有馬雄祐

建築分野の環境工学者。人が幸せに暮らせる環境について、室内から気候まで多様なスケールで…

有馬雄祐

建築分野の環境工学者。人が幸せに暮らせる環境について、室内から気候まで多様なスケールで研究しています。自分の人生につながる学問を続けていきたいです。

最近の記事

幸福にグランドセオリーはあるのか?

幸福(well-being)という概念に着目し始めて、3年目になる。「住まいの幸福」について、幸福概念を基に分析してみたりと、少しずつ成果も出始めてきた。研究上の幸福概念の理解と、現状の実証的事実のキャッチアップがようやく落ち着いてきて、最近、より根本的な問題である幸福の理論的な研究に興味が湧いてきた。 幸福度の理論には、セリグマンのウェルビーイング理論(PERMAモデル)のような記述的な理論と、セット・ポイント理論や比較理論のような少し抽象度の高い理論との、二つのタイプの

    • 経験、点と点を繋ぐもの【ウェルビーイング手帳】

      スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業生へ向けた有名なスピーチの中で、「点と点を繋ぐこと(connecting the dots)」の大切さについて述べています。ジョブズは人生でやりたい事を模索する中で、大学を止める決断をする。それで、卒業に必要な科目を履修する必要が無くなったから、純粋な興味でいくつかの大学の講義に潜る。その一つがカリグラフィー(文字を美しく見せる技術)の授業で、この経験が彼が後にマックを世に送り出す時、美しいフォントを搭載したパソコンの誕生へと繋が

      • 深夜の魅力-暗さと創造性【ウェルビーイング手帳】

         生活リズムは規則正しいに越したことはないけど、深夜に本を読んだり、考え事をする時間には何とも言えない魅力がある。そうした夜の魅力の理由の一つは、おそらく体内のリズムに由来します。身体には「サーカディアン・リズム(概日リズム)」と呼ばれる24時間周期のリズムがありますが、夜が深まるにつれて、覚醒を促すホルモンが抑制されて、リラックス効果のあるメラトニンの分泌量が増えていく。夜に落ち着いた気分で過ごしやすいのは、体内のリズムのおかげでもあるわけです。  サーカディアン・リズム

        • 人生の意味とフローの話【ウェルビーイング手帳】

          人生の意味とフローについての話。私達の幸福にとって重要な経験の一つにフロー(flow)があります。フローとは、目の前の課題や活動に高い強度で没頭している際の経験です。芸術家の創作活動時や、アスリートが高いパフォーマンスを発揮している際の経験を調査したところ、時間的経過の感覚が歪み、なめらかに事が流れるような感覚があるとの報告が数多くなされた事から、心理学者チクセントミハイがそうした心理状態をフローと名付けました。絵を描いたりゲームをしたりといった自分が好きな事をしている時、或

        幸福にグランドセオリーはあるのか?

          世界の幸福度の話【ウェルビーイング手帳】

           世界の幸福度についてのお話です。私達の幸福は一体何によって左右されているのでしょうか?良くも悪くも、お金(所得)はやはり重要な要素である事が明らかにされています。次の図は、各国の幸福度の平均値を縦軸、所得の平均値を横軸にプロットしたものです。幸福度とは、「あなたは自分の人生にどれくらい満足していますか?」といった問いで測定される値です(ここでは、0点~10点)。金銭的に豊かな国ほど(グラフで右側へ向かうほど)、幸福度が高くなる傾向がある事が確認できる。お金は幸福度を決める主

          世界の幸福度の話【ウェルビーイング手帳】

          noteはじめました【ウェルビーイング手帳】

          はじめまして、有馬といいます。環境工学という分野の学者で、人と人を取り巻く環境との関係性について建築分野で研究しています。 学術の世界はたくさんの面白い知見で溢れていますが、案外、世の中で知られていないものも多いです。普段、勉強していて面白いなと思ったことについて書いていくつもりです。 単に知識として知るだけではなくて、学んだ事から考えて、自分の人生で一つ一つ活かしていくような、そうした学問との付き合い方をしていたいなと思っています。 このnoteは「ウェルビーイング手

          noteはじめました【ウェルビーイング手帳】