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「言えない」と「言わない」の違い


相手に言いたいことがあっても、言うとその場の雰囲気を壊すとか、自分が我慢すれば丸く収まるという理由で、言えないコミュニケーションを「ノンアサーティブ」と紹介しました。ノンアサーティブのコミュニケーションの特徴は言いたくても「言えない」です。

一方で、「言わない」というのはアサーションなのです。「言えない」と「言わない」は、自分の考えを相手に伝えないという行動面は同じなのですが、コミュニケーションのスタイルとしては、まったく違います。では、その違いを二つのポイントで解説いたします。

一つ目の違いは、自分の意志と合っているかどうかです。ノンアサーティブの場合は自分の意志としては「言いたい」気持ちがありますが、実際の行動としては、「言わない(言えない)」という結果になっています。意志と行動がねじれています。「言わない」というアサーションは、「このことは言わないことにした」という意志と行動が合っているのです。

二つ目の違いは、気持ちの面です。ノンアサーティブの「言えない」状況は非常にモヤモヤしたものが残ります。あとあと「あのとき言えばよかった」とか「あのとき言わなかったから、もっと悪いことになった」など後悔したり、「あの人苦手だな」と相手に対して否定的になったりします。アサーティブの「言わない」の場合は、モヤモヤした気持ちはありません。言わなくてよかったんだという肯定感があるので後悔もないのです。

実際に後悔したくないから伝えたらかえって関係がこじれたり、「言わない」と決めていてもあとから「やっぱり・・・」なんて思って考え直したりすることもあります。また、コミュニケーションは結果論で、相手の反応次第でうまくいったかどうかが決まるんじゃないかと思われるかもしれません。しかし、これはアサーションの経験がない場合の一つの思考パターンだと言えます。特にノンアサーティブの人のコミュニケーションをとりがちの人はこのように考えてしまいます。

なぜノンアサーティブの人が言いたくても言えないのかというと、相手の反応を過剰にネガティブにとってしまうからなのです。この思考が強い人がアサーションを学んでも「でもさ~結局はさ~」ということで、伝えるという行動をしないのです。本当に変えるべきところは相手の反応をネガティブに妄想する思考パターンなのです。

アサーションを学んで、言葉を考え抜いて相手に伝えた経験を一度でもすると、相手のあっけない反応に驚くことでしょう。こちらが思っているほどネガティブな反応が返ってくることは少ないのです。(当然、責めるような言い方ではネガティブな反応が返ってきますが)

思考、感情、行動は連動しています。思考を変えれば感情は変わり、感情を変えれば行動が変わりますが、実はこの順番は、どこから変えても変わるのです。認知行動療法の世界では、認知(思考)へのアプローチを中心としますが、実は行動を変えることで、思考や感情の変化を味わうこともできるのです。

アサーションも行動面の変容から思考や感情を変えることにつなげられます。もちろん、無理なく、良いタイミングで伝えられるのが一番です。「言いたくても言えない」でも、「言いたい」場合は時を待ちましょう。言葉を選びましょう。場合によっては伝え方を一緒に考えてもらうのも良いですし、人によっては練習したりする場合もあります。「言いたいことを言ってもいいい」という経験をたくさんすることで、アサーションの成功体験を積むこともできます。あり会でもその成功体験をつんでいただければと思います。ぜひご活用ください。


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