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コロナ時代だからこそ身につけたい。ストレスマネジメントのススメ。

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<ライタープロフィール>
ささみ
経営者兼フリーライター兼コンサルタント。
大手企業のマーケティング部門で管理職として20年勤務後、産業心理学や行動経済学を武器にフリーで活動。
スマトラ津波のドキュメント本やシニア再就職本など出版も多数。現在は不動産投資家としても活動中。
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2020年のゴールデンウイーク、私たちは信じられない光景を目にしました。

人の気配が全くない東京渋谷のスクランブル交差点や、

ガランとした京都の清水寺……。

毎年渋滞している高速道路はガラガラで、新幹線の乗車率は0%の日も。


人々は一体どこにいったのでしょうか。

そう、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で、

人々の多くは「自宅」にいたのです。


自粛生活に関するある調査では、

4月末時点で全国で7割近い人が「自宅にいる」と回答し、

そのうち8割以上が「ストレスを感じる」と回答しています。

(パイルアップ株式会社2020年4月:全国の1600名の「自宅での過ごし方に関する意識調査」より)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000058287.html


ニュース番組でも「外に出られなくてストレスが溜まる」

「自粛ストレスが限界だ」との世間の声がよく聞かれました。


この時期、日本中で聞かれた「ストレス」という言葉。

ただ、ストレスの正しい定義や対処法を知らない方も多い

のではないでしょうか。


今回はコロナ自粛生活特有の「ストレス」の正体を紐解くとともに、

いかにストレスに対応していくかを解説します。


そもそも「ストレス」ってなに?

自分で自分のストレスに気づくために、

ストレスの正体を知っておく必要があります。

ストレスという単語は日常的に使われていますが、

知っているようで実は知らないストレスの中身について説明していきます。


<ストレスには種類がある>

ストレスとは元々は物理学の用語で、

1936年にカナダの生理学者であるハンス・セリエンが発表した

「ストレス学説」が語源です。


日本では1950年頃、戦後の急激な社会変化の渦中で

ストレスと言う言葉が使われ始め、

バブル期に突入した1980年代に、一般用語として定着しました。


ストレスとは、外部からのさまざまな刺激(ストレッサー)によって、

自分の心に負荷がかかり「歪み」が生じることです。

その結果、身体的な体調不調が起こることもあります。


厚生労働省は、ストレッサーの分類として、以下の3つを挙げています。

・物理的ストレッサー…暑さや寒さ、騒音や混雑など

・化学的ストレッサー…公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など

・心理・社会的ストレッサー…人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など


日本においては、昨今のIT化や労働環境の変化などの影響で、

「心理・社会的ストレッサー」については、心療内科やクリニック、

あるいは企業内のメンタルヘルス研修など、対策は充実しています。


今回のコロナウイルスにおける自粛要請は物理的かつ

化学的なストレッサーにあたり、

ある意味において、戦いようがない敵からもたらされました。

このような根本的なストレスへの対処は、

実はほとんどの現代人は不慣れなのです。


<ストレスは外部からの刺激>

前述したように、ストレッサーは「外部からの刺激」です。

一見「自宅にいる」という行為は、外部からの刺激とは無縁に思えます。

それにも関わらず、どうしてコロナの影響でストレスが生じて

しまうのでしょうか。


理由としては、「自分の思い通りにならない環境」

「自分の意思が通じない状態」で、

自粛を強制されているという状況が、人々に大きなストレスを

与えていると考えられます。


つまりは、「見えない相手に振り回されている」と言え、

さらには「従わざるを得ず、どうにも対処ができない相手」という状況が、

余計にストレスを増やしてしまっているのです。


ちなみに「ストレス解消」という言葉は誰しも聞いたことがあるでしょう。

テレビ番組でも、自粛の中でのストレス解消を取り上げていることも

多いです。


しかし、「買い物をする」「外で運動する」などの発散行動の効果は

一時的です。

買い物でぱーっと散財して瞬間的にすっきりした気分になっても、

その効果がずっと続いたという話はあまり聞きません。

しかも自粛生活という環境下では、発散するという行動をも

制約をされてしまっています。


「見えない敵に振り回されている」というストレスに対処するには、

「買い物」などという別の刺激で対処するのではなく、

セルフマネジメントという根本的な対処方法が実は効果があります。

普遍的な対処法で、かつ、自分の心次第でストレスコントロールする

ことができるのです。


今すぐ実践できるストレスマネジメント

ストレスのセルフマネジメントをするには、「認識」と「対処」

という2つのプロセスを経る必要があります。


<ストレスを認識する(ストレスモニタリング)>

一つ目はストレスを感じている状態を認める

「ストレスモニタリング」という方法です。

方法は簡単で、現在「ストレスを感じている事象」と、

「そのことによってどんな感情になっているか」を

紙などに書き出すだけです。


これは「筆記開示(ジャーナリング)」という心理療法の一部です。

テキサス大学の社会心理学者、ジェームズ・ペネベイカー教授の調査で、

ジャーナリングによってさまざまなストレス指数が改善する

という結果が出ています。


「家族のご飯を作りたくない」「ワンルームが狭すぎる」

「曜日感覚がなくなった」など、

自分が「嫌だ!」と思った事象をとにかく書き出します。

そして、そのことによってもたらされる感情「とにかく面倒くさい」

「自分がダメ人間な気がする」「イライラする」など、

何でもいいので書き出します。


自分の負の感情と向き合うのは、誰しもイヤなものです。

しかしやってみると分かるのですが、この作業は5分程度で終わります。

終わったあとは、「結局自分は何にイライラしていたのか」という

ストレスの正体が目の前につまびらかになっているのです。

姿が見えなかった敵の姿が「見える化」されるだけで、

だいぶ気分は落ち着くはずです。


<ストレスに対処する(ストレスコーピング)>

次は、正体が見えてきたストレスに対処する「ストレスコーピング」を

行います。

前述したように「外出してはいけない」と、

見えない敵に「制御されている」状態を少しでも打破するためには、

「自分で生活や時間をコントロールしている」という感覚が

大事になります。


具体的には、自宅待機で日々がその場の流れで過ぎてしまう事を

避けるために、自分で毎日スケジュールを立ててみることを

おすすめします。


生活の中に、どれだけ自分の意思や都合を盛り込むことができるか

という点が、ストレスを溜め込みすぎないポイントにもなります。


毎日やる事は一緒だからスケジュールを立てても……

と思われる方もいるかもしれません。


そんな時は「隙間時間」に着目してください。

家事など日々の必要な行動を可視化することで、

少しの隙間時間が現れてくるかもしれません。


その隙間時間で、「時間があれば〇〇がやりたかった」や

「一度△△に挑戦してみたかった」といった自分の願望や希望に

意識を向けることもできます。


たとえ、隙間時間に「テレビ」や「昼寝」という時間を設けたとしても、

その行動が「自分がしたかった事」という思いがあるのとないのとでは、

ストレスの感じ方や後悔などの自己感情も全く違います。


つまりは、なんとなくテレビを見てしまったり、

だらだらと昼寝をしてしまったという

「結果そうなっていた」という状態を避けるのです。


スケジュールをあらかじめ立てたという充足感と、

それに伴う「少しの時間は休憩しよう」という自主性が、

ストレスを生みにくくするのです。


このように、その場の流れや状況ではなく、

自宅の生活の中であっても、自分の意思を尊重した

自主性を盛り込むことができれば、

コロナストレスへの対処法にもなるのです。


<ストレスコーピングは複数持つ>

ストレスのセルフマネジメントで気持ちが落ち着いた人はよいでしょうが、

そうはいっても「まだモヤモヤする」「イライラする」という方も

いるでしょう。


そんな時は、セルフマネジメントに加えて、

自分が相性の良いストレス解消法を複数用意しておくのがおすすめです。


ストレスに関する調査によると、複数のストレス解消法を持っている人の

方が「うまくストレス発散できているか」と実感できていることが

分かっています。

(株式会社インテージ(2017年5月:全国の2125名を対象に調査)https://www.intage.co.jp/gallery/stress01/#section2


数少ない決め打ちのストレス対処法しかないと、

仮にその方法でストレスが去らないと、

さらなるストレスやジレンマを抱えかねません。

「この方法がダメだったら、次はコレ」と、

あれこれ自分の引き出しからストレスへの対処法を取り出せる状態を

作っておくとよいでしょう。


アフターコロナを見越して

コロナがいつ収束するかは、いまだ誰にも分かりません。

一生続くかもしれませんし、あるいは他の強靭な災いが

ストレスをもたらす可能性もあります。


またたとえコロナが去っても、複雑化した社会では引き続き、

さまざまな場面でストレッサーは登場するでしょう。

「会社で業績が上げられない」「ママ友とうまく行かない」

「体を痛めた」など、想像するとキリがありません。


現代社会では、ストレッサーを完全に遮断するのは

不可能と言っても過言ではありません。

また、実はストレッサーが何もない無風な状態よりも、

適度なストレッサーがあった方が、人間の精神衛生上よいと

科学的には言われています。

無風の大地に立つ木は、少しの気候変化にも弱いでしょうが、

普段から雨風にさらされた樹木の方が丈夫に育つようなものですね。


世間では「Afterコロナ」から「Withコロナ」というフレーズをもとに、

コロナと共存する新しい生活様式も謳われるようになっています。

ストレスも同じです。


完全にシャットアウトしたり、あるいは全ての原因を排除したり

するのではなく、自分が活力を感じて生きていくためには、

ストレスとうまく「付き合っていく」ことが大事なのです。


今回はコロナというアンコントローラブルなストレスだからこそ、

シンプルかつ根本的なストレスとの向き合い方を解説しました。

ストレスのセルフマネジメントは一生使えるスキルです。


ぜひこの機会に身につけて、ストレスと共存できる

しなやかな生き方をしてみてはいかがでしょうか。


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