経験、点と点を繋ぐもの【ウェルビーイング手帳】
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業生へ向けた有名なスピーチの中で、「点と点を繋ぐこと(connecting the dots)」の大切さについて述べています。ジョブズは人生でやりたい事を模索する中で、大学を止める決断をする。それで、卒業に必要な科目を履修する必要が無くなったから、純粋な興味でいくつかの大学の講義に潜る。その一つがカリグラフィー(文字を美しく見せる技術)の授業で、この経験が彼が後にマックを世に送り出す時、美しいフォントを搭載したパソコンの誕生へと繋がった。経験がもつ意味は、後で振り返ってみる形でしか分からない。だから、今・ここの経験は未来の何処かできっと実を結ぶはずだという信念を持って、自分の直観を信じて生きること。そうしたメッセージを若い世代に向けて送っている。
ジョブズが語った「点と点を繋ぐこと」は、創造という行為にとって不可欠な態度なのだろうけれど、思うに、それはこの態度が経験というものの本質に根差したものであるからなのだと思う。
僕等の経験は、その一つ一つが独特の価値を持っていて、それが一体何の役に立つのかといった機能の問題に収まるようなものではない。色や形、手触り、暖かさ。例えば、人工知能(AI)にそうした経験が欠けているような印象を私達が抱くのも、人工知能にとっては、現在の情報はその全てが明確な目的の為に処理されるからなのではないだろうか。たとえ明確な目的が無くても、過去が記憶となって膨らんでゆき、時間的に遠く隔たりのある経験同士が互いに影響を及ぼし合いながら、その意味が深まっていく。ジョブズが「点と点を繋ぐこと」と表現した、そうした創造的な過去との向き合い方を可能にしてくれているものこそ、僕等のこの不思議な経験であるのだろう
生きるとは創造的なこと。ジョブズの「点と点を繋ぐこと」というメッセージは、経験の本質に根差した、創造という行為にとって不可欠な態度であるのだと思う。
「繰り返すけど、将来を予め見据えて点と点を結びつける事は出来ない。可能であるのは、後からそれらを繋ぎ合わせることだけだ。だから、僕等は経験というものは未来の何処かで実を結ぶと信じる必要がある。宿命、運命、人生、カルマ、何であれ、僕等はその事を信じなくちゃならない。僕はこのやり方で一度も後悔したことはないし、僕の人生における前進の全部がそうした態度のおかげだと思っている」スティーブ・ジョブズ(2005)
もう少し詳しい哲学の話までブログ「幸福のヒント」の方では書いてます、よければお読みください。
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