のインタビューでBUMP OF CHICKENが好きとおっしゃっていましたが、人間の醜さや弱さを無理に否定・肯定せずに、少し距離をおいて見つめる姿勢が、BUMPの歌詞とも共鳴しているように思いました。

3人とも技術もあり軸もブレないので、たくさんの人に作品をみてもらい、どんどんファンを増やしていってほしいです。


本誌の特集は、一度経験したら虜になるアートチーム「目[mé]」が登場! 2019年の「非常にはっきりとわからない」(千葉市美術館)では2つの階に全く同じ状況をつくり出し、2021年の東京オリンピック・パラリンピックではおじさんの顔を飛ばし、今年は「さいたま国際芸術祭」のディレクターを務めました。
これまでの作品や展示、対談などを交えながら、目[mé]が目指しているものを紐解いていきます。

目[mé]は、荒神さんがみた世界の感覚を、南川さんがディレクター、増井さんがインストーラーとして作品化します。

私は子どもの頃に「木が局所的に揺れているところに風の精霊がいるんだ」とか「私以外の人はロボットなんじゃないか」とか、空想したり、半ば真実味を帯びた仮説のように考えていました。幼少期の荒神さんのように道路のガラス片を拾ったりもしていました。

そういった世界をみたときに引っかかる何か、異様に心惹かれる何かを、「これでしょ?」と目の前に出してくるのが、目[mé]。何の変哲もないありふれた世界を、改めて疑ってみるような感覚にさせます。脱出ゲームが好きな人は好きだと思いますよ。

目[mé]が誕生するまでを描いた伝記マンガは、少年マンガのような熱さ

写真を追うだけでも「???」と気になってしまうので、マンガや1章分だけでもお読みいただけたらと思います。

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