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強いの意味を探している

強いってなんだろう。
強くなりたいわけじゃないのに、強くなってしまった。
でも、あの人を思い出す度、強い人になりたいと思う。


はじめまして。
エンタメ×社会問題解決コミュニティ「Aria」に所属している、なずなと申します🌼
普段は芸大生をしながら、性別の枠に捉われないイメージコンサルタントの「ジェンダーレスパーソナルカラー診断」を運営しています☺️
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今日は、私の過去についてお話ししながら、「強い」の意味について、考えていきたいと思います。



強く生きなければいけないと思っていた。

自分がLGBTQに該当する人だ、と気がついたのは、丁度渋谷区でパートナーシップ制度が導入される前の年だった。
ほんの6年前の話だけれど、当時は未だにテレビで「禁断の?!レズビアンカップルのディープな世界に迫る」みたいな特集もしていたし、バラエティに出るゲイは「オカマ」という面白おかしい肩書きがないといけない風潮があったように、今よりもLGBTQへの風当たりは強かったような気がする。

当時中学生の私は同性カップルが生きていくことについての正しい知識も無くて、「私は一生1人で生きていくんだ」と漠然と思っていた。

今考えてみれば私は男性も女性も好きになるから、将来異性と結婚する可能性だってあるし、広い世界を見てみれば長年連れ添って生きている同性カップルも沢山いる。
それでも、自分が同性をパートナーとして生きていく選択をした場合に法的な手立てが一切無いという不安と冷たい社会の目は、当時中学生の私に「強く生きる」と決心させるのに十分だった。

1人でしか生きていけないから、誰に傷つけられても自分の足で立っていられるように強く生きなければいけないと思っていた。

強くならなくていいならなりたくなかった。
でも、強く生きるしかないのだと、思った。


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私は人生の中で、「この人になりたい」と思ったことがほとんどないのだけれど、はじめて「こんな風になりたい」と思った人がいる。
中学3年生の頃の担任の先生。

彼女は、強くて美しい人だ。

彼女は底無しに明るくて、優しかった。
体育の先生で、いっつもジャージを着ていて、短く切り揃えられたショートカットが特徴的だった。
海の近くの出身で、たまに教師とは思えないくらい口の悪い発言をするのが好きだった。

彼女に担任を受け持って貰っていた頃、これまでの人生で、きっとこれからの人生の中でも1番最悪なことが起きた。


何があったのかは言及しないけれど、人間ってこんなに死体みたいに生きられるんだ、と思うくらい苦しい出来事だった。
友達にはとても相談できることでは無かったし、周りに頼れる大人もいなくて、それがすごく辛かった。
自分の人生に、また心から笑える瞬間が来るとはとても思えなくなった。

そんな時、ただ唯一そばにいてくれた大人が、彼女だった。

なぜ彼女が私に声をかけてくれたのかは未だによくわからないけれど、彼女は私と2人っきりで、沢山話をしてくれた。
絶対に他人の前で弱みを見せたくない私も、彼女の前だけでは素直になれて、辛かったことも苦しかったことも、全て話した。
この一件で妙に大人になってしまった私も、彼女の前でだけは年相応の子供でいられた。


大丈夫、大丈夫。と彼女はよく言った。それは決して無責任な言葉じゃなくて、彼女が言うと、本当に大丈夫になった。

自暴自棄になって、進学も諦めようとしていた私に「自分の人生でしょ。自分で考えな。」と彼女は言った。
強い言葉だったけど、その言葉は優しかった。

私が一歩動き出したときも、彼女は「大丈夫、大丈夫。」と背中を摩ってくれた。

彼女がそう言ってくれたから、私は今、自分の人生を自分の足で歩く努力ができているのだと思う。


ある日、彼女は若い頃の話をしてくれた。
彼女は、とても苦労して育ったらしい。
いつも馬鹿みたいに明るくて、うるさくて、周りの人も笑顔にさせる熱い人なのに。
そんな彼女が、重くて苦しくて、聞いている方も辛くなるような過去を持っているなんて、全く知らなかった。

強い人だと思った。
人の痛みがわかる人は、強くてきれいなんだな、と思った。

彼女がこんなにも本当の意味で優しいのは、強いからなんだ、と思った。


彼女はすぐに子育てのために学校を辞めてしまって、それからパタリと会わなくなってしまったけれど、今でも彼女は私にとっての希望だ。

私もいつか、誰かに「大丈夫、大丈夫。」と言ってあげられる人になりたい。
私もいつか、強い人になりたい。



強くならなくてはいけないと思った私と、強い人になりたいと思った私。
ちぐはぐだけど、どっちの私も、きっと本当の私だ。
強いの意味を、探している。


【ライター:なずな  @reinette_nazuna

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