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とあるスポーツチームフロントによる回想録【獅子吼】vol.6

ヴィアティン三重の”強み”のひとつが公式YouTubeチャンネルだと思っています。
2021年10月時点でのチャンネル登録者数は2.2万人。
最も多く再生された動画は124万回を数えます。

今回はこのYouTubeの生まれるきっかけと裏側をご紹介します。


選手からの1本のLINE

ある日、野垣選手から1通のLINEが届きました。
企画書を作ったので見てほしい。とのこと。
私はこういう前向きに提案してくる積極性が大好きで、すぐに会って話を聞くことにしました。
近くのファミレスで話を聞くと、最初に持ってきた提案は「人狼ゲーム大会」でした。
仰々しくパワーポイントで作られた資料を広げて熱弁されました笑

しかし結論としては却下。
せっかく前向きにきてくれたので、話は真剣に聞きました。しかし、私としてはこの企画自体はボツにしてもっと違う方向で検討をして欲しいと考え理由を説明してボツにしました。

その後も野垣選手とどうしたらもっとヴィアティン三重を知ってもらえるか?という事を話したり、意見を出したりしていきました。

YouTubeやりませんか?

しばらくして、今度はYouTube始めませんか?という連絡がありました。
当時はすでにYouTube全盛時代。今更感もありましたが、これはぜひやりたい!と思いました。

しかし問題は、コストと手間。
やるからにはそれなりのクオリティにしなければネガティブブランディングになりかねず、その為には初期費用はもちろん、定期的に動画編集を依頼するコストが発生します。

どうクリアさせていくか?をひとつひとつ埋めていきました。
編集はソフトさえ買ってくれれば自分が覚えます!野垣選手がそう言ってくれ、マイクなどの小物類だけ用意すれば開始可能な状況になりました。

どんな動画をあげていくか?

次は動画の中身の検証です。
当時、YouTubeに力を入れているⅤチームは少なく、やり方によっては充分に広がる。という目測はありましたが、やはりプレーで勝負しては負ける。そう思ってました。

野垣選手が今でも覚えている。と言っていたのは、私の「君らだからできる価値はなんだ?プレーの中身でいけばV1の選手たちには勝てない。もっと他の所で価値を作らないとわざわざ下部リーグを観に来てはくれない。」という言葉だそうですが、事実この感覚はずっと持たなければなりません。

そこで動画の内容はプレー動画では無く、企画物で選手たちの人柄が伝わるもの、そしてバレーボール講座などをやっていくことにしました。

最初の頃の再生数はほんとうに少なくてチャンネル登録者数も数十人からスタート。それでも選手たちみんなが協力をしてくれて、コツコツ動画をあげていきました。

一つ目の目標は登録者1500人!このラインが収益可能チャンネルとなることのファーストステップだからです。
登録者5000人まで増えたら収益化して、YouTubeでの収益をチーム運営費に充てる計画をしていました。
1再生してもらうことでチームの運営の協力になる。という新しいチーム運営の形になると考えていたのです。

結果的には想像より早く5000人を突破し、2019年8月に登録者1万人を突破。この1万人到達をきっかけに収益化を実施しました。

ヴィアティン三重ファンの為だけの動画にしない。

YouTubeの動画タイトルにはほとんど”ヴィアティン三重”という言葉はありません。
通常検索ワードにひっかかるようにチーム名を入れることが多いと思いますが、私たちは敢えてしていません。
ヴィアティン三重のファンだけで無く、バレーボールをしている広い層にみていただける動画にしていく為のひとつです。

SNSは各種取り組んでいますが、それぞれの特性に応じた使い分けが必要だと考えており、細かい情報を日々投稿するTwitterや田中ディレクターになって力をより注いでくれているInstagram、ここはファン層に向けた情報と写真の投稿の場所になっていて、よりライトな層に気軽に見てもらえるのがTikTok、YouTubeは少し長めの企画物の動画となっています。

戦略と選手の本気度

全ての中身は流石に公開しませんが、上記のような形で取り組みをしてきました。適切なタイミングでのコラボなどの投資ももちろんしました。
しかし最後は選手たちの本気度の賜物です。
すでに認識が浸透してしまい、スポットが当たりにくくなっているのですが、練習の後にわざわざ残って企画を練り、撮影をし、夜な夜な編集をしてくれていた努力には本当に頭が下がります。

今後について思うところ

動画撮っている暇があったら練習しろ。など当初は否定的なご意見もいただきましたが、この努力によって私たちを知ってくれた層も必ずいます。
これはVリーグにも意見を上げたりしていますが、やはりバレーボールはインフルエンサーの数が少ないと思います。
他の競技のトップリーグを鑑みるに、チーム公式以外にもたくさんの動画や記事、ブログが上がっていて、そういったファン層の方からチームやリーグを知るという機会に恵まれています。
インターネットやSNSを活用したマーケティングが必須な時代において、この分野でも今のVリーグは弱いと感じざるを得ません。
若干動画から話が反れますが、バレーボールの会場でもカメラを構えるファンの方をよく見ます。昨年Vリーグホームタウンフォトコンテストが行われました。これは非常に良い取り組みでしたが、これをもっと広げて試合写真のフォトコンテストをもっと力をいれてもよいと思います。

例えば、特設サイトを開設しそこにチーム毎のカテゴリを作る。
一般の方が自由に投稿できるようにして、年間閲覧数に応じた賞を設けるなど工夫はできるのではないでしょうか。
当然写真の著作権保護の制度設計は必要になりますが。

少し調べてみたらすぐに川崎フロンターレさんのフォトコンテストが出てきました。
ファンの方の写真が拡散されることによるチームメリットは大きいです。
チームの知名度もあがる、スポンサーネームの入ったユニフォームの写真が拡散されることにより、チームスポンサーにもメリットが生まれます。
圧倒的に知名度不足な問題がある中、莫大な広告費を投じるわけにもいかないわけですが、バレーボールにはすでに根強いファンという財産があるわけです。
ファン方の力も借りて知名度を上げていくことを仕掛けていくべきです。
(こういう取り組みは、いつか。とか、そのうち。とかではダメなんです。プロモーションは戦略的に仕掛けていかなければ自然に増えるということは無いと思っています。)

ブログや動画が増えれば批判的な意見、厳しい意見が目に触れる場も多くなるでしょう。しかしそれこそがより良いチームを作るうえで欠かせない意見なのです。
などと少し、意見的なものも入れましたが発信力と受信力の双方をもっとレベルアップしていくことが大切なのだと思っています。
今回はヴィアティン三重のYouTubeについて書いてみました!!
最後まで読んでいただきありがとうございます!!