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日本の10年先を行くデジタル国家「エストニア」

01 電子政府ランキング

国連の経済社会局(UNDESA)は2020年7月10日、国連加盟193カ国を対象とした電子政府の調査結果をまとめ、「世界電子政府ランキング」として発表。
注目すべきは前回(2018年)から大幅に上昇したエストニアです。

1位 デンマーク(前回1位)
2位 韓国(前回3位)
3位 エストニア(前回16位)
4位 フィンランド(前回6位)
5位 オーストラリア(前回2位)
6位 スウェーデン(前回5位)
7位 イギリス(前回4位)

~
14位 日本(前回10位)

02 人口132万人の小国エストニア

日本のデジタル庁を担当する平井大臣もエストニアのデジタル化について言及しています。

エストニアデジタル政府

■ ヨーロッパのバルト三国の一つ
■ 人口:132万人
■ 国面積:日本の9分の1(4.5万平方キロメートル)
■ 首都:タリン
■ 公用語:エストニア語(しかしほとんどの若者は英語が堪能)
■ 出身者:大相撲の把瑠都
■ 特徴:行政手続きの99%がオンライン化。国策としてIT化を進めており、電子政府、電子IDカード、ネットバンキングなどの普及が顕著。選挙を電子投票で行える世界で唯一の国。2017年にはデジタル通過「エストコイン」の計画を発表。

03 国民の98%が所有する電子IDカード

エストニア_電子ID

(エストニアのe-IDカード)

2002年エストニア政府はエストニア版マイナンバーカード「e-IDカード」を国民に配布し、従来は役所に訪問しなければ不可能だった本人確認をオンライン上で可能にしました。現在エストニアでは99%の行政申請がオンラインで可能であり、連携したサービスも2,700を超えます。そして現在エストニア国民の98%が電子IDカードを所有しており、エストニア政府はこの電子IDカードによって、国民の名前や住所、生年月日などの基本情報のほか、どの分野の教育を受けているのか、納税額、学歴、病歴、犯罪歴等の情報を把握することが可能になります。銀行送金の99%もオンラインでキャッシュレス社会。

■ 引っ越しの一括手続き(オンラインで住所を変更するだけで、電力/ガス/通信会社/金融機関などの変更が完了)
■ 確定申告(3日後に還付金が振り込まれる。95%がオンライン申請)
■ 選挙の電子投票(世界で唯一)
■ 医療記録、来院履歴、病歴、X線写真の病院間共有
■ 薬/処方箋(医師にメールやSkypeなどで連絡を取ることができ、直接医師を訪れる必要はなく患者は薬局に行きIDカードを提示するのみ)
■ 大学の入学願書申請
■ 出生届や子どもの命名(病院側がシステムから出生登録を行い、国民ID番号が付与。自動的に国の子育て支援に関する手続きがすべて完了)
■ 学校への入学申請、成績表へのアクセス
■ 企業の登記申請、年次報告書の提出、取締役会リストの変更
■ 契約は紙の書類ではなくPDFファイルなどの電子書類に電子署名を行うことで完了

さらには、国民35%が利用しているデジタルIDアプリです。初回登録時にe-IDカードを認証し、アプリと紐付けることで公的身分証による本人性を担保しそれによって、毎回カードリーダーでe-IDカードを読み取る不便さがなくなります。

04 デジタル化が進んだ背景と理由

一つ目は立地。
国の半分以上が山に覆われており、全ての国民に行政サービスを届けるためにはインターネットに頼るしかない状況だったことが挙げられます。

二つ目はIT人材。
エストニアは1991年にソ連から独立。独立当時は国の主力産業もなく、資源もありませんでした。しかし、ソ連の残した最先端技術の研究所があり、人工知能などを研究していました。そのため研究所で働く人材を中心として、電子政府のシステムを構築していきました。

三つ目は侵略対策。
ソ連崩壊後も残り続けているロシアという大国の脅威。エストニアは、いつかまた侵略されるかもしれないという恐怖感から、政府関係の全ての情報をデジタル化しておき、いつでもバックアップできる体制を整えています。(政府関係の全てのデータベースはルクセンブルクに置かれているため、領土が奪われ物理的に政府が機能しなくとも、IDカードを持った国民がインターネットで政府のサイトにアクセスすれば、エストニアという国はオンライン上で機能し続けることができるようになっています)

05 成果

・スタートアップが集まるエストニア
法人設立が簡単な背景から起業が盛んであり、北欧でのシリコンバレーと呼ばれるほど、世界中から多くのIT起業が進出しています。(2003年のSkypeなど)。ネット環境が整っていることからリモートで働くフリーランスなども活発であり、ハッカソンや最新のテクノロジーに関するイベントが開催されるなど、起業をする文化自体も根付いています。

・教育
またプログラミングやアプリ開発などの教育を小学校の選択授業に取り入れるなど教育にも力を入れており、学力についても国際学力調査で上位となっています。

06 データを取り扱う信頼性と透明性

エストニアでは、すべての行政サービスに関してどのような種類のデータに政府がアクセスするか決められており、データが目的に沿って利用されているかどうかを第三者機関が監視しています。
また、政府がどのようにデータを扱っているかが明確であり、誰もがどの政府機関の誰が自分のデータにアクセスしたか調べることができ、アクセスした人に対して自分のデータを見た理由を問い合わせ、回答を義務づけることができます。警察の捜査であっても事後報告が必須となっています。

教育について。デジタルIDと暗証番号は現実世界の個人自身と同じ価値があり、家族や親戚を含めて誰にも渡してはいけないこと、もし渡してしまったら銀行から資産を盗むこともできてしまうことなどを教育する必要があります。銀行のふりをして送られてくるメールには返信をしてはいけない、不審なファイルが添付されたメールは開かないこと、不審なURLリンクはクリックしないこと、といったことが挙げられます。そのような教育を通じて、国民が適切にデジタル技術を扱う必要性があります。

参照

http://www.am-one.co.jp/warashibe/article/chiehako-20200323-1.html
https://iotnews.jp/archives/140870
https://media.dglab.com/2020/03/22-eid-01/
https://ampmedia.jp/2019/09/06/estonia-administration/
https://ideasforgood.jp/2019/07/05/estonia-digitalization/