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娘にチュウされて喜んでいる場合ではない

2020年4月18日(土)

【Day 30】

「おとう〜、でんわかしてよ〜」

今日も三女がすり寄って来る。YouTubeでマリオパーティーのゲーム実況でも見たいのだろう。

平日は僕もアッコも仕事に集中しているため、ぐずるとどうしてもハイハイと電話を手渡してしまうのだが、今日は頑なに拒んでやる。

「ダメ!」

「チュウするから〜」

「……」

三女はもう僕にチュウしなくなって久しい。そのクセ、アッコとはチュウしまくりで、なおかつチュウしながらこちらを横目で見て挑発してくるイヤなヤツである。

しかも、いつも僕が仕事をしていると顔の横に唇を「ムーン」と突き出してきて、僕がチュウしようとすると咄嗟に逃げるスリルを日々楽しんでいる。そんな三女が、電話を借りるために本当にチュウするなどありえないだろう。僕はあまり期待せずに応答した。

「いいよ、チュウしたらね」

すると意外なことに、三女は、ててて、と僕のそばに駆け寄ってくると、僕の唇を両手で潰すようにつまみ、そして、本当にチュウをした。

久しぶりすぎる三女のチュウ。水まんじゅうのようなホッペの触り心地とあいまって、なんとも言えない感触だ……

僕は夢見心地となっていた。

でも、約束しちゃったから電話を貸さなきゃいけないじゃないか……そんなことで娘の望みを叶えるのはイケないことだ…ああ、でも、このままずっとこの感触を楽しんでいたい……三女相手に我ながらキモすぎると思うが、気持ちいいものは仕方がない……全国の小さな娘さんを持つお父さんはきっとこの気持ちをわかってくれるハズだ……

僕の胸中を駆け巡る葛藤はほんの一瞬だったろう。三女は「これで文句ないでしょ」と言わんばかりに僕の手からiPhoneを奪い去って行った。

うむ、三女にとってこの成功体験は将来にいい影響を与えないことは間違いないから、今度からは頑なに拒否しなくてはいかんな。それに、YouTubeばっかり見ていてあまりにも運動不足すぎるのも良くない。

と、いうことで、午後からは家族みんなで散歩がてら、引っ越し先となるキャメライ周辺を散策することにした。

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↑引っ越し先のタウンハウス。

キャメライはクロウズネストに隣接する小さな町だ。

外出禁止期間中だが、ハイキングなど体を動かすことは推奨されているため、街中のなかなか美味しそうなカフェでは、そういった“運動目的”の人々がテイクアウトの(ディスタンスを保った)列を作っている。

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Maggio's Cafe

コーヒーもリーズナブルで美味しく、このカフェが徒歩圏内となると思うと、ワクワクしてくるのである。

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キャメライにはハーバーがあり、多くのローカルが自家用の小型船舶を牽引してそこへ集まってくる。皆思い思いにクルーズに出たり、釣りをしたり、優雅な土曜日を過ごしている。

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ハーバーで結婚式を挙げる熟年カップルまでいる。参列者は5人以内に抑えられているためまばらだが、フラワーシャワーが始まると、そこにいる人々が遠巻きに拍手を贈ったりしてピースフルな雰囲気を醸し出している。

もう1ヶ月以上波乗りをしていないが、久しぶりのの潮風に当たって心が洗われる気分である。

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海辺にはだだっ広い公園もあり、ドッグオーナーが集まっている。そしてやっぱりそこにはラグビーコートがある。

運動不足の僕たち一家も、ここらでちょいとエクササイズを、ということで、どういうわけかハンカチ落としをやることにした。と、言ってもハンカチを持っていなかったので、三女が散歩に連れてきた犬のぬいぐるみをハンカチがわりにする。

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そんなものぽいぽい地面に投げていたら、周りで自由に駆け回っている大型犬が反応して突っ込んできそうな気もするが……

と思っていたら、案の定……

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突っ込んできた犬は、どうやらぬいぐるみではなく、アッコのバッグに入っている「ジャッツ(リッツと同じ味の定番クラッカー)」に興味津々なようである。

すると、この犬のオーナーが遠方から自分の犬を嗜める声がした。

「ヘイ、ジャッツィー!ノー!」

その名前、どうりで……

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