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やっぱり山なんて大嫌い!

山は嫌いだ。とにかく冬山ときたら最悪だ。


だが、どうしても冬山に登らなければならない事態が起きた。


それが…スキー


しぶしぶ、行ったあげく、さんざんカニ歩きをやらされて、開けても暮れてもハの字&斜滑降、時々、キックターン。カニ歩きなんてもはや登山以外の何物でもない。


カニ歩き → 斜滑降 → キックターン → 斜滑降 →キックターン → 斜滑降 → ボーゲン →カニ歩き


延々、延々、延々、この繰り返し。


真横では、カップルやおねぇちゃんたちが悠々とリフトに乗って、ゲレンデを登っていく。


そんな光景を横目に、カニ歩き。カニ、カニ、カニ


いい加減、カニ歩き(自分の足で斜面を登る技術)なぞと言う原始的な登り方ではなく、文明の利器を使いたくなるのが人ってもんだ。カニは結構つらい。小学生の私の体力をすぐに消耗させた。「リフト乗せてくれよ」小さな私が懇願するも「そんなもん100年早いわ!」と、スキー板の滑り止め紐を足にまいた、熟練スキーヤーに一蹴されて終了。


また、また、蟹地獄。蟹、蟹、蟹、蟹、


ボーゲン(ハの字)がどうにかできるようになってきたら、「よし、それじゃ、ストックよこせ」と、熟練スキーヤの暴挙。命の次に大事なストックを取り上げるとは!


常軌を逸しているとしか思えない鬼の所業……


ストックを取り上げられ、命からがらボーゲンでゲレンデを滑り降りた。
ボーゲンがようやくできるようになったところで、やっと憧れのリフトに乗せていただいた。


抱きつくようにリフトのバーをつかんでどうにかこけずに座れた。リフトがグングン上昇していく。目下を見れば、谷、谷、谷、落ちたら確実に死ぬ高さ。それなのに、このリフトときたら、ジェットコースターのように安全バーがあるわけでもなく、ただ座っているだけ。しかも、なんとも頼りない作り。申し訳程度鉄のロープにちょこんとだけ固定されていて、座面が木製のリフト。ギコギコと泣きながら、沢を渡っていく。生きた心地がしなかった。


リフトへの憧れは、一気に恐怖へと変わった。リフトにしがみ付いていると、寒さが全身を襲ってきた。もう最悪だ。手はかじかみ、耳が千切れそうに痛い。


苦痛と恐怖に耐えながらようやく山頂に到着した。さらに降りる際、案の定転倒し、リフトを止めた。


同じチームの奴らも次々とリフトを止めていた。リフトを止めるぐらいかわいいもので、最悪な奴は、手袋やゴーグルを谷底にプレゼントしていた。


山頂に着くと、ストックを取り上げていた鬼の熟練スキーヤが、各々にストックを返してくれた。


「それじゃ、今まで教えたことができたら下まで降りられるから、下で待ってるぞ」


と、言い残して、ゲレンデを滑走していった。


ゲレンデを見下ろすと、驚愕の光景が目に飛び込んだ。


崖。まさに崖にしか見えない急斜面が目の前にあった。


どうやって降りるんだよ!!!


やまびこが呼応するほどの心の叫びをあげて、斜面を下る。


怖い。怖すぎる。


ボーゲンで少し下を向いただけでも信じられないスピードが出る。恐ろしさで、転倒停止を図るものが続出していた。一度転んだものは、文字通り、七転八倒しながらゲレンデを落ちて行った。あるものが斜滑降で滑っていった。私も転落する勇気がなかったので、それにならった。


斜滑降 → キックターン → 斜滑降 → キックターン


延々、その工程を繰り返し、命からがら下まで降りた。


それから、何年か経過して、パラレルターン、ウエーデルンとスキー技術を研磨していった。


それだけ、苦労して体得したスキー・・・のに、だのに・・・なぜ・・・
時代が移り変わって、スノボー。


初めは、ゲレンデのお荷物状態で疎まれていたスノーボード。FMで囃され、ただのナンパツールでしかなかったスノーボードが今や主流。


今やスキー板なんぞ履いていたら、「ぷっ」と笑われてしまうありさま。
何だ、その「ぷっ」てのは!


昔はこれでもゲレンデの王子様だったんだぞ!と、息巻くこともできず
伝家の宝刀「ウエーデルン」を披露。どうだと、どや顔でボーダー達に胸を張ると、腰の動きが変と嘲笑を買ってしまうありさま。


オーノ〜!!ガッデム!!


まったく若人たちに、この芸術的ウエーデルンが理解されないなんて。
ふ、ふんだ。もういいもん。一人ですべってるもん。プンプン。


<`ヘ´><`ヘ´><`ヘ´>


あースキーだよ。板二枚で何が悪いってんだ。


雪山にわざわざ行っていてこういうのもなんなんだが、やっぱり山は嫌いだな。


最近ゲレンデに行ってないな〜。年かしら?


(‾ロ‾)

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