経営戦略原論
経営戦略原論(琴坂 将広 著)
経営戦略論は、実務と理論にギャップが生まれがち。経営戦略論が歴史的にどのように発展してきたかを知る必要性がある。
「経営戦略の定義」
「3つの階層」
・全社戦略(コーポレートストラテジー)
・事業戦略(ビジネスストラテジー)
・機能戦略(ファンクショナルストラテジー)
組織、目標、道筋の要素を骨格として、何らかのゴールに辿り着くためもの。一般的に「外部環境」と「内部環境」の2軸から考えるものが共通している
ミンツバーグの戦略の5P
Plan:これからの未来の行動指針、行動計画。
Pattern:過去の事実、分析に基づく体系
Position:外部環境から自社の位置付け
Perspective:内部要因から自社を位置付け
Ploy(プロイ策略):外部からも内部からも導かれない行動。非市場要因
外部環境も内部要因も日々変わる。そのため変化の激しい環境では確立されていない。
「歴史」
国家権力と戦争により、戦略の概念は磨かれた。
・経営戦略の父 アンゾフ(1918-2002)
戦略的意思決定:不確実性の高い環境で、自社の資源をどのように活用するかを決めること
管理的意思決定:自社の資源を付加価値に変化させる具体的なプロセス検討
業務的意思決定:その実際の運用の中での決定
・アンゾフの戦略的意思決定
1 製品と市場分野
2 成長ベクトル(アンゾフ・マトリクス)
3 競争優位
4 シナジー
・外部環境:ポーター(1947-)の競争戦略・ファイブフォース戦略
社会背景として、近代的大企業の台頭と戦略論の停滞がポーター登場の素地。外部環境のみの分析で戦略を検討するべきではない。
ファイブフォースの限界
1 産業の定義が狭すぎる
2 要因だけが列挙されている
3 全ての要因を平等に扱い、重みづけができていない
4 結果、原因を混同している
5 統計数字のみで業界トレンドを無視している
6周期的な変化と一時的な変化を混同している
7 業界の魅力度を判断しようとしている
・内部環境:バーニー(1954-)の資源ベース理論
外部環境から戦略を作ることの困難さから、企業の持つ内部環境分析へ。内部資源をどのように活かしていくか。企業内部の属人的な要因に影響されることが多い。1980年代以降に再度、注目を浴びた。複数の研究者の功績によるもの。
「理論と現場をつなぐもの」
・より実践的なフレームワークへ
どのように事業戦略をつくれば良いのか。
外部分析と内部分析から、競争優位をどのように作るか。
→それぞれの事業環境によって適切なフレームワークを活用する必要がある
・全社戦略の策定
全社戦略と事業戦略の違いは何か。重なる部分も多いが、全社戦略はより組織全体の影響を与えるもの。
・KPIの運用
より実践的な「数値による管理」と「文化による管理」
全社的に数値と戦略を結びつける(各部署に因数分解する)
1990年代に財務と戦略が強く結びついてきた。数値による戦略の実行論。
・組織文化による管理
物語性、リーダーシップが重要となる。
人間は非合理的な要素や判断もある。そのバイアスの理解も進んだ。組織論は人間を理解するもの。
「現代的な課題」
新興事業や新興企業では予測が困難。新興企業が必ずしも外部環境が安定しているとは限らない。内部環境もどれが差別化になるのかがわかりづらい。そのため外部内部ともに重視していくことが難しい。
→ビジネスモデルキャンバスのフレームワークの活用(環境の整備)
→全体の枠組みを作ることを優先する
→まずは実践することが近道になることもある。
・多国籍企業の経営戦略
グローバル化が進み、複数の国を取り扱う。国際経営戦略では外部環境を中心に考えている方法が主流。
・技術進化による経営戦略の未来
人間は個別の意思決定ではなく、上流の意思決定の指針の立案を行うようになる。未来の経営では、人とシステムの関わりが重要となる。できる限り組織の柔軟性を高めておく必要がある。