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観光型MaaS

01 MaaS "マース" の概念

MaaS (Mobility as a Service)
個々の移動方法に分散していた情報を一つのアプリやWEBサービスに統合することでシームレスな移動を実現するもの。

これまでの移動
ユーザー自身が独自に調べたルートや運行情報に基づいて、出発地から目的地までの移動全体の行程を計画。また乗車する移動方法(電車、バス、タクシー、レンタサイクルなど)ごとに予約や支払い等を行う必要があった。

MaaSが実現する移動
スマホアプリなどに出発地と目的地を入力するだけで、提案される複数のルートを元に移動経路を計画することができる。また一つのアプリケーション上で利用する交通の予約や支払いが可能に。

02 3パターンのMaaS

2−1  生活型MaaS(地方)
【課題】自家用車率が高く公共交通機関が少ない。目的地までの距離が長い。高齢者の移動が困難。交通事業者がビジネスとして成立しない。
【期待】ニーズに合わせて乗い合いで乗車できるMaaS
2-2  生活型MaaS(都市)
【課題】道路渋滞、満員電車など交通キャパシティを超えた状態。
【期待】多種類の移動情報が集約され、エンタメ、買い物情報などとも統合されたMaaS
2-3  観光型MaaS
【課題】観光地の周遊活性化に伴う消費額増加。特に訪日外国人においては移動方法や観光地周辺の情報不足。
【期待】宿泊施設、観光施設と交通サービスを一括で予約・決済できるMaa S。観光地の混雑緩和や新たな観光ルートの提案が可能。

03 サービスレベル

■ LEVEL1 [ 情報の統合 ]
料金や時間、距離など各移動主体に関するさまざまな情報が一元化されて表示される状態。(乗換案内サービスのジョルダン、ナビタイム、Googleマップなど)
■ LEVEL2 [ 予約決済の統合 ]
複数の交通機関の交通案内から発券や予約、支払いまでを行うことが可能な状態。(Suica、Pasmoなどの交通ICが近い状態)
■ LEVEL3 [ サービス提供の統合 ]
様々な移動手段が定額制などの一元化されたパッケージとして利用者に提供される状態。(周遊パスのようなもの)
■ LEVEL4 [ 政策の統合 ]
国や自治体などの都市計画やインフラ整備などの交通政策が一体となって立案され推進されている状態。

04 フィンランドの先行事例

フィンランドのMaaSであるWhim(ウィム)
2016年にサービス開始。月額499ユーロを支払うことで、多くのモビリティが乗り放題になる仕組みを導入している。2019年12月に日本の千葉でも導入実験を開始。

【Limitedプランの場合(月額499ユーロ)】
・公共交通機関(ヘルシンキ市交通局)が乗り放題
・タクシーが5kmまで無料(月80回分)
・レンタカーが常に無料
・シェアサイクルが30分まで無料
※安いプランで約7000円/月、Limitedは約6万円/月

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(参照:Whim公式サイト)

Whim(ウィム)の主な実績:
公共交通機関の利用率アップ48%→74%(ヘルシンキのWhimユーザー)。都市部の渋滞緩和、公共交通機関の生産性向上、人流データ収集。

05 JR東日本/ Izuko

5−1 概要:伊豆半島での観光型MaaS "Izuko"の実証実験
5-2 企業:東急、JR東日本、JR東日本企画、他
5-3 時期:2019.4-6(Phase1), 2019.12-2020.3(Phase2)
5-4 サービス内容:国内外観光客が鉄道/バス/AI オンデマンド乗合交通/レンタサイクル/観光施設などをスマートフォンで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる2次交通統合型サービス
5-5 成果:デジタルチケット購入が6000枚以上、アプリダウンロード2万件

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デジタルフリーパス例(参照:JR東日本リリース)

06 小田急電鉄/ EMot

5−1 概要:箱根エリアで観光型MaaSとして、新宿と新百合ヶ丘で生活型としてEMot(エモット)アプリの実証実験
5-2 企業:小田急電鉄、他
5-3 時期:2020.1- (観光型), 2019.10- (生活型)
5-4 サービス内容:鉄道/バス/タクシー/シェアサイクルなどの交通手段を組み合わせた複合経路検索や連携するモビリティサービスの予約・決済機能のほか、企画券や生活サービス施設の電子チケット購入など

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箱根での複合検索の例(参照:小田急電鉄プレスリリース)

07 JR東日本/ ググっとぐんMaaS

5−1 概要:群馬県での観光型MaaS "ググっとぐんMaaS"の実証実験
5-2 企業:JR東日本、他
5-3 時期:2020.4-6
5-4 サービス内容:経路検索やデジタルチケット購入。今回はモバイルSuicaによる決済サービスが利用可能となるほか、観光スポットを選択していくことで旅行計画を作成できるプランニング機能が新たに利用できる。

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ググっとぐんMaaSの検索例(参照:JR東日本リリース)

08 JR西日本/ setowa

5−1 概要:瀬戸内エリアでの観光型MaaS "setowa(せとわ)"の実証実験
5-2 企業:JR西日本、他
5-3 時期:2019.10-2020.3
5-4 サービス内容:特徴は旅の行程作成が中心となっていること。行きと帰りの日程を記入し、宿泊するホテルを選択、さらに立ち寄りたい場所、立ち寄る時間帯や所要時間を入力すると、自動的に旅のスケジュールが作成される。移動手段は新幹線などに加え、船舶、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクル、カーシェアリングと、地域に存在する交通手段を網羅。

せとわ

せとわ到着地エリア(参照:JR西日本リリース)

09 KDDI/ 沖縄CLIPトリップ 

5−1 概要:沖縄県内への観光客は年々増加しており、それに伴い空港での混雑や、空港から観光地までの道路渋滞、観光地の混雑などの課題があり観光型MaaSの実用性を検証し、公共交通の利便性向上を目指す。
5-2 企業:KDDI、沖縄セルラー他
5-3 時期:2020.2-3
5-4 サービス内容
・沖縄観光情報の提供(現地ライターによる観光記事、食べログ連携による現在地周辺の飲食店情報の提供)
・複合経路検索(ゆいレール、タクシー、路線バス、徒歩など複合)
・交通手段のキャッシュレス決済(ゆいレール1日乗車券の購入とデジタルチケットの表示、タクシーの配車と料金決済)など

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(参照:KDDIリリース)

10 近鉄グループ/ 志摩MaaS

5−1 概要:志摩地域周辺の二次交通の利便性を向上させるための実証実験
5-2 企業:近鉄グループホールディングス他
5-3 時期:2019.10-11
5-4 サービス内容:眺望の優れた横山展望台へのオンデマンドバスや、志摩地域の観光地間を相乗りで運行する相乗りタクシー、英虞湾マリンキャブの運航を行う。また近鉄グループのホテル利用者を対象に、賢島駅および鵜方駅と近鉄グループホテルをつなぐホテル送迎バスを新たに運行。

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志摩エリア路線イメージ(参照:近鉄グループリリース)

11 参照サイト

みずほ情報総研レポート(2019 Vol.18)
IoT News(2019年11月)
自動運転Lab(2019年10月)