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東京は二度焼けた 2/3

前回の記事:東京はニ度焼けた①

警告!『君たちはどう生きるか』こう読めば100倍つまらない!!
(「君たちはどう生きるか」完全読解、記事リスト)


「君たち」の冒頭、「へんな経験」で・・・


作品の冒頭のこの部分は、あまり上手ではない描写だとは思うのですが・・・

お話の意図としては、

コペル君が、7階建てのデパートの屋上という、当時としては最高の展望スポットから地上を眺めやる、という非日常的な経験をしたことで、

それがきっかけとなって、コペル君は、日常から身を引き剥がし、それを俯瞰した視点から眺めることが出来るようになるきっかけとなった、

ということを吉野は描きたかったのだと思います。


私が何度もその重要性を指摘している、「星空は何を教えたか ―あるおじさんの話したこと」の中には、

コペル君の「変な経験」に相当するエピソードが描かれています。


光の速さは1秒間に地球を7周り半するといわれ、太陽から地球まで7,8分でとどいてしまうというのに、その光が何千年、何万年、いや何十万年も走り続けてやっと届く距離とは、なんという途方もない遠い距離なのだろう。そんな距離にある星をつつんでいる宇宙とは、なんという広大なものなのだろう。だが、ぼくはこういうことを読んだり聞いたりすると、いつも、宇宙そのものの広大さにおどろくばかりでなく、

何か不思議な感じ

を受ける。

(中略)

おとうさんと一緒に美しい星空の下を歩きながらぼくの感じたのは、やはりその妙な感じだった。

「星空は何を教えたのか ―あるおじさんの話したこと」


「星空」における語り手の「おじさん」は、子供の頃にこの「何か不思議な感じ」、「妙な感じ」を経験し、以降、物事の見方がかわってゆくのですが、そのあたりの記述は以下のとおり。

おとうさんがそういう深い心づかいをもってあの時教えてくださったこと――泣いたり、わめいたり、怒ったりしているぼくたちの上に、大きな星空が限りもなく広がっているということ――このこともまたぼくには得がたい教訓となって残った。ぼくはおかげで、ものごとをほんとうに知るには、広い大きな立場から、ある距離をおいて眺めることを知らなければだめだ、ということがわかってきた。自分というものさえ、こういう態度で眺めることができなくてはいけないのだ。学問的な言葉では「主観をまじえず客観的に見る」ということなんだが、ふつうの言葉では「すなおに、ものをありのままに見る」といっても、だいたい同じことである。自分の個人的な欲とか、希望とか、好き嫌いとか、そういう感情を離れたきれいな心持ちで、また、どんなかたまった考えにも縛られず、もののほんとうの姿を見極めようとすることである。

「星空は何を教えたのか ―あるおじさんの話したこと」


これを読めば、「君たち」の「へんな経験」がどんな意味を持っているか、おおよそのところは把握できますね。


ところで、この令和4年の5月末に、国立国会図書館による

個人向けデジタル化資料送信サービス

が開始されました。

これにより、登録さえしてしまえば、誰でも数百万点の図書を画像データとして読むことが可能になりました。本当にすばらしい制度ですね。

吉野源三郎の著作も多数対象となっています。

そのなかの・・・・

吉野源三郎集、
「私たちはどう生きるか」



の巻頭には
「星空は何を教えたのか」
が載せられ、
そのあと20ページほど他の作品が続いたあとで、
「君たちはどう生きるか」
が収められています。

これも、「星空」の重要性を物語る証左であろうと思われます。


もし新たな版で「君たち」が出版されることがあったのなら、「星空」をも合わせて出版して頂きたいと強く願います。

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