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国際経験と英語力と【DX哀歌④】

これまで2回にわたって日本でDXって言われても難しいよねという話をしてきました。

その中で以下のようなことを書きました。

  1. スイスのビジネススクールIMDがまとめる「世界デジタル競争力ランキング」で2021年の日本の総合順位は64カ国・地域中28位であること

  2. 個別要素別の順位で言うと「企業の俊敏性」は64位であること。
    これについては「改革先行論」が闊歩していて意思決定が遅いことと、「デジタル・技術的スキルのなさ」によって迅速なトライアンドエラーができないことなども関連しているのではという話をしました。

3.またこのほかの個別要素として「デジタル・技術的スキル」が62位であることもお伝えしました。
順位は2016年あたりから急落していますが、パブリッククラウドへの抵抗国であること(ガートナー談)が関連しているのではという話をしました。

IMDのランキングの話・・・特にシリーズものにしようと思ったつもりはなかったのですが、現状分析は今日でいったん一区切りします(この先どうするかの話は、もう少しこの後の記事でも続けようかと思います)。

最終回の今日は、IMDがまとめる「世界デジタル競争力ランキング」の中で最後に残ったやばい順位のあれについて書こうかと思います。

1. 最下位の「国際経験」

日本がやばいランクだった最後の個別要素は「国際経験」です。

日本のランクは64か国中64位。つまり最下位でした。

国際経験の少なさの何が問題になるかというと、まず「日本は例外」「日本だけ特殊要件がある(のは仕方がない)」とかいう考えば跋扈しやすくなりそうです。

なにか身に覚えというか、頭が覚えていませんか?そういう会話をしたシーン?

あとは先進的なテクノロジーの吸収とかも、機会が減る分遅くなりそうです。

最近は、新しいナレッジやテクノロジーの鮮度は出た後急速に落ちるようになってきています。昔であれば情報が伝わる速度が遅かったので、何年も競争優位性を確保できたかもしれませんが、今はそうではない。

ということは、逆に「周回遅れ」にならないように、常にグローバルの動向に目を見張り、体で経験することが重要です。その意味でこの「国際経験」という評価項目は結構重要だと私は思います。

さて、これについては一体何を根拠にこのランク付けがされているのかの理由を探りました。

しかし、しかしです。

IMDのレポートの、少なくとも無料公開されている範囲には、残念ながら「International experience of senior managers is generally significant」の一文が確認できただけでした。また書いてないやん。

日本語に訳すと「上級管理職の国際的な経験は一般的に重要です」となります。

そ、そうですね。そのぐらいは知ってるよって感じです。

2. 「国際経験」を生み出す糧になるもの

国別の国際経験のランキングに際を生み出す糧になる要素ですが、小難しいことを考えなくても、それが「英語力」であることは想像できます。

というわけで、英語力のランキングとの相関を見るために、データを探してみます。

「英語力」「国際比較」で検索したところ、EF社のランキングが出てきました。

EF Education First(イー・エフ・エデュケーション・ファースト/以下EF)は、日本ではなじみが少ないかもしれませんが、1965年にスウェーデンで、バーティル・ハルト(Bertil Hult)によって創立された私立の語学学校で、語学学校としては世界最大級です。

EF社は、TOEICのような、EF SETという英語力認定テストを実施しており、その結果に基づく英語力の国際ランキングも公表しています。

ランキングには112か国分出ていますが、こちらのデータも前回同様G20の国に絞ってとってきています。それをIMDの「国際経験」のランクと合わせて散布図にしたものがこちらです。
(クリックして拡大して見てくださいね。特にスマホの方)

・・・さてどうでしょう?
縦軸がIMD国際経験のランキング。上に行くほど高いです。
横軸がEF ERI英語能力指数らのランキング。右に行くほど高いです。

読み取れることとしては・・・見たまんまですが、 「基本的に英語のランクと国際経験は比例する」ですかね。

EF EPIの英語能力ランクの高い国は、国際経験もランクが高い傾向があります。逆もまたしかりで、英語能力ランクが低い国は国際経験も低いといえます。

そして我が国日本は、G20の国々の中では「かなり英語に難を持っており、それがゆえに国際経験を積めていない」ということができるかもしれません。

皆さんの感覚と比べて、この結果いかがですか?

ただ、日本についてはもう少し考えなければならないポイントもあります。それを考えるために画面の左上に居る「メキシコ」と、逆に画面の右下に居る「南アフリカ共和国」にも注目してみましょう。

3. 「国際経験」を生み出す糧になる別の要素

これらの2か国は、この相関図で言うと「ハズレ」値になっています。

「メキシコ」は「EF EPIの英語能力指数」が日本並みですが、豊富な国際経験を持っているとIMDが評価しています。
一方「南アフリカ共和国」は公用語が英語であるにも関わらず、国際経験のランクは低位置とIMDに評価されています。

これらの事例から想像できることがあるとすると、国の場所、つまり地理的な要因ですね。これも国際経験にとって重要ということでしょうか?

USAという世界的な文化・経済の中心の隣国であるメキシコと、アフリカ大陸の最南端である南アフリカ共和国とでは、国際経験を積むために越えなければならないハードルが異なるということじゃないかと。

もしそうだとするならば、日本の地理的優位性はどうでしょうか?

残念ながら、これについては極めて悪いと言わざるを得ません。

USからもEUからも遠い極東の島国ですし、アジアにおいても強い経済圏を築けているかというと、そうでもない。

となると、マインドとしては内向き内向きにどうしてもなりがちです。

「ガラパゴス化」という言葉でもしばしば揶揄されるように、独自の商業文化・IT文化を持ってしまった国、それが我が国日本だということです。

4. 割と詰んでないか、この状況?

  • 英語力が不十分

  • 地理的にも経済圏・文化圏で孤立

  • デジタル・技術的レベルは低く

  • テクノロジー先進国から学んでキャッチアップしようにも英語がボトルネック

  • 意思決定においては「改革先行論」が広まり、企業の俊敏性にも劣る

  • (むしろこうした手詰まりの状況なので、一転集中突破するために「改革先行論」に頼っている?)

IMDの2021年の日本の総合順位は今のところ64カ国・地域中28位です。今のところは。

ただこれまであれこれ見てくる中で、ほっといても順位が上がっていく希望的観測はできないということは、割とはっきりしてきたんじゃないでしょうか?むしろこの先どんどん後退する予感ばかりが沸き上がってきます。

そしたらどうしたら?

これは難しいテーマですが、長くなりましたので、もう少し「やれることはないのか?」についてもこの先の記事で考えてみたいと思います。

希望を失わないでやっていると自然と知恵も出てくる。 精神が集中して、そこに色々な福音が生まれてくる。
松下幸之助

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