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恋するライムで私を踏んで 第一話「ラップ王子とヘッドホン女子」

あらすじ
大泉学園高等部1年生の山口ひまりは通学中に盗撮の被害にあう。それを助けたのが同じ学園の2年生秋月晴翔。晴翔はラップ部のエースでラップ王子と呼ばれていた。ひょんなことからラップ部に入部するひまり。ライバル校・至宝高校のエース森川勝太、その妹のあずさは晴翔の元カノだった。ライバル校も巻き込んで、ひまりと晴翔との恋の行方は?果たして大泉学園ラップ部は至宝高校を撃破し全国大会への切符を手にすることが出来るのか。これは青春キラキラ恋愛ラップ物語である。

第一話「ラップ王子とヘッドホン女子」

◯ひまりの夢
ヒーローごっこをして遊ぶ山口さくら(13)と山口ひまり(5)
変身ポーズを決めるひまり
さくらが、ヒーローに扮するひまりを被写体に写真を撮る
ひまり「ひまりパーンチ!」
さくら「あっはっは最高。ひまりカッコいいよ」
ひまり「お姉ちゃんは変身しないの?」
さくら「私はもうヒーローにはなれないの。変身するパワーをなくしちゃった」
ひまり「だったら私がお姉ちゃんを守ってあげるね」
さくら「ありがとう。ひまりが私のヒーローだね」

○山口家・ひまりの部屋(朝)
目覚ましを止める山口ひまり(15)

○同・リビング(朝)
ひまり「おはよう。あれ?お姉ちゃんは?」
ひまりの母(48)「お姉ちゃん、朝早くに出て行ったわよ」
ひまり「うそ。昨日も終電だったんでしょ。社会人やば」
ひまりの母「お仕事大変なのよ」
ひまり「ね、お姉ちゃんのパソコン使いたいんだけど」
ひまりの母「勝手に触ったら、お姉ちゃんが怒るわよ」
ひまり「だから、お母さんから言っといて」
ひまりの母「はいはい、わかりました」

○同・玄関
ひまり「じゃ、いってきます」
デカめのヘッドホンをして出かけるひまり。

◯電車(朝)
ひまり、おばあさんに席を譲る

○駅のエスカレーター
上りのエスカレーターに乗るひまり
エスカレーターが降りたところで、秋月晴翔(16)登場
晴翔「おい!この狡猾な盗撮魔 黙殺はさせねぇ撲殺もしねぇ 俺が言葉で仕留めるラッパー」
立ち止まるひまり
晴翔「お前、盗撮してたろ」
痴漢をラップで圧倒する晴翔
ひまり「え?」
痴漢が手に持つスマホ画面は録画中だった
ひまり「あー!」
駅員や周りの大人が痴漢を取り押さえる。
驚き手が震えているひまり。
晴翔「もう大丈夫だから」

○道端(朝)
刑事「(痴漢に向かって)あなたには黙秘権がある。あなたの供述は法廷で不利な証拠になる場合がある。あなたには弁護士の立ち会いを求める権利がある。弁護士に依頼する金がないなら、公選弁護人を付けてもらう権利がある」
パトカーに連行される痴漢をバックに歩き出すひまりと晴翔。
晴翔「俺、2年の秋月晴翔」
ひまり「1年の山口ひまりです。あの今日はありがとうございました」
晴翔「もう気分は大丈夫?」
ひまり「大分落ち着きました。では」
小走りになるひまり。呼び止める晴翔
晴翔「ちょっと、ちょっとどうしたの?」
ひまり「いや、あのこのままじゃ遅刻…」
晴翔「あ、それなら大丈夫。山口さんも乗ってけば?」
車のブレーキ音。驚くひまりの顔。

○大泉学園・校門内(朝)
電話で話す川島美咲(15)
美咲「え?何?盗撮?で、今車で向かってる。ん?もう着いた!?」
生徒たちの騒ぎ声に振り返る美咲。車が到着。
女子生徒「あ、ラップ三銃士とラップ王子だ」
車から降りてくる佐藤拓海(16)百田大輝(16)武藤優希(16)と晴翔
女子生徒たち「ライムの拓海」
拓海「韻踏んでる?」
女子生徒たち「バイブス大輝」
大輝「気合い入れとけ」
女子生徒たち「優希フロウ」
優希「Hey Girl」
女子生徒たち「ラップ王子」
晴翔「ラップが僕の友達さ」

ラップパート
晴翔・拓海・大輝・優希「大泉学園高等部 相手が誰でも堂々言う バイブス・ライム・フローで勝負 入部するならラップ部」
拓海「マイネームイズ タクミサトウ 気付くかな?韻の隠し場所
楽に勝とうなんてNO NO NO さぁ僕らと共に歩きだそう」
大輝「Hey yo 俺が百田大輝だ 曲がった事は大嫌いだ
正々堂々 正面突破 真っ向勝負で調子どう?」
優希「LA・LA・LA フローはもうフリーキーなスタイル ビートに適当に合わせてスマイル
これが優希流に空気生み出す方法 Ladies and gentalemen あなたもどうよ?」
晴翔「ラップ三銃士とオレ晴翔 絆の固さはオリハルコン
ラップ部俺ら盛り上げるぞ 手が出る前にバース蹴るぞ」
晴翔・拓海・大輝・優希「大泉学園高等部 相手が誰でも堂々言う バイブス・ライム・フローで勝負 入部するならラップ部」

拓海「本日放課後、体育館で入部試験を開催します。みんな来てね」
チラシを配るラップ三銃士と晴翔
所在なさげに車から降りてくるひまり
晴翔「あ、山口さん、よかったら今日の放課後見に来てよ」
ひまり「はい。あの今日はありがとうございました」
駆け出すひまり
美咲「ちょっと、ひまり。何がどーなってんの?」
ひまり「あ、美咲。実はね…」

◯教室
美咲「それは大変だったね。ひまりは大丈夫なの?」
ひまり「うん、もう大丈夫。はじめはパニクったけど、今はすっげームカつくって感じ」
美咲「そっか、なら大丈夫そうね」
ひまり「そう、秋月先輩が駅員さんや警察の人に説明してくれたおかげで助かった」
美咲「良かったね。いい人で」
ひまり「(チラシの晴翔を見ながら)うん、優しい人だと思う」
美咲「じゃ、行くでしょ」
ひまり「うん、一応行こうかな」
美咲「一応?(チラシを指差し)好きなんでしょ」
ひまり「ちょっと!まだ好きとかじゃないよ。いい人だとは思うけど」
美咲「……いや私が言ってるのはラップのこと。ひまり、いつもラップ聞いてるじゃん」
ひまり「あ、そっちの方!ひっかけやめてよ。恥ずかしいじゃん。ラップね。うんラップはいつも聞いてるから好き」
美咲「(笑いながら)ひまりは可愛いね」
ひまり「ちょっと、からかわないでー」

○体育館・ラップ部入部試験会場
すでに決勝まで進んでいるトーナメント表。
対峙するチャラ男とメガネこと一橋茂(15)、間に立つ司会の村田真之介(17)それを取り囲む群衆
村田「それでは行きましょう!大泉学園ラップ部入部試験決勝です。先攻チャラ男 後攻メガネ。レディーファイト!」

ラップパート
チャラ男「おい何だこのひょろひょろメガネ コイツじゃ決勝戦盛り上がらねぇぞ 存在自体がダセェ陰キャ 人気は圧倒的に俺が上 下から見上げる気分はどうだ? 万年カースト最下位のやつ 文句あんならアンサー返してみな おいメガネ メガネ 他に言うことねぇわ」
一橋「メガネ メガネってうっセーな ケガでもしテェのかこのやろう あれ?目が点になってるよ陽キャさん 韻踏めてるのはどっちかな?お客さん 拡散希望 今から見せるぞ下剋上 one for the money two for the show どう見たって俺の圧勝 ラップに込めた俺のパッション」

美咲「こりゃメガネの勝ちだね」
ひまり「うん、間違いない」
村田「それでは判定に行きます。どちらか一人に声をあげてください。先攻チャラ男が良かった人」
チャラ男の仲間と思しきグループから異常にデカい声が上がる
村田「続いて、後攻メガネがよかったという人」
まばらだが全体から声が上がる。
判定に悩む村田
村田「もう一度聞きます。どちらか一方に声を上げて下さい。先攻チャラ男が良かった人」
チャラ男の仲間が周りに威嚇する
チャラ男の仲間「おい、お前らも声出せよ」
萎縮する周りの生徒たち。それに気付いたひまりが声をかけようとする
ひまり「ちょっと…」
美咲「あんたらダッセーことすんなよ」
チャラ男の仲間「はぁ?」
美咲「ヤラセとか一番ダサいから。試合に対するリスペクトくらい持ちなよ」
かずみ(15)「黙れービッチー」
美咲「はぁ?誰今ビッチって言ったの」
かずみ「100人斬りの白い悪魔。中学生で先生にも手を出したってすげーよな」
美咲「(うんざりした顔で)あのさ、それって…」
ひまり「デマだから!」
村田「まぁまぁまぁ、一旦落ち着きましょう」
マイクを奪い取るひまり
ひまり「人の事情も知らないで、好き勝手嘘垂れ流して!あなたの言ってること、それデマだから」
かずみ「いや、お前誰だよ?」
晴翔が再生ボタンを押す。ビートが流れる

ラップパート
怒りで早口になってるのがラップぽく聞こえる
ひまり「私の名前は山口ひまり 川島美咲の友達 中学ん時からの親友だよ お前誰だよ?っていうお前が誰だよ 美咲がビッチ それは確かに事実 元カレは五十人だし彼氏も二人いる」
会場いる美咲の彼氏「え?」
彼氏にジェスチャーでゴメンする美咲
ひまり「だけど先生に手を出したそれは嘘 帰宅時間に痴漢にあって それで先生が時々一緒に帰ってただけ 痴漢の怖さあんた分かる? 朝の満員電車 帰りの夜道 不審者はすぐ側にいる 不信感ばっかり溜まる それでもスカートの丈は自分で決める 友達の名誉は私が守る」

湧き上がる会場。
美咲「ありがと」
ひまり「言い過ぎたかな」
美咲「カッコ良かった」

ひまりに近寄ってくる晴翔とラップ三銃士
晴翔「ラップ最高だった。ぶっちぎりで優勝!ラップ部へようこそ」
ひまり「いやいやいや、ラップしてないです。ていうか入部しないです」
大輝「いいバイブス持ってんな」
ひまり「持ってない、持ってない」
優希「ビートに対して倍で乗るとこ、すごい良かった」
ひまり「ビートに倍で乗る?意味が分からない」
拓海「韻踏んでるじゃん」
ひまり「踏んでません」
村田「じゃあ入部の手続きは教室の方で」
ひまり「いやいや先輩方、すみません、私ラップ部には入部しませんからー」

○音楽教室
村田「それでは、今年度の新入部員を紹介します。一橋茂」
一橋「どうも一橋茂 a.k.a メガネです。MCバトルはよくYouTubeで見ていて、それで自分でもやりたいなって思って入部しました。よろしくお願い致します!」
部員たちと握手をする一橋。

村田「では、もう一人紹介します。山口ひまり」
ひまり「あ、あのラップは聴く専門だったんですけど、秋月先輩に勧められて、入部しました。あくまで体験入部なので、お手柔らかに。よろしくお願い致します」
晴翔「歓迎するよ。入部試験のラップ、やばかった。あと俺の事、晴翔でいいから」
ひまり「はい、晴翔先輩。私の事もひまりでいいです」

村田「はい、あとついに我がラップ部にもマネージャーが付きます。川島美咲」
美咲「どっも~、美咲です。ひまりとは中学ん時からの友達。一人じゃ不安って言うからマネージャーとして参戦です。よろしくで~す」
ひまり「ちょっと美咲、余計な事言わないで」
遅れて栗栖はじめ先生(35)入室
はじめ「お、やってるな」
村田「先生、遅いですよ」
はじめ「悪い悪い。教師も色々あるのよ。ラップ部の顧問を務めます栗栖はじめです。よろしくお願いします」
新入部員一同「よろしくお願いします!」
はじめ「一応こう見えてラップ経験者です。まぁ名ばかりの顧問ですが、どうぞよろしく」
村田「はじめ先生がラップやってたなんて未だに信じられねぇ。そもそもラップしているとこ見た事ねぇし」
はじめ「まぁ引退した身だからね。あとこの音楽教室、この後軽音部が使いたいって言うので今すぐ撤収」
生徒たち「えぇー!?」

<第二話「ラップで告白はあり?」へつづく>

#創作大賞2024 #恋愛小説部門



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