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何もない1日の日記

たとえばあなたに教えてもらった曲を、気づけばわたしの方がリピートして聴いていたときとか、深夜に真っ暗な部屋でゲームをするときとか。
行方不明のまま朝になり、平日の昼間に知らない町の住宅街を散歩しているときに吸う空気の味とか、普段は優しいお兄さんが男になってわたしを求める瞬間とか。
閉じ込める側も閉じ込められる側も同じ人間だし、命は平等だが対等ではないことに気づいた時とか。

1月22日

11:30

スマホのスリープを解除して苦笑いをする。
仕事を辞め無職になってから、面白いくらい朝起きれなくなってしまった。
初めのうちは起きることができない自分に焦りとか絶望とかを感じていたが、慣れてくると段々ダメな自分を受け入れることができるようになる。
いくらダメになっていくら周りから人が離れようと、自分は自分から離れることはできないからか。
離れることができなければ、受け入れるしかないからそうしているのか。そういう本能なのか。
無職は毎朝9時に行う約束であったはずの施設内清掃も、わたしが起きれないということを考慮して午前中の内にやれば良いということになった。
あれだけ毎日の労働を強いてきた施設も、進路変更してそのうち出ていくことが決まった人間に対しては甘いらしい。それか施設内最古参になってしまったボーナスか?

13:00

noteに投稿する用に、昔の出来事を文章にしている。
珍しく抽象的な表現を使わず、事実だけを羅列。考えることが少ない分楽かもね。
2000文字も書いたところで、全然面白くないことに気付き、タイピングの手が止まる。
面白みもなく、納得がいかないまま、このまま書き続けて投稿するのは、過去の自分に失礼だなと思って、下書きに保存してドキュメントソフトを閉じる。

15:30

目的もなく外を散歩することが好きだ。
ひとりで外を歩くことが許されない環境にいた時期が長かったからか、シャバの空気を吸っているだけで楽しくなるのだ。
道中、コンビニに入る。何を買おうとしたのか忘れて、お菓子売り場の前で数分立ち尽くす。
何が欲しいのか、何を食べたいのかわからなくなる。
自分で決めることができない。おまえはいつもそうだ。

我に返る。
目の前にあった板のホワイトチョコレートといちごチョコレートを手に取り、レジに向かう。
LINE Pay で代金を支払おうとスマホを操作する。
中古の4000円で買った型落ちのAndroidの動作は遅く、QLコードを表示する前にレジがタイムアウトする。
コンビニの店員さんに謝り、再度QRコードを表示し決済を完了させる。
コンビニを出て、いちごの方のチョコレートを齧りながら歩く。

17:30

毎日労働していた頃は1時間でも無駄をしない過ごし方をしていたのに、ここ半月は当時の自分が殴りかかってきそうなほど無益に時間を浪費している。
許してください。

18:30

失った今日を取り戻したいと思い、noteを書き始める。
過ぎた時間は戻ってこないことを痛感しながら、明日こそは1日を無駄にしたくないと願いながら、そういえば昨日も同じことを考えていたことを思い出しながら、脳を動かしタイピングを続ける。
もう少しだけ、変化のない負の領域に入ってしまったことに気付いていないフリをさせてほしい。

敢えて何もない1日の日記を書くことで、いつでも今日という1日が存在したことを思い出すきっかけを作ることができる。
この日記を読み返した未来のわたしが今日のわたしを思い出してくれるのなら、何もない1日が少しだけ、少しだけ報われた1日になるのかな。

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