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Johns Hopkins MSPH留学中にとった授業一覧【振り返りその3】

留学中の過ごし方を書いた振り返りその1その2を書いてからしばらく空いてしまいましたが…座学方面で、留学して何を学べたのかの大まかなまとめになるように私が2年間で受けた授業の一覧を記録します。
これから留学を希望されている方に具体的なカリキュラムイメージを届けられると嬉しいです!最後におまけで、授業の観点で私がHopkinsのプログラムをどう感じたかのreflectionを載せました。


カリキュラム

私が所属していたDepartment of International HealthのMSPHを含め、多くのプログラムがカリキュラムの全貌を記載したHandbookを公開しています。
ざっくり書くと、1年目は授業をたくさんとって自分の興味を見極め、2年目は授業でも実務インターンでも修論につながることであれば好きなようにしなさい、というのがMSPHの方針です。
HopkinsのSPH全体でterm制が取られており、2ヶ月ずつ4 term/年の区切りがあり、確かいちtermの単位数上限は22までだったはず!

私は2年間通して31授業+修論とプラクティカムを履修しました (+ auditを5つくらい)。以下では 1)特にお気に入り授業 2)その他の私のプログラムで必修だった授業 3)その他選択授業 という順番で31授業の一覧を紹介します。

特に最高だった授業6選

221.645.01 Large-Scale Effectiveness Evaluations of Health Programs
(選択必修)現地政府を巻き込んで行うような評価実証の手法に焦点をあて、プランニングから実務での困難までを学ぶ。最終課題は与えられたケースに対して評価研究のプロポーザルを執筆。

140.664.01 Causal Inference in Medicine and Public Health I
(必修ではない)疫学の因果推論の手法をコンセプトから最新課題まで学ぶ。小手先のテクニックだけでなく、何を目指しているのかにから始めるスタイルが一貫していて非常に深い学びになる。分野間でのバトルが多い因果推論だが、その垣根を超えて世界の発展を目指す講師の伝え方から学ぶことがとても多い。

221.652.01 Financing Health Systems for Universal Health Coverage
(必修ではない)UHCのコンセプトからデータ分析まで幅広く学ぶ。インド出身の講師はアメリカの大学院では珍しいくらい、言葉数が少ないタイプだ。が、クリティカルなメッセージを出すのに言葉の量は関係ないのだと教えてくれる。一言一句が鋭い。

140.655.01 Analysis of Multilevel and Longitudinal Data
(必修ではない)タイトルの通り発展レベルのBiostatsの授業。数学的に難しいことをわかりやすく噛み砕く講師の技量が凄まじい。でも授業・課題の中身に容赦はなく、Biostats PhDの生徒と切磋琢磨して学べるコース。

224.690.01 Qualitative Research Theory and Methods
(選択必修)質的分析にあまり興味がなかった私が講師陣の哲学に圧倒されたコース。さまざまな角度の研究が必要な理由が腹落ちしたという意味で、素晴らしい経験だった。心のどこかで質的研究を少し「見下し」てしまっている量的分析の専門家全員に受けてほしいコース。

410.638 & 639 Developing a Manuscript for Publication
(必修ではない)このレベルのintensiveなwiritingトレーニングを修士生にも受けさせてくれるんですか?!という感動の少人数コース。学生からポスドク、若手facultyが集まって全員が4ヶ月で一つのmanuscriptを書き、毎週のフィードバックで良いpaperの構成とlanguageを掴んでいく。最後は、カバーレターやsubmission時の実際のフォームまで見せてくれる手厚さ。(なぜかコースの知名度がなく、なくなってしまうかもしれないらしい。解せない。)

他の必須授業

140.621.81 Statistical Methods in Public Health I
140.622.01 Statistical Methods in Public Health II
140.623.01 Statistical Methods in Public Health III
(
140.624.01 Statistical Methods in Public Health IV)
Biostatsのシリーズ授業(4は必修ではない)。3つあるレベルのうち、中間に当たる難易度でBiostats専攻のPhD/MHSを除いたボリュームゾーンの学生が受講する500人規模のマンモス授業。演習が多く、学生はStataとRを選べる。

340.721.81 Epidemiologic Inference in Public Health I
(
340.722.01 Epidemiologic Inference in Public Health II)
疫学の入門授業(2は必修ではない)。measurementやstudy designについて幅広く学ぶ。実際の論文を扱った演習が多い。

220.601.01 Foundations of International Health
歴史や基本的なセオリーを学ぶ。答えのない問題に対してディベート課題があったり課題の種類が多様。

221.602.02 Applications in Managing Health Organizations in Low and Middle Income Countries
多様なチームをまとめるグローバルヘルス実務においてのマネジメントやリーダーシップスキルを学ぶ。ボードゲームをしたり楽しい。

221.801.01 Health Systems Program Seminar I
221.802.01 Health Systems Graduate Seminar 2
221.803.01 Health Systems Graduate Seminar 3
221.804.01 Health Systems Graduate Seminar 4
一年目を通してコホートで共有する基盤コミュニティのような1クレジットセミナー。departmentの先生が順番に自分がやっていることを紹介してくれたり、ネットワーキングに役立つ。

220.600.81 International Travel Preparation, Safety, & Wellness
実際にフィールドに出るときに気をつけることやどれくらいのストレス耐性を持っていくべきなのかなどを先生の経験から紹介する。割と過酷な例も出され、この授業をきっかけにフィールド研究者になることを辞める生徒もいる(行ってからクラッシュするより良いことだと思っている。)

221.646.01 Health Systems in Low and Middle income Countries
グローバルヘルスのコンテクストでのシステム分析の基礎をプログラムダイレクターが教える授業。アメリカのSPHのシステム分析は先進国の文脈であることが非常に多く、この授業があること自体珍しい。

221.650.01 Health Policy Analysis in Low and Middle income Countries
国際関係論や政治学よりバックグラウンドの講師が、政策分析について教える授業。いわゆる実証分析系ではなく、poliecoの分析など政治学よりのアプローチ。

221.620.01 Applying Summary Measures of Population Health to Improve Health Systems
Global Burden of Diseaseとかハイレベル指標の扱い方を学ぶ。

221.661.01 Project Development for Primary Health Care in Developing Countries
介入デザインを現場と一緒に行うような研究を想定して、作り方から予算編成までを、grant proposalの形式で学ぶ。

他の必修以外の授業

223.664.01 Design and Conduct of Community Trials
グローバルヘルスの文脈でのcluster-RCTについて実務から分析まで学ぶ。実際に講師が使っていたクオリティコントロールが紹介されて泥臭さからテクニカルな部分までカバーしてくれる。最終課題はfull proposalを書く。

223.866.01 Special Topics in Program Evaluation in International Health
evaluationのcertificateをとる人のための必須の1クレジットセミナー。多様な実例を紹介する。

223.632.01 Methods for Planning and Implementing Evaluations of Large-Scale Health Programs in Low and Middle income Countries
221.645とシリーズになるmethod授業。stats的な深さはないが、グローバルヘルスでよく使われるデータベースや、mortality estimationなど基礎統計がない国で必要になってくる実務をカバーする。またQoCの測定手法についても扱った。

224.691.81 Qualitative Data Analysis
224.690とのシリーズとなる実践授業。実際にscriptを渡されて、分析し、まとめるところまでを一通りカバーする。コードブックの作り方などやってみてわかることが多く、面白い。

313.601.01 Economic Evaluation I
費用対効果分析についての3シリーズの1つ目。コンセプトやセオリーを学ぶ。

340.696.81 Spatial Analysis I: ArcGIS
空間分析シリーズの1つ目。実用的な課題を通して一旦ソフトウェアを十分に扱えるレベルを目指すコース。

223.621.01 Design and Implementation of Global Digital Health Interventions
デジタルヘルスの入門コース。オムニバス形式に近く、ガイドラインや最新論文などのkey materialをカバーしていく。

221.637.81 Health Information Systems
データ分析の基礎になっているHISを理解するために必要な知識をカバーする。

まとめと振り返り: Hopkinsの特徴とは何か

最高に上げたかどうかは私にとってのフィットの問題で、(ほとんど)すべての授業が非常に熱のこもった素晴らしいものでした。以下では、特に UNC-CHでの第一学期も迎え、アメリカのSPH内での他の視点を得た私が個人的に感じる授業選択面でのHopkinsの特徴を振り返ります。

異常に多い選択肢

現在のコースカタログには2447(!!)の授業が挙げられており、SPHだけでこの量ははっきり行って他のトップスクールに比べても異常です。これに呼応して、カリキュラムも交渉の余地があるプログラムが多く、自分の好きなものだけをとって過ごせる可能性が他のSPHよりも高いと思います。理由は、そもそもの学校としての強みの幅広さに加えて、若手のfacultyが授業を気軽にやっていることがあると感じました。また、履修要件(〜を前の年に履修していないとだめetc)がゆるゆるで、修士生もPhD生と肩を並べて発展授業まで履修してしまうことができるのも特徴です。これは、背伸びをしたかった私にとって非常に恵まれた状況でした。
一方でこの背景は、授業の質も履修する学生の質も「玉石混合」の状況を作り出します。よって、グループワークの困難さは運ゲーですし、自分は本当にその授業に時間を使うべきなのかをよく見極める必要性が高いです。
私はこの玉石混合感をはじめに目の当たりにしてから、シラバスだけを読んで履修計画を練ることを諦めました笑 
代わりに、各学期のAdd/Dropの期間を利用して、実際に履修する授業の倍以上のクラスの初回に出てみて、講師とのフィットを見極め、気に入ったものを最終的に履修していった感じです。

Department of International Healthが独立している

他の学部にembedされることが多いIH/Global Healthが独立して一大勢力になっていることはとても珍しい、Hopkinsの特徴です。これによって、授業も実務と手法を組み合わせた類の分野の選択肢が非常に多く、魅力的です。
一方で、これがあることによって生徒の「プロジェクトやりたい欲」がグループワーク課題で代替して満たされてしまうので、授業から学ぶべきことと授業外のプロジェクトから学ぶ方が良いことを分けて考える意識が他校よりも重要かもしれません。

ターム制

2ヶ月ターム制は、4ヶ月セメスター制に比較して良さも悪さもあります。私が考える一番の良さは、学びの計画に途中での方向修正が効くことです。やっていくうちに学びたいことや取りたい授業が変わることは特に修士ではよくある気がしますが、それに合わせる小回りがききます。
一方で、キツさも多くあります。セメスター制に比べて課題や試験の間隔の忙しなさは随分と違い、メンタル的にバーンアウトしない耐性が重要です。また、講師陣も深いところまで2ヶ月で到達するのは難しいためにどうしても分野縦割りの「とにかくやってみろ」感のある課題が増えます。クイズのような表面的な演習ではなく、本当に深い部分での学びができているのかを自省する強さが求められ、重要なコンセプトが飛ばされていると感じたらオフィスアワーに出向いて講師と議論したり、自分で補う積極性が他校よりも重要だと感じます。


どの学校にも特徴があり、それらをうまく掴みながら、自動的に受けられる恩恵と、工夫して取りに行く学びを分けて考えられることは、期間の短い修士留学にとってとても大事なことだと感じています。
これからHopkinsに来る方に、私のリフレクションが役に立てば嬉しいです。


これにて三部作になった私のMSPH留学振り返りはおしまいです。
その後、UNC Chapel HillのPhD課程に進学し、メキメキと修行を続けていますので、また新しい場所での挑戦の記録も書けたらいいなと思っています!

Public Healthはいいぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

おしまい。


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