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卒業論文をやり直す会④|2022年5月

5月下旬の第4回オンラインミーティング(飲み会)では、メンバーそれぞれ仕事やプライベートなどが忙しかったため、進捗もゆっくりめでした。発表30分、感想戦30分で終了しました。

目次

  1. 進捗発表

  2. あさの|ルネ・ラリック つむじ風

  3. TTR|グスタフ・クリムト メーダ・プリマヴェージの肖像

  4. Kちゃん|アモルとプシュケの図像

  5. M氏|鴨居玲にみるゴヤの影響

  6. 総括

進捗発表

あさの|ルネ・ラリック つむじ風

ルネ・ラリック《つむじ風》1926 大一美術館蔵ほか

前回のミーティングにて、本作の造形的な特徴が魅力的であるというところから一歩踏み込んで、本作の技術面での評価や価値付けを考える、という方向性を定めました。

今回は進捗が何もなく、とりあえず現在得ている情報を書き出してみました。多分、文章構成は大丈夫!
質疑応答にて、「造形的特徴を生かすためのモチーフなのか」という質問を受けました。デザインは娘のシュザンヌによるものですが、ラリックはそれをアレンジして使用したと図録にあり、モチーフの意味合いは薄いと考えられます。
いまだ結論が甘いので、本作の素材や製造工程について調べようと思います。

論文に事足りる結論って何でしょうね……。「論文」を描くことをテーマとして一皮剥けたい気持ちはあるのですが、普段ライターとして書いている「魅力を伝える文章」と、論文として書く「客観的事実から仮説を証明する文章」との違いに苦戦しております。

TTR|グスタフ・クリムト メーダ・プリマヴェージの肖像

グスタフ・クリムト《メーダ・プリマヴェージの肖像》1912–13 Gift of André and Clara Mertens, in memory of her mother, Jenny Pulitzer Steiner, 1964

卒論に使用した図録や資料を見直したそうです。前回、ポーズや手の仕草を重点的に調べることにしましたが、さまざまなポーズで素描を描いており、試行錯誤の結果のポーズだったとわかりました。

クリムトと言えば、成熟した大人の魅力たっぷりの女性を描く印象が強く、実際女性モデルと関係を持つこともあったと伝わっています。一方で、彼は前回も取り上げた息子オットーの死をきっかけに作風が変わり、「生と死」「死への畏怖」をテーマに据えるようになりました。
クリムトは少女を描くにあたり、成人女性とは異なる距離感で対象と向き合っていたのではないか。子どもに対して、成人男性の自分には理解し難い何かを感じていたのではないだろうか。

そうした方向で調査、執筆を進めます。

Kちゃん|アモルとプシュケの図像

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《アムールとプシュケー、子供たち》1890、個人蔵

前回、プシュケ年表を作成し、中世が抜けていることがわかりました。しかし、やはり中世の終わりにボッカチオがプシュケの話を紹介し、同時期に別ルートでイギリスでも紹介されたようでした。

現在は「アモルとプシュケ」の主題の歴史的変遷に関心があるものの、問いが立てられずに気持ちが焦っているということでした。また、文献は集めているものの、目を通すことができていません。

ひとまず、図像学からのアプローチとして、プシュケに蝶の羽がついているかどうかで図像を振り分ける作業を進めることにしました。
加えて、できるところから書いてみるのもいいのではとアドバイスがありました。

M氏|鴨居玲にみるゴヤの影響

鴨居玲《1982年 私》1982 石川県立美術館蔵

資料を読み返した結果、日本でのゴヤ展開催は鴨居の出立後だったことが判明。日本でゴヤやベラスケスといったスペイン絵画を見て影響を受け、スペインに渡ったのではないということでした。
日本は肌に合わないと感じた鴨居は、はじめに南米に住んでみますがしっくり来ず、ヨーロッパにわたり、最終的にスペインに落ち着いたそうです。

ゴヤからの影響を指摘するテキストはあり、プラド美術館に行った記録はあるようなので、ファーストコンタクトはスペインに着いてからと思われます。

総括

大きな進捗はないものの、徐々に方向性がまとまってきたように思います。
しかし、初回にがっつり質疑応答をしてしまい、調査を進めていくうちにのめり込んでしまい、各々、気持ちが追い込まれてきました。
改めて、今回の企画は半分お遊びのようなものであること、挫折をしないよう、追い詰められず、楽しく進めること、その上でわからなかったり結論が出なくても、自分が納得いくものにできればいいよね、というスタンスを共有しました。

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