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経営戦略全史

経営戦略全史(三谷宏治 著)

概要
ポジショニング派は外部環境が大事(儲かる市場で、儲かる立場であれば勝てる。定量的な分析。SWOT分析・ファイブフォース分析など)、ケイパビリティ派は内部環境が大事(自社の強みがあるところで戦えば勝てる。人間的側面、優れたリーダーシップや組織は定量化できない。)。互いに相反する意見。昨今では、デザイン思考、アダプティブ戦略、イノベーションによる突破口。

1910−1930年代
・テイラー:科学的管理法(公正な段階的賃金とマニュアル化された作業生産性向上)。工場の技術コンサルを超えられなかった。
・メイヨー:人間関係論的な管理法。作業生産性は作業者の士気に最も影響される。職場の上司や同僚の信頼感といった定性的な要素で決まる。面接しただけで効率が上がった。人は感情に大きく影響される。経済的側面よりも職場での人間関係の改善によって士気が上がる。
・フェイヨル:企業の経営管理プロセス(活動計画、組織化、指令、バランス調整、フィードバックにより改善)。

1930-1960年代
・ドラッカー:顧客の創造(顧客への価値提供、マーケティングの根本)、人間的機関、社会的機関(企業は社会の公益のためにある。CSR)の3つのコンセプト。
・アンゾフ:市場における競争の概念を導入した。戦略(事業戦略、その上の企業戦略)。アンゾフのマトリクス(新規既存の市場と新規既存の商品の2×2)。製品市場分野(どの製品に力を入れるか)、競争環境の理解、シナジーの追求(複数の商品の協調)、成長のベクトルの決定。
・チャンドラー:組織と戦略は相互に関わる。事業戦略は変えやすいが組織は変えずらい。事業戦略に沿って組織戦略に移るのが無難。
・ポーター:コストリーダーシップ(競争相手よりも安いか)、付加価値があるか、土俵を絞り込むか。経営戦略はこの3つのみ。
・コトラー:プロダクトライフサイクルは競争の概念がなかった
・アンドルーズ:SWOT分析を広める

1960-1980年代
BCG:市場の成長率と市場シェア戦略(リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャー)を合わせて考える
ポーター:ファイブフォース分析(競争戦略は環境を捉えること)、儲かる
位置どり(コストリーダーシップ戦略か付加価値戦略の2つしかない)。ポジショニングの選択。バリューチェーン(ポジショニングだけでなく、企業の内部に注目)。範囲が限定されたケイパビリティ(企業文化論やリーダーシップは含まれていなかった。)
マッキンゼー:7S(ハード面の3つ 戦略(Strategy)、組織構造(Structure)制度システム(System)、ソフト面の4つ、スキル(Skill)人材(Staff)スタイル(Style)共通の価値観(Shared Value))
ランチェスター:一騎打ちのの場合は数が多い方が勝つ。集中砲火の法則では複数の敵を同時に攻撃できる場合は戦略は2乗になる。弱者は局所的に一騎打ちを狙うべき。

1980-1990年代 ケイパビリティ派
ピーターズら:戦略と組織だけで企業は語れない。7Sの価値観の共有や企業文化で経営が行われている方が経済成績が良かった。ケイパビリティ派の台頭。
BCG:タイムベース戦略(付加価値を上げるには時間を短縮する、時間を削ることでコストも下げる。)

儲けられる組織かどうかを知るために経済学的手法(ポーター:ファイブフォース)、各企業が持つ経営資源(有形資源、無形資源、ケイパビリティ)の使い方に違いがある。経済価値、希少性、模倣困難性、非代替制(組織)VRIOフレームワーク(バーニー)。持続的競争優位性の明確化。どうやってその資源を獲得できるかは不明だった。

1990年以降 ポジショニングとケイパビリティの統合
発展期にはポジショニング重視、安定期にはケイパビリティ重視。その企業の状況に応じて、対応する、固定化されない。状況に応じて両者が整合している必要があるということは、アンゾフがすでに主張していた。
戦略は高付加価値追求か、コストリーダー追求しかない派と、敵のいない市場を作り出す(ブルーオーシャン)派。ケイパビリティを変え続けることができる企業が生き残る。

2000年代以降 イノベーション
クリステンセン:イノベーションのジレンマ
シュンペーター:経済を動かすのはイノベーション
レイフエドビンソン:フューチャーセンター(フラットな対話の場を作る)

2010年代以降 アダプティブ戦略
試行錯誤を繰り返すしかない。ABテスト。(Google、Amazonなど)デザイン思考。
中央政権で統制が取れた理想的な組織は、戦争で失敗の元となった。現場での試行錯誤のボトムアップがポイントとなった。
ケイパビリティとポジショニングの整合:コンフィグレーション。

その後は、イノベーションの重要性が高まる。
どうやって高速に試行錯誤をするかが重要。

・アントレプレナー
顧客発見(聞く)、顧客実証(売ってみる)、顧客開拓(リーチ検証)、組織(本格展開)。スタートアップは商品開発と顧客開発のみ(営業もマーケテイングもいらない)

1996年代以降 B3Cフレームワーク
ポーターのファイブフォース分析は、業界構造を理解し将来の収益性を予測するためのフレームワークだった。
BCGの経験曲線はコスト面を理解し予測するためのもの。バリューチェーンは自社の強みを理解し、VRIO分析はその強みを分析するためのフレームワーク。いずれも経営戦略の一面だけを捉えるものにすぎない。
外部環境と内部環境、ポジショニングとケイパビリティを扱う方法は、SWOT分析と3C分析。

B3C:
・土俵(その市場の魅力や事業特性を表す)
・競合(競合の事業への姿勢や戦略 強み、弱みを表す)
・自社(自社の事業への姿勢や戦略 強み、弱みを表す)

最後に
どれを参考にするかを選択して自社の技としていく。
全ての理論は間違っているがどれかを選ばなければならない。