【読書記録】ゴキブリ・マイウェイ―この生物に秘められし謎を追う―
日経新聞か何かで「クチキゴキブリ」という名前のゴキブリについて研究している,大崎遥花さんの記事を読んだことがある.
クチキゴキブリは家に出てくるゴキブリとは違い,森林の朽木の中でひっそりと慎ましく暮らしている.大崎遥花さんは,このクチキゴキブリが配偶時に互いの羽を食い合うという行動について初めて報告した研究者であり,今なおクチキゴキブリについて研究している,世界で唯一の人物である.
今回はその大崎さんが書かれた「ゴキブリ・マイウェイ―この生物に秘められし謎を追う―」を読んだので,その記録を残す.
特に院生におすすめ
この本を読み終わって真っ先に思ったことは「大学生,特に大学院生に刺さる本だろうな……」ということである.というか,読みながらひしひしとそれを感じていた.自分にも様々な言葉や思考がずがーーんと刺さった.
大崎さんは自身が研究しているクチキゴキブリの話だけではなく,研究の工夫や悲喜こもごも,研究をボイコットしてしまったこと,研究テーマを決めるまでの詳細などを赤裸々に本書で語っている.
タイトル通り,「ゴキブリ研究を続ける私の人生―クチキゴキブリの研究エッセイ」という所感であった.クチキゴキブリの研究の話なので,もちろんクチキゴキブリが中心ではあるが,体感3:7でクチキゴキブリの話:大崎さんの研究者としての体験談という形だった.
そのため,全く分野の違う研究者へも広くお勧めできる本だと思った.
例えば,こんな一節があった.
わ,わかるーーーー!!!!
全てがこの通りではないが,修士の段階でも当てはまるものが多く羅列されている.これに私の場合は飲み会の予約とか,(今は)オープンキャンパスとか,後輩の指導とかも追加される.
「修士課程に進学しました!」と親戚に報告しても,すごく渋い反応をもらったことを思わず思い出した.
修士ですらこれだ.周りからは同じく「逃げ」と思われているような節がある.実際修士課程に進学してから,休日も研究室に通っているし,平日も午前中から夜遅くまで残っている日なんてざらにある.遊んでいる暇なんてないのだ.
そんな私にエールをくれるようなこの言葉が,まっすぐ届いた.
……とこんな感じで,特に院生にとって共感できるような部分が多かった.そして「自分も頑張ろう」とエールをもらった.
時々,大崎さんがとても優秀過ぎてダメージをもらったところもあったけど(笑).
それでも,本書を読んだ後には「よし,やるぞ!!」と気合が充電された.
全ての文が俗にいう若者言葉であり,とても心に寄り添ってくる文章となっていた.大崎さんの独特の表現も面白く,さっさと読み終わってしまった.
まとめとしては,研究者としての生活や研究のプロセスに興味がある方,そして同じく院生として研究に励んでいる方にお勧めしたい本である.
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