僕と死んだ初音ミク

僕が中高生のとき

「ボーカロイド」は、大変流行っていた

中でも「初音ミク」は

僕らの中では歌姫として、現実よりも現実だった

米津玄師がハチP名義でニコニコのランキングをかっさらっていったり、

カゲロウデイズから始まる夏の物語も大きな反響を得ていた

無名だったアーティストが何人もシンデレラのように能力が評価され、

階段を登り詰めていったように感じる

けれども、

僕らがだんだんと大人になっていくにつれて

初音ミクは眠る時間が増えたように思える

あのころの僕らのような、どこにも居場所がなかった少年たちが、

だんだんと、ひろいひろい社会に出て、

忘れ去ってしまったのと同時に。

先日

同じ世代なのに全くボカロに触れてこなかった人が

「初音ミク聞き始めたんだ」

と言う。

「ワールドイズマインがいちばんすき」

と言う。

昔のフォルダをひっかきまわして、昔の記憶をひっぱりだして、

ボカロのおすすめをあれこれ話し、

僕の青春時代の話を、要らないことまで喋ってしまい、

一緒に笑って

そして

僕は僕の中の初音ミクが死んでいたことをはじめて知った

これが投げ銭ってやつか……