episode3.10円太郎。芽生え。🌱
すぐそこに春の足音が聞こえ始めた季節。
わたしの頭にも春が芽吹き始めていた。
毎朝毎晩、真緑の育毛剤を10円太郎(10円ハゲ)に塗りつける日々。
まさか20代にして育毛剤を使う日がくるなんて、と思いながらも、日々ちょっとずつ伸びていく髪の毛と、窓際で大事に育てているモンステラの成長を重ね合わせていた。
もうすぐ春かぁ。
いつもは道端に咲く花や、色づく木々を見て春の訪れを感じていたが、今年は一味違う。
まさか自分の頭から春が芽生えるとは。
(まぁこれも新感覚でいい経験、笑)
しかし、わたしの頭のてっぺんの春の芽吹きは、ただほっこりと眺めている訳にはいかなかった。
この小さな芽吹きが、大きな苦労を引き起こしていた。
芽吹いたばかりの植物はなんとも尊くて、今にも萎れてしまうんじゃないかというような儚さも感じる。
が、10円太郎の芽吹きはなんたって力強い。
ちょっとやそっと手で倒そうが、ものすごい反動で起き上がってくる。
なんて生命力だ。
10円太郎の存在について、もちろん職場では公表していなかったので、急な春の芽吹きはなんとしても隠さなければならなかった。
ワックスやケープでなんとか押さえつけて気付かれないようにそーっとそーっと、、、
だがしかし、昼頃になると10円太郎がまた本気を出してくる。
トイレで鏡を見るたびにドキッとしてワックスで応戦。
(頼む。職場でだけは大人しくしておいてくれ。)
そんなわたしの気持ちとは裏腹に10円太郎は日に日に力強さが増し、同時にわたしの苦労も増していった。
色とりどりの花が咲き誇る春。
いとのびのびと髪が生えそろうaya。
今年の春は特別だ。
to be continued.