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“自然にふれあう”ということ

旅はいい。そう、僕は感じる。

朝の訪れを伝える小鳥の声に目覚め、光とともに体の温度が上昇するのを感じながら一日の事を考える。少しひんやりとする壁にもたれた頭は鈍る感覚を研ぎ澄ませ、僕の心と体が求める場所を指差す。わからないのだけれど、なんとなく、何かと出逢えそうな気がする。

少し疲弊した体は、いつも通り、陽の香りとマグに注がれるコーヒーのアロマに包まれ癒されていく。そうして、程なく支度が済めば向かう方へと愛車にキーを入れ、エンジンを吹かした。

田舎の都市を一時間も走れば、次第に車窓の景色は緑に変わり、開けた窓から入り込む風のせいだろうか、当たる口元も少し緩んだ。梅雨時期の山村にしてはやけに晴れた日で、道端に広がる草花が歓迎してくれているように見えて、公園の駐車場へ車を停めてはカメラ片手にそちらへと駆け寄る。細道を見つけてはそのまま進み、田園が広がる川辺へ出たり。なんとも言えぬ、幸福なお一人時間。なにもない場所なのだけれど、心が躍る音が聴こえてきて、訳もわからぬまま山道を走ると人里離れたところに梅林を見つけた。

少し勾配な坂道を登ってゆくと、間口が開けた小さなプレハブ小屋があり、機械音を立てながら転がる青梅とそれらを転がす老婆と老父。初めての梅の選別の光景に思わず、「こんにちは」と、気づくと二人に声をかけていた。それからは、梅のお話だったり、おじいさんのテレビに二回も出たことがあるという自慢話だったり、恋バナだったり、二人の昔話だったり。おばあさんが恐らく歳のせいか、何度も同じ事を口にしていたのだけれど、それに呆れながらも答えるおじさんとのやりとりがなんだか微笑ましくも見えて、オレンジジュースをいただきながら椅子に腰掛け輪になって二時間程おしゃべりを楽しんでる内に心が暖かくなっていくのを感じた。帰り際に、しっかりと、販売目的だと言いつつくれて食べた甘露梅の優しさがものすごく滲みた。

僕は友だちが多い方ではなく、一方から見ると寂しい人だなと思われることも少なくはない。けれど、自然に自分が感じたいように過ごしながら得る刺激や景色は孤独を愛してくれて、いつでも幸せのカップを満たしてくれる。心の旅は、新しい出逢いや発見を自然と運んで来てくれる。そう、思ったりしています。

日々の幸せは、日々を精一杯生きること。

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