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シリーズ切り替え時の表紙カラーラフから仕上げまでの流れ
以前はお知らせや裏話のようなものをTwitter(現・X)のモーメントにまとめていたのですが、現在は編集も更新もできないので改めてnoteに投稿、以降はnoteの方でpostをまとめていこうと思います。
5巻(天怪篇その壱)表紙カラー ラフから仕上げまでの流れ
#皆さんラフと完成絵を見せてください
— ありがひとし🌇🦖 (@ariga_megamix) October 29, 2019
新刊作業中にフォルダ整理してたら5巻(天怪篇壱)のが出てきました
複数のパターン出しをして、そっから打ち合わせ
私は展開に合わせて変えていきたいのですが、シリーズであることが分かりにくいとの事で最終的にはそれまでの既刊と同じフォーマットの表紙に pic.twitter.com/5Df04VDnuI
5巻は新シリーズがスタートする巻です。
参考までに1~4巻の表紙を並べます。
![](https://assets.st-note.com/img/1697357103214-jFTumlM2JU.jpg?width=800)
その巻のメイン要素+コン七、ワ助という構成になっています
それまでの「妖怪お江戸篇」は単巻でストーリーが完結していましたが、5巻はこれまでの「ようかいとりものちょう」とは違う続き物シリーズ、新しい挑戦として「天怪篇」を始めるにあたっての最初の巻となります。
それまで単巻で展開してたのにいきなり続き物になって大丈夫なのか、読者は受け入れてくれるのか、成功させるためにはどういう仕掛けを入れたら良いか…等々考えながら本の顔となる表紙カラーを組み立てていきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1697357694268-ba1rHYj4ph.jpg?width=800)
大崎さんからは「このシリーズはコン七は妖怪お江戸から出ていろんな場所へ旅に出ます」と聞いていたので、最初に考えた案は旅モノを意識してオモテ表紙(表1)からウラ表紙(表4)まで繋がった絵にして、これから旅立つぜ!なコン七とワ助、ウラ表紙にはゲストキャラであるおタマと申公、曲がりくねった道にそびえたつ山、そこにバラッと配置された敵の妖怪軍団…と、キャラクターがまぶされた観光地の紹介図のような画面を考えてみました。
ちょっと楽しげで、開放感がある感じを狙っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1697357705284-BEuOC4eLjv.jpg?width=800)
もう一つは旅衣装と、明らかに妖怪お江戸とは違う地域色ある風景のオモテ表紙(表1)。
ウラ表紙(表4)はこれまではフレーム外のメインキャラと、フレーム内のゲストキャラという描き方をしていました。
▼参考 3巻ウラ表紙(表4)▼
![](https://assets.st-note.com/img/1697358891273-zAniw7J7CD.png?width=800)
フレーム内は今巻のゲスト妖怪キャラたちと舞台となる妖虎浜をちらっと
このフォーマットはこれまでの巻とは一新したいと思い、試みとして全てのゲストキャラクターを大きく描いてこんなに沢山の妖怪キャラクターが出てくるぞ!という狙いと彼らの顔、表情を見せたいと考えました。
![](https://assets.st-note.com/img/1697359129785-PvB7ddH9kG.jpg?width=800)
上記大ラフ2点を送ってから大崎さん、担当編集さんから意見が戻ってきます。
「新たな戦いがはじまる感じが欲しい」
「表4は既存フォーマットのままで良いのでは」
それを受けて再度検討します。
![](https://assets.st-note.com/img/1697359311674-Pvdv4Q1AII.jpg)
この方向で各人の意見が決まったので、ここからいろいろ調整しつつ描き込んでいきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1697359545422-0XsiX2EPpZ.jpg?width=800)
洞窟のような怪しい場所で妖忍たちが迫ってくる!といったシーンです。コン七の手には狐火が灯り、カラーの時に光源になります。
また、それまでの1~4巻は主人公以外の背景の絵はフレームに入っているのですが(原画からそう意識しています)、天怪篇でとにかく私の狙いとして、表紙の開放感(ウラ表4が既存と同じになるので尚更)と従来の巻とは違う新しいシリーズを意識した方が良いと考え、それを伝えて描いています。
![](https://assets.st-note.com/img/1697359951279-AOCAjprMUZ.jpg?width=800)
新シリーズである5巻は原画から一枚絵として描き、背景も全面を描き込んで今回はフレーム無し、タイトルなどのデザインを絵に被せてもらいたいということを担当編集さんに再度伝えて作画を進め、彩乃さんに無理を言って着彩をお願いしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1697360206935-GCq0t97WGn.png?width=800)
背景、従来の巻の面積よりもかなり大きくなって描き込みとバランス取りの作業量が倍増した中で仕上げてくれた彩乃さんには感謝しかないです🙇
ところがどっこい
最終的な5巻表紙
編集さんから「表1デザインができたので確認してください」と送られてきたのですが…
![](https://assets.st-note.com/img/1697360570819-CaKxM7UcCk.jpg?width=800)
結局、1~4巻と同じでフレームつけて背景が隠れてるじゃないですか😂!!!
担当編集さんからなぜフレームが復活しているのかの話を伺って色々説明を聞いたものの、思った以上に保守的というか作家側からの提案での冒険がこんなにもできないんだなあ…と、いくらこちらから狙いや効果を話しても結局ダメだったんだな…ってこの時点でかなりガッカリしたのを今も忘れてないです。
毎回なんだかんだで時間足りない中それを工面して描いているので、従来通り背景のフレームの入った表紙にするつもりでいたなら描くのも塗るのも面積をもっと少なくできるので、最初から
「表1も表4と同じく今までと同じにしましょう」
としてくれた方が作業量的にも良かったんですが…
その後の表紙カラーのお話
工夫をし、かなり意欲的に挑んだ天怪篇の表紙がこうなってしまったことは本当に納得できず、ずーーーーーーーーーーーーっと打ち合わせのある時やことあるごとに表紙カラーについて文句を言い続けてました。
編集さんも文句を言われ続けて辛かったかもしれないですが、こういうのはその後の事を考えてもナアナアで曖昧にしてはいけないと思っています。
自分はこう思う、こうしたいという意思表示をしないと何も変わらないですし、なんの為の新シリーズへの決意と工夫だったのかという想いは軽いものではありません。
…って感じだったのですが、天怪篇以降、ようかいとりものちょうは新シリーズ「乙」となり「古都怨霊篇」がはじまり、そこからは今回の5巻表紙で最初に構想して伝えていたオモテウラ表紙がつながる一枚表紙でフレーム無しでのカラー絵になりました。
これは9巻から乙になるにあたっての大崎さんからの希望書でそう(オモテウラで一枚絵)だったんですが、乙までシリーズが続いたことでやっと実現できたのかも…と思うようにしています。
表紙絵ギャラリー
![](https://assets.st-note.com/img/1697361886153-nPO5RvfCm7.png?width=800)
その後『「ようかいとりものちょう」とくしゅうサイト』が立ち上がり、そこの表紙ギャラリーでフレーム無しの絵も公開されることになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1697361987710-TGlloQWggK.png?width=800)
この表紙絵ギャラリーは私の尽きることのない度重なる文句の山から生まれたものかもしれない…
そう、まるでそういう怨念から生まれた妖怪のように。
次回は乙の表紙の中からひとつラフから仕上げまでの流れをご紹介しようと思っています。
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