見出し画像

【エッセイ】冬瓜

さて、スーパーで今週の献立どうしようかと野菜コーナーをうろうろしていたら、すっきりとした白色の果肉と、薄い緑の皮に覆われた冬瓜が並べられた光景が目に飛び込んできた。これを見たらしばらく食卓の一品は決定だ。


冬の瓜(うり)と書いて冬瓜(とうがん)。
冬と着くので、冬の食べ物のように思うが夏が旬の食べ物だ。
冬まで保存が効く食べ物だったからこの名前がついたそうだ。

毎年夏にはこの冬瓜で煮物を作るのが恒例となっている。
母がよく冬瓜で煮物を仕込む。入れる具材は他にいんげんと卵。
よく親しんだ味で、タイミングが良いときに実家に帰ると食べることができる。

昔、毎年のように夏バテになり、夏になると食欲が落ちて食が進まないことが多かった。そんな夏にある日、お店に入って出たのがあったかい冬瓜だった。「こんな暑い日にこんな熱いものを」と思ったが食べるとこれがとても食べやすく、あっという間に器が空になった。
その時の冬瓜はしっかりと合わせだしで煮込まれ、とろみをつけた餡で絡めたもの。それ以来、夏バテ予防や栄養補給も兼ねて自分でも作るようになった。

2つ、作り方の例を出したが我が家の作り方も書いておく。
用意するものは他の夏野菜と一緒に煮込んでしまえということで、茄子も入れる。オクラも入れてもいい。出汁を取るために椎茸、鶏肉を用意する。そして何より我が家の冬瓜の煮物で必要なものがある。マロニーだ。
あとは薄口醤油、みりん、料理酒でいい塩梅に味付けをする。

作り方はまずは下ごしらえ。
冬瓜はワタの部分をスプーンでとり、緑の皮を取り除く。鶏肉は食べやすい大きさに切るか、あらかじめ切ってあるものを買う。茄子は輪切りや乱切りなど食べやすい大きさに切る。オクラを入れる場合はガクを取り除き、適当な大きさに切る。

本調理に入る。鍋に油を引いて、鶏肉を炒める。火はずっと中火。しっかり焼き色がついたら十分だ。次に茄子を入れてしんなりするまで炒めるが、これはなんとなくだ。そこに800mlの水を入れて、いよいよ冬瓜を入れる。一緒に椎茸も入れて、蓋をしぐつぐつするまで別の家事や調理をしながら待っておく。
無事沸いたら醤油、みりん、日本酒を大体大さじ2杯ずつ入れて味を整える。味見もしながら塩加減を見ておく。甘みが足りない場合はみりんではなく、砂糖で調整する。何故かそちらの方が味が深まり美味しくなるので、足りてても大さじ1杯ほどのお砂糖はおすすめ。オクラを入れる場合はこのタイミングで入れて、3分ほど煮る。オクラはすぐにぐずぐずになるので、あまり火は通さない方がいい。

最後にマロニーを入れて、しっかり水分を吸ったら出来上がりだ。冬瓜の煮物というより、冬瓜スープといったほうが正しいだろう。
作ったらお椀に入れてまずは少し食べてみてほしい。きっと体が休まるはずだ。

ただ、この冬瓜の煮物は冷まして鍋ごと一旦冷蔵庫で冷やして、次の日にまた温めて食べたら味が染みてより美味しい。これを少しずつ食べていくのが我が家の食べ方だ。しかし、家族も好きなメニューなので自分のペースで食べようと思ったらもうなくなっている時がある。

とろとろの冬瓜が鳥と椎茸の和風だしを吸って、体を癒してくれる。
我が家は生姜が嫌いな人がいるので、入れないが本当は生姜も入れたい。

8月もあと少し。
作った冬瓜の煮物をあてに、日本酒を冷やで少しだけ飲みながら、ゆっくり過ごした今年の夏。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?