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BLM運動 今こそ知るアメリカの構造的人種差別

5月25日、アメリカ合衆国ミネソタ州で、アフリカ系アメリカ人男性のGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)さんが警察官に不当に命を奪われた事件をうけて、アメリカ国内のみならず世界中で大規模デモが行われている。

この事件や抗議活動についてニュースで知ったり、SNSで一連のキャンペーンを目にしたという人も多いのではないだろうか。例えばインスタグラムで盛んだったのは#blacklivesmatter や#blackouttuseday などのハッシュタグを付け真っ黒な四角を投稿すること。

今本当に必要なのは、アフリカ系アメリカ人が奴隷制の元、また奴隷解放宣言後のアメリカで政治的にどのように扱われてきたのかを知ることだと思う。この抗議活動の本質は、現在まで連綿と行われてきた「構造的人種差別」に対する批判である。歴史を知ることは現在のアメリカ合衆国の状況を把握するうえで重要だと感じている。

人種差別は撤廃されるべきであるという考えはほとんどの人が持っていると思うし、日本人は一般的な学校教育で奴隷制やその解放、20世紀の公民権運動について学んでいる。ただ、英語でのリサーチを行うと、あまり知られていない要因が多数見つかり、いかに人種差別がシステムの中に根付いてしまっているかが見えてきた。

そこでこの記事では、現在のデモやそれに関する大統領の言動ではなく、歴史的に行われてきた「社会構造的人種差別」、Structural Racism についてまとめていきたいと思う。


・奴隷制
特に南部の大規模プランテーション農場では、白人の大地主が多くの黒人を使役し作物を収穫、大きな利益を上げていた。ここでのアフリカ系アメリカ人の扱いは知られている通り悲惨なものだった。

・南北戦争直後
奴隷制が禁止されたとき、奴隷労働に完全に頼っていた南部の州の経済が崩壊することは明らかだった。そこで目をつけられたのが、改正後の憲法13条だ。奴隷労働を禁止したこの条文は、犯罪者の使役は認めるという条件付きだった。アフリカ系アメリカ人は軽微な犯罪や冤罪で投獄され、実質的に奴隷労働に従事することを余儀なくされた。解放された後もアフリカ系アメリカ人=犯罪者、という構図が固定化していった。

・この時代、アメリカではアフリカ系アメリカ人へのリンチも恒常化。物語やテレビ放送などには差別的な内容が含まれていた。

・1877年から1960年代半ば
Jim Crow(ジム・クロウ)法
上記の期間にアメリカ合衆国内に存在した一連の人種隔離的な法律の総称。人種隔離の合法化や実質的な選挙権のはく奪など。

・Housing Segregation や National Housing Act
住居の面での黒人コミュニティへの差別が行われた。レッドラインニングは、金融機関などが黒人低所得者層が多く住む区画を融資リスクが高い区画として赤で囲んだことに由来し、住宅ローンの融資などで差別を生んだ。

・1971年 ニクソンの南部政策
大統領選のスローガンはWar on Drugs、ドラックの撲滅を宣言した。

・レーガン大統領
ドラッグ対策をさらに推し進める。

二人の真の目的はどうあれ、この政策が黒人コミュニティを最も攻撃する結果となった。黒人コミュニティへの警官投入の強化やアフリカ系アメリカ人が報道で取り上げられる数がさらに多くなった。黒人=犯罪率が高いとのイメージの浸透の一助となったと考えられる。これらの結果、National Survey on Drug Use and Healthという調査によれば、白人と黒人で薬物の販売や乱用の割合は同程度にも関わらず、白人に比べ黒人が逮捕されるのは単位人数あたり二倍以上になっている。

・ビル・クリントン政権のもと1994年に作られたFederal Crime Billは、刑務所のシステムの大幅な拡大を促した。刑務所に常に囚人を補給しシステムを回すため、アフリカ系アメリカ人がより長い刑を宣告されたりより有罪になりやすかったりすると指摘されている。

・現在も刑務所ビジネスが大きな力を持つ
現在、世界の人口の約5パーセントを占めるアメリカ合衆国は、世界の25パーセントにのぼる囚人を抱える。実際、1970年には357,292人だった囚人は、2014年には2,306,200人になった。

肌の色によって職の得やすさ、経済的安定性が脅かされている。経済力がなければ子供に十分な教育が施せない。そもそも公立校は地区ごとの税金で運営されており、貧しい黒人コミュニティのある地区はそれだけ学校も貧しいというサイクルが起きている。逮捕率は常に高く、これまでにも幾度となくアフリカ系アメリカ人が警察によって不当に殺される事件が起きている。

これら様々な要因が根底にあり、構造的な人種差別、さらには人々の意識の深くまでこの偏見が浸透しているのではないだろうか。たとえ人種差別主義者ではないとしても、だ。


以下は、リサーチの過程で見つけたいくつかの統計だ。

アメリカの黒人人口は12.3%だが、黒人の富はアメリカ全体からすると2.7%
生涯のうち、白人男性の17人に1人が服役するのに対し黒人男性は3人に1人
白人家族の収入の中央値は13万4千ドルだが、黒人は1万1千ドル
求職の際、もし黒人が白人に多い名前で履歴書を出すと返事が1.5倍になることが示されている
黒人の失業率は常に白人の2倍。2013年の黒人失業率は13.4%、白人は6.7%
白人の持ち家率は73.1%だが、黒人の持ち家率は40.6%
2017年の刑務所への収監人数は、黒人が約47万5千万人、白人は43万6千万人
引用:Democracy Now!、2013年View Research Center、2019年アメリカ国勢調査

一見平等は達成されたかに見えても、いまだ存在するのが「構造的人種差別」だ。統計はそれを示している。


参考
The 13th (Netflixのオリジナルドキュメンタリー)
Vox.com
ABA.org

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