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【読書メモ・感想】前田裕二『メモの魔力 -The Magic of Memos-』

 この「抽象化」こそが僕のメモ術の根幹です。もっと言うと、人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器であると、確信を持って断言できます。

 今さらも今さらであるが、Kindle Unlimitedで積ん読されていた前田裕二さんの『メモの魔力』を読んだ。2019年、大ベストセラーとなった本書。本屋でもSNSでもいたるところで見かけた気がする。

 流行っていたものの、なんとなく食指が動かず、手を出していなかったのだが、あるときNews Picks特集でKindle Unlimited対象になった。ラッキー!とダウンロードしたもののやっぱりなんとなく後回しにしていた。

 今月いっぱいでKindle Unlimitedを解約しようと思っているので、解約前にせっかくだし2019年を代表するビジネス書を読んでおこうと手を取ったわけだ。

本の概要

 起業家、前田裕二さんによるメモ術の本。内容は前田さんが活用しているメモ術のフレームワーク、すなわち「ファクト」→「抽象化」→「転用」の紹介から入り、その肝となる抽象化を掘り下げる。

 後半は自分自身の人生の確固たる軸を探すことの大切さを説き、上記のフレームワークをベースに人生の軸「人生の勝算」を見つけるための手ほどきをしてくれる。

 『メモの魔力』があまりにも人気なため、本書に関するレビュー記事に触れる機会も多かった。なので読む前から「ファクト」→「抽象化」→「転用」のフレームワークがどういったものかわかっていたため、そこまで新しい発見はなかったが、本書、というか前田裕二さんのスゴいところはその徹底された自己分析力なんだと感じた。

 ここまで「自分のことをわかりきってる」とハッキリ断言できる人はそうそういないだろう。自分が何が好きで、何がきらいで、どういうものにバリューに感じるのか?前田さんはすべてに具体的かつ明確に即答できるくらい、自身を分析しきっているという。 

 なるほど。確かにこれくらいまで自己分析ができているのであれば、あとはその求める価値に向かって邁進すればよいだけなのだから、かなりアクションとしてはシンプルだ。もちろんシンプルなだけで、簡単ではないが。

著者の紹介

 著者は「いま最も注目される実業家」とさえれるSHOWROOMの代表取締役でもある前田裕二さん。

 幼い頃に両親を亡くし、路上でギターの弾き語りをしてお金を稼いだという壮絶な人生を経験しており、その苦難をバネにして今を頑張る彼自身のファンも多い。(ように見える)ちなみに男のわたしからみても、納得するレベルで爽やかなイケメン。

 実際にお会いしたことはないから実際の内面はわからないが、SNSの振る舞いとかみてても周囲の人間を大切にしようとしている感が伝わる。なんていうか、嫌味なくずっとキラキラしていて好感が持てる。

 個人的には、実はめっちゃクズだったというエピソードがあれば、さらに好きになれそうなのだが、今のところそういう話は聞かない(笑)苦労している分、人としてデキた人なんだろう。

本書を一言でまとめると

 やりたいことが見つからないのであれば、自己分析しまくれ!
 わたしに刺さったのはメモ術の部分より自己分析のところ。メモ術はあくまでツールに過ぎない。

読書メモ

 以下は引用を交えつつ、気になった箇所をメモ。

メモ術のエッセンスは「ファクト」→「抽象化」→「転用」

 僕のメモ術のエッセンスは、シンプルに3点です。 ①インプットした「ファクト」をもとに、 ②気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、 ③自らのアクションに「転用」する。 この三つに尽きます。

 このフレームワーク、言葉は違えど多くの知的生産術に長けた著名人が同じことを言っている。

 たとえば、わたしが尊敬してやまない山口周氏はインプットした情報を「抽象化・構造化」し、そこから得た洞察・仮説を自身のビジネスに活用(転用)することが重要だと言っている。

 また、博識で有名な出口治明氏が重要視する「数字、ファクト、ロジック」もファクトの後ろで走ってるロジックを知ることで、他にも転用できるという点では同じである。

 結局、ツールはどうであれ成功している人間はこの思考プロセスを積み重ねてきているというとがよくわかる。前田さんの場合は、ツールとしてメモを活用しているというわけだ。

 ちなみに本書を読んだ方には山口周氏の『知的戦闘力を高める 独学の技法』を強くオススメしたい。『メモの魔力』で得たメモという武器をつかってどんなインプットをするべきか?この問いの解となる本で、相性が良い。

抽象化のポイントは「How型」「Why型」

 総じて目にしたものや、自分の身に起こったこと、世の中の様々な出来事を、なるべく多く、深く、抽象化しておくことです。何か特徴が気になるものがあれば、その特徴を記しておくべきですし(How型)、何かヒットしたコンテンツがあれば「なぜそれが流行ったのか?」という疑問を深掘りして、その中で最も重要なエッセンスを抽出しておきましょう(Why型)

 本書では抽象化の型として「What型」、「How型」、「Why型」の3つを紹介している。なにかおもしろいファクトがあれば「何がおもしろいのか?(What型)」、「どうおもしろいのか?(How型)」、「なぜおもしろいのか?(Why型)」を深堀りすることで、自ずと抽象化できる。

 「What型」は言語化する意味で当然重要であるが、転用を考えると「How型」「Why型」が大切だと著者は主張している。

シンプルにすることは難しい

 抽象化についてより深く考察する上で、細谷功さんの『具体と抽象』という名著が非常に勉強になるでしょう。この本の中でも挙げられていますが、パスカルという、「人間は考える葦である」という名言を残したことで有名な哲学者が、友人に送る手紙の最後にこう書いたというエピソードがあります。「今日は時間がなくて、手紙が長くなってしまいました」。つまり、時間がなくて十分な抽象化ができなかったから、手紙が回りくどく、本質から遠ざかり、長くなってしまった、というのです。

 このパスカルのエピソードは、この本を読む前からホリエモンと前田さんの対談動画でも話しており、結構印象に残っていた。ホリエモンの本にも近い主張はよく出てくるのでもしかしたら編集者の箕輪さんの考えなのかな?(笑)

モチベーションには「トップダウン型」と「ボトムアップ型」の2種類がある

 「ボトムアップ型」のアプローチは、端的にいうと、「自分がワクワクする度合い」で重要度を決める人です。こういった人は、自分が一番血湧き肉躍る、ワクワクすることを選べばいい。 要は、目標、ゴールをきちっと決めて、そこから逆算して日々の行動を決めていくのが「トップダウン型」、目の前の面白そうなことに飛びつくことで日々の行動が決まっていくのが「ボトムアップ型」です。  

 自分は実は「ボトムアップ型」かも?と思えたのは、この本を読んで得られた新しい気付きだった。なんとなく成功している人って夢や目標に向かって逆算的に最先端のルートで進んでいる「トップダウン型」の人のイメージが強かったけど、そうじゃなくてもいいのかもって思えた。

 自己分析をしていく中で、自分がどちらのタイプなのかが、だんだんとわかってくるはずです。本当はトップダウン型の人が、日々を行き当たりばったりで生きてしまうと、充実感を得ることができません。逆にボトムアップ型の人が、ゴールから逆算して生きようとすると、窮屈さを感じてしまうでしょう。まずは自分がどちらのタイプなのか。どちらの生き方に喜びを感じるのかを把握しておくことが大切です。

 最近の自分はまさにこれで、なりたい自分を目指そうとするとなんとなく息苦しい。それよりもその場その場で興味があること、楽しいことをに手を出してたったほうが向いてる気がしてきた。

 でも、飽きっぽくて何ひとつとして極められておらず、それはそれでコンプレックスなんだけど。

「人生の勝算」とは

 あなたは今、何をしているときが一番楽しいですか?あなたは今、何を目標に生きていますか?このように、人生のモチベーションの根幹に関わることを質問されたとき、パッと即答できる状態のことを、2017年に出した拙著タイトルにかけて、「人生の勝算がある」、と僕は表現しています。  
 例えば 10 分の時間を与えられたときに、TwitterやInstagramなどのSNSを見るのか。友達に電話をかけるのか。本を読むのか。PCを開くのか。ぼーっとするのか。この意思決定の向きは、本来、自身の価値観の軸、つまり人生のコンパスによって指し示されるべきだと思っています。 人生は「時間をどう使ったか」の結果でしかありません。ならば「時間をどう使うのか」というところで、自分の人生の勝算につながる選択をすべきです。

 「人生の勝算」これを見つけられてないわたしとしては、後半は結構読むの辛かった。別に前田さんは「人生の勝算」を見つけられてないことが悪いとは言っておらず、見つけるために一度目いっぱい自己分析に取り組んでみることをオススメしている。それでも見つからなかったら、今はその自分を素直に受け止めればいいと。

感想

 前述したが、メモのノウハウよりも自己分析に関する話のほうがタメになった。自分がいかに人生の軸をハッキリさせてないかを突きつけられた感じがして、若干読んでて気まずかった。

 本書には付録して自己分析のための1,000問が付いている。ベストセラーになった、すなわちこの本を買った人はいっぱいいるわけだが、この1,000問をやりきった人ってどれくらいいるんだろうか。正直わたしは体力ない。この本を読んで「自分の軸がないと」焦ったとしても、結局行動しない自分は簡単には変われないんだろうなぁと若干凹むのである。

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