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菌類が世界を救う

「菌類が世界を救う」キノコ・カビ・酵母たちの驚異の能力
(マーリン・シェルドレイク  著)

・菌類
菌類の分類は、動植物とも細菌とも異なるものとして分類されており、「キノコ」「カビ」「酵母」などが該当している。人類とも酒の醸造、パン生地の発酵、キノコ(椎茸、松茸、トリュフ)など関わりが深いが、菌類が単一の特徴で定義することができず、複数の特徴を合わせて分類されている。

菌類は菌糸体という構造体を成し、巨大なものでは推定年齢が2000年〜8000年にもなる。古代、藻類の植物が海から上がる時に菌類の力を借りて(硬い地中から栄養を得る役割を菌類をパートナーにして)、地上に上がった。

・経路探索
迷路のような経路探索において、菌類は体をどう分布させればよい結果になるかに常に向き合っている。菌糸体は探索モードであらゆる方向に成長するが、食物が見つかればそのリンクを強化し、他の枝は引き上げる。

・生命史における発見、水平伝播
細菌は水平に遺伝子を交換できる。両親から得る垂直的な遺伝とは異なるもの。人間でいうと文化の伝達が水平的な伝播にあたる。細菌の進化は水平遺伝子伝播が通常であり、進化の速度が極めて早い。

・生物の3つのドメイン
1 細菌
2 単細胞生物
3 真核生物(動物、食物、藻類、菌類など多細胞生物)

進化の大事な局面は、見知らぬ生物同士が合体することによる。真核生物は、単細胞生物が細菌を体内に取り込み共生を続けて生まれた。ミトコンドリアは細菌の子孫。葉緑体は光合成細菌の子孫。

・多極限環境生物、地衣類
砂漠の焼けた表面でかさぶたのように繁殖する地衣類。砂漠の表面を安定させ、砂嵐を減らし、砂漠化を防ぐ。火山の中でも南極大陸でも大繁殖することが可能。宇宙空間でも生存できると考えられる。一部の菌類は地衣化し、一部は光合成するパートナーと共に生存し地衣化しない。

・植物と菌類の共生
菌類と植物の根の間で起こる相互作用により、植物の形態、匂い、色、成長などが変わる。植物の祖先と菌類の関係性が出来上がり、植物は陸に上がった。植物は周りに誰がいるかによって関係性を構築する。菌類も同様に共存するパートナーは再構築される。

植物は光合成による炭素を菌類に与え、菌類は地下のリンを植物に与える。一時的に一方通行になることもあるが、季節が来ると後で借りを返すことになる。

・ウッド ワイド ウェブ(WWW)
根菌ネットワークは協力的で複雑なもの。
一つのソラマメ外敵に襲われると、他のソラマメが自身は被害を受けていないにも関わらず、根幹での情報伝達により防護化合物の生成を始めた。

・菌類が世界を救う
人類は物質の分解を菌類に頼ってきた。汚染された生態系の回復として有毒なタバコの吸い殻や汚染物質の分解も可能にする。殺虫剤、合成染料、爆薬、医薬品なども分解する。

菌類は分解者だけではなく、リチウム電池の代替品や皮膚の代用など創造者の側面にも期待される。

・酵母と人類
人の腸内では消化できないものを消化し、酵母は人の皮膚や肺の中、消化器官などあらゆるところに存在する。酵母は最も単純な真核生物であり多くの遺伝子を人と共有する。(酵母が微生物だと分かったのは19世紀になってからと歴史は浅い)

パン生地やビールのように酵母を古代から発酵に利用してきた。人類が遊動生活をやめて定住生活に切り替えたのは、パンかビールのためではないかと言われている。酵母が私たちを家畜化したとも言える。