小説・成熟までの呟き 44歳・1

題名:「44歳・1」
 2034年、美穂が44歳になっていた夏に、住んでいる大尾島で大型野外ライブが開催された。会場は大きな芝生の広場だった。なぜ会場になったかというと、大自然ということで高品質の音が響きやすく、出演者側も快感を味わえるためである。もちろん、普段はなかなか一流のライブが見られない島や近隣の住民に対しても貴重な機会である。美穂達は家族で観覧しに行った。いろいろな歌手やバンドなどが集まったが、美穂はバラードを発する歌手の声に「癒しを与えるなあ。」と言ってうっとりとした。そのような中、娘の日奈子にとっては、アイドルグループのパフォーマンスが特に心に響いた。日奈子は日々運動をガツガツとしてジャージばかり着ている。でも目の前のアイドルは、ガーリーな服を着て激しく踊っているのである。その姿は、日奈子には衝撃的だった。「こんなに可愛くて凄いダンスをしているなら、同性から多く好かれても不思議ではない。」と思った。祭が終わっても、日奈子のそのアイドルが与えた印象は消えなかった。そしてよく、そのアイドルの歌を聴くようになる。

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