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東京は二度焼けた 1/3

「君たち」完全読解

1923年の関東大震災の時、吉野源三郎は24歳。
この15年後に「君たち」が刊行されます。

関東大震災直後の銀座四丁目交差点付近 1923(大正12)年9月1日



いち早く復興していったのが銀座。
銀座のデパートは復興と繁栄の象徴でもありました。

コペル君の立ったのはこのような場所だったに違いありません。

銀座近辺には華やかな大衆文化が花開いていきますが、

その一方で、

吉野源三郎は

既に日本の悲劇的な敗戦を予想しており、

その事が

「君たちはどう生きるか」に暗い影を落としているのです。


丸山真男さんは

「東京は、その冷たい湿気の底に、
身じろぎもしないで沈んでいるのでした」
(「一、へんな経験」)

という一文を吉野が削除してしまったことを残念に思ったようです。
(現行版ではこの箇所は復活している)

丸山は削除した理由について吉野の気持ちを推測し、

「著者はこうした形容に或る照れ臭さを感じたのであろうか」

と言っています。


そうなのです。

吉野源三郎は、「通になるのは良いが、通ぶるのはいけない」という美学を大切にして生きた人でした。

湿気の底に沈む東京市とは、
なかば冥界に沈んだ東京です。

吉野は日本の未来、東京市の未来に、
避けがたい悲惨な運命が待っていると考えていたのです。

この予想は残念ながら的中してしまったわけですが、
「通ぶるのはかっこわるい」という美学を持つ吉野は、
丸山真男さんが指摘した箇所を削除することで、
予想していたことを悟られないようにしたのだと思われます。

↑空襲後、焼け跡・築地から銀座、有楽町をのぞむ




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