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50arts|四月大歌舞伎(歌舞伎座)

とうらぶ歌舞伎を観た観劇好き審神者(さにわ)の友人と桟敷席デビューしてきました! 友人は歌舞伎座での歌舞伎は初めて、私も桟敷席は初めてです。

今回は、桟敷デビューのご参考になるよう、チケットを取ってから終演までをレポートします。
歌舞伎入門的な記事は、もうちょっと歌舞伎慣れしてきたら書きたいです。


桟敷席とは?

歌舞伎の劇場には、通常の劇場やホールのような1等席・2等席、A席・B席という区分のほかに、特別な席があります。

そのひとつが桟敷席です。客席の両側にあるテーブル付きの席のことで、1階と2階にあります。
「お金持ちや関係者じゃないと座れないVIP席なのかな?」と思いますよね。実は一番値段の高い1階桟敷席でも、1等席+2,000円で誰でも取れちゃうんです!

少しでも節約しようと思うと2,000円(大型の企画展1回分くらい)はお高いと思いますが、「歌舞伎を観る機会なんて滅多にないし」「記念日だし」「せっかく高いチケット代を払うのだから」良い席で観たい! もしくは「他のお客さんと距離をとってストレスフリーで観たい」という方、いかがでしょうか?

2階桟敷席は1等席扱い(18,000円)になるので、舞台から近い1階で観るか、全体をゆったりと眺めたいか、お好みで選ぶといいと思います。

もうひとつが一幕見席です。
歌舞伎は昼の部・夜の部、または3部制で、各部につき1〜3演目がセットになっています。つまり、ひとつのチケットで複数の演目を観ることになります。
一幕見席はその中の1演目だけ観ることができます。

4階(3階客席の後方にある仕切りの奥)で舞台全体を遠くから観るかたちになりますが、「この演目だけ、推しの出る演目だけ観たい」という方には、とってもお得なチケットです。
ただ、チケットの取り方が特殊なのと(前日or当日に申し込み)、舞台から距離があって役者の顔はわからないので、お安いとはいえ初心者にはオススメできないお席です。

公演の前日まで

基本的な流れはポータルサイト「歌舞伎美人(かぶきびと)」に掲載されているので、こちらを参考にしてください。

どの公演にしよう?

歌舞伎歴1年弱の初心者ながら、時代物(武家や貴族の話)より世話物(せわもの、町人など庶民のお話)のほうがストーリーも言葉遣いも難しくない、という数少ない経験則を頼りに、

「引窓」 歌舞伎教室で上演されていたので短くてわかりやすい、観たことがある
「七福神」 華やかな舞踊でストーリー性が低い(実は歌舞伎は踊りもあるよ)
「夏祭浪花鑑」 血みどろが予想されるが人間関係や状況把握は難しくなさそう

という四月大歌舞伎 昼の部をチョイスしました。
演目選びのコツはいろいろあると思います。ベテランの方、ぜひ教えてください!

チケットを取ろう!

チケットは松竹のチケット販売サイトのほか、ぴあやローチケなどでも取り扱っています。また、電話劇場窓口でも購入可能です。

桟敷席の競争率がわからなかったため、チケット販売開始日にチケットWeb松竹から購入することにしました。念の為、予備の日程も聞いておきます。
希望が土日ということもあってか、チケット販売開始の30分後、すでに桟敷席の半分は埋まってしまいましたが、無事に購入できました。

当日は混み合うかと思い、事前に東銀座駅直結の木挽町広場(お土産物売り場)で発券しました。

食事はどうする?

食事は各演目の幕間(まくあい)の時間に、劇場内のお食事処(要予約)か、客席やロビーでいただきます(上演中はNG)。
木挽町広場や劇場の売店でもお弁当が販売されていますが、持ち込みもOK! 銀座のデパ地下で買っていくのもいいですし、手軽にコンビニのおにぎりやサンドイッチで済ませている方もよく見かけます。

1階桟敷席でしか味わえないお弁当もあるとのことで、今回は贅沢に特製桟敷幕の内を注文しました! 2度目はないかもしれないしね!
こちらは友人から電話で予約してもらい、当日清算することにしました。(木挽町広場のお弁当売り場にて予約・事前清算も可能)

イヤホンガイドを借りよう!

あると便利なのが、歌舞伎や文楽の公演を音声で解説するイヤホンガイドです。
歌舞伎のセリフや詞章(唄の歌詞、人物の心情や状況を説明するナレーションのようなもの)には、現代人には聞き取りにくい・意味が理解しにくいものもあり、見得(みえ)やツケといった約束事もたくさんあります。イヤホンガイドがあれば、歌舞伎に詳しい解説者による説明を、開演前・上演中・幕間に、片耳イヤホンで聴くことができます。
別途有料になりますが、初心者にはぜひ借りてほしいアイテムです(ベテラン鑑賞者も楽しめます)! 舞台への理解度が格段に上がります。

こちらは当日劇場内外で受信機を借りますが(英語版は木挽町広場のみだった気がします)、事前にオンライン予約しておくとスムーズなうえ割引になってお得です。

友人はPCやスマホで見られるWeb講座付きを購入したそう。楽しむためには抜かりなく、素晴らしい姿勢ですね。

公演当日

劇場の外観や看板は開演前に撮影しておこう

開場時間の10:25に歌舞伎座前で待ち合わせて、いざ入場!

座席に着く前に

まずは歌舞伎座の東側(右側)でイヤホンガイドを借り、お弁当の精算、それからお茶の準備やお手洗いなど所用を済ませました。

売店は各階にあり、お茶やお酒、軽食におやつ、おつまみなどを購入できます。
お手洗いとコインロッカーは上の階にもありますが、地下(劇場の地下で木挽町広場ではない)が一番広いです。

地図で事前に確認しておくと安心ですね。

いざ桟敷席へ!

ドアが並ぶ様はホテルのよう

1階の桟敷席は2席ごとに仕切られ、それぞれ専用のドアから入ります。セレブ感が出ますね!

もちろん一人で桟敷席を取ることもできるのですが、実質ペア席なので誰かと来たかったのです。友人に感謝。

ドアを開けると

えっ、近っ!
ドアと座席の間にもっと空間があると思ったらアパートの玄関みたいだし、1等席のお客さんとも近くて気まずいのだけど!

1階桟敷席

座席は掘りごたつのようになっており、玄関部分で靴を脱いで、畳の上の座椅子に座ります。
隣のボックスとの間に柵があるので、体は接触しません。通常の座席に比べて余裕があるので、ゆったり座れます。

玄関部分には、荷物掛け用のフックや靴べらが備え付けられていました。

注意事項

照明が反射するので、机の上に物は置かないよう書かれています。背の低いペットボトルやチラシなど、机のヘリに隠れる程度なら許容範囲でしょう。
イヤホンガイドを膝置きして落とす心配がないのは、地味に助かるポイントですね。

どこの席でも共通ですが、スマホ・タブレットは電源を切って、話し声やアメの袋・ビニール袋などの音に注意して、前のめりで鑑賞しないよう気をつけましょう。

桟敷席からの見え方

桟敷席からの眺め

私たちが取った西側(左側)にある9の1・2席は、花道に近い後方の席です。
本舞台(ステージ)の見え方は1等席とさほど変わりませんが、観客の頭で役者が見えない事態には決してなりません。振り返らなくても花道や揚げ幕(客席後方にある花道への出入口、カーテンを開け閉めして役者が出入りする)の全体が見えるので体勢を変えずに観られますし、臨場感たっぷりです。

ただしデメリットもあります。
花道の7:3のところを七三(しちさん)と呼びます。スッポン(床が上下する舞台装置の一種)から役者が迫り上がってきたり、そこで役者が演技をしたりと、見せ場となる場所です。七三では役者は内側を向いてしまいがちなので、演目によっては後ろ姿しか見えないこともあるのです。(今回の演目では問題ありませんでした)

また、花道の役者に向けた照明は、西側の桟敷にも当たります。私たちも一瞬眩しさを感じることがありましたが、七三の真横の席では、ずっと眩しいのかもしれません。

臨場感にこだわらなければ、東側(右側)の方が、鑑賞する環境が安定していると言えるでしょう。ベストな席はきっと人それぞれ。

ランチタイム!

舞台の感想は後ほど述べることにして、ランチタイムといきましょう!
1演目めの途中でドアの開く気配がしたので、座席の後ろに届けてられているはず。

めっちゃ玄関

こんなビール入ってそうな袋で来るんだ。
中にはメッシュの仕切りがあり、重箱と汁椀、ペットボトルのお茶や割り箸などが倒れないように入っています。なんか水筒も入ってるんだけど……?

特製桟敷幕の内

お椀にはお麩や湯葉が入っていて、水筒の出し汁をかけるとすまし汁になる仕様でした。焼き物(魚)はふっくら厚めでふたつも入っていましたし、春の公演なので、筍ごはんに菜の花、桜餅もついていました。
冷めている・味が濃いといった仕出し感はなく、美味しくいただきました。

どれから食べよう!? と迷っていると、あっという間に35分が過ぎてしまいそうだったので、ちょっと慌てながら食べました。次の25分の幕間で続きを食べることもできたので、無理しなくて良かったかも。

観劇の感想

各演目のあらすじはウェブサイトをご覧ください。

開演前

友「歌舞伎座での贅沢な歌舞伎鑑賞を楽しみに来ました!」
私「私も初心者なのにうまくエスコートできるかドキドキだな」

友「普段行く舞台とは客層が違って、みんなファン歴が長そう。劇団四季なんかは初めて舞台を観る人や親子連れも多いから」
私「ディズニーもやるし『一度は観てみたい!』って人が来るのかな」

友「チラシに下の名前しか書かれていないから、ファン歴の長い人じゃないとわからないね」
私「中村をつければ大体合ってるよ。たまに尾上さんとか坂東さんとかいるけど(雑)」

「引窓」

友「正直、あとの2演目より内容がうまく入ってこなかったけれど、イヤホンガイドが助けになった! これは必須!」
私「単語や言い回しが堅いし、昔の慣習に馴染みがないから、細かいところまで理解するのは難しかったかも」

前に観たときのお早と役者が違うせいか、だいぶ印象が違いました。役者さんの年齢によっても演じ方が変わってくるのでしょうか。
松緑さんは声の出し方がずっと松緑さんだなと思っていて、特徴的なだけかしら。

「七福神」

友「この人(中村隼人さん)はイケメンの人だよね」
私「そう。(イケメンは知ってるんだ)若手の役者さんが勢揃いなので、次は演技も観てほしい」

友「恵比寿の人(中村歌昇さん)が上手だった」
私「すごく動くよね! 見た目(メイク)がおじいちゃんなのに軽快な動きだからビックリするよね」

踊りに鳴り物、衣装も舞台も、すべてが華やか。メインで踊っている神様以外も、お酒を飲んでいたり、うたた寝していたり、手を叩いてはしゃいでいたりと、魅せます。

「夏祭浪花鑑」

友「中村莟玉(かんぎょく)さんはとうらぶ歌舞伎にも出てたよね。兄者の人(髭切)」
私「兄者の人……ピンクだっけ。え、黄色の人? 小狐丸ではなく? メイクで変わるから全然わからないんだよね」

元ネタの刀剣乱舞も歌舞伎も素人だったので、三日月宗近=尾上松也さんしか覚えていませんでした。
ちなみに小狐丸の尾上右近さん、同田貫正国の中村鷹之資さんは先ほどの「七福神」に出演しています。

(中村秀乃介くんの元気なお返事)
友・私「「かわいい」」

(終演後の第一声)
友・私「「磯之丞ありえないよね!」」

友人は「笑ってコラえて」の歌舞伎座支局で、ルパン歌舞伎の特集を観ていたそう。片岡愛之助さんの歌舞伎の演技を生で観られて満足そうでした。
おつぎ(中村歌女之丞さん)の調子のいいキャラクターに、橘三郎さんの本当にムカつく演技(煽る演技が上手い)、ベテラン役者の盤石さを感じました。

終演後

銀座 麒麟でお茶しました

友「めちゃめちゃ楽しかったので、また面白そうな演目があったら誘ってほしい!桟敷席もハマっちゃいそう。今度はもう少し前の桟敷席に座ってみようよ」
私「新作やニザ玉(片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さん)の出演する演目でわかりやすそうなのがあったら誘うね!」

意外に幕間にやること(食事やお手洗いなど)があって、すぐには感想を言い合えなかったのですが、楽しんでもらえたようで安心しました!
どうやら、2回目の桟敷席もありそうです。

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