【読書】令和の巨人軍 新潮新書 中溝康隆著


元々著者はスポナビブログというスポーツ専門のブログサイト(閉鎖済)の中で有名なブロガーだった。自己紹介で述べたように野球少年だった巨人ファンであり、スポナビの中でも巨人について書いてあるブログを色々と見ていたのだがその中でもプロ野球死亡遊戯というタイトルで執筆していた著者のブログの情報量、更新頻度は圧倒的だったことを覚えている。

昭和、平成の時代を振り返り多少のノスタルジーに浸りながら現在の巨人軍を語る。昔の巨人は大衆性があった。試合は毎日のように地上波で中継され、そこで活躍する巨人のスターはイコール国民的スターだった。昭和のON、平成のゴジラ。そんな「あの頃」の巨人に比べると現在は全国的な認知度のあるスターはいないがそれでもチームは進化し続けている。「今」の巨人も十分に面白いという内容。

私が野球、もとい巨人ファンとなったきっかけは、まず友達のやっていたパワプロのゲームから入り、次はやはり夕方何気なくテレビでやっていた野球中継から。テレビでの試合を最初に見たのは恐らく2000年のON決戦、その後下の名前の漢字が部分的に一致しているという理由で仁志を応援し始めた。そこから毎日の試合中継を見るようになる。地方の巨人ファン、引いては本書にある「なんとなく巨人ファン」の典型例だろう。

少年野球のチームに入団した2002年が私にとっての「あの頃」だ。そんな年に限って私の推しの仁志はケガであまり試合に出られなかったのだが、チームはペナントをぶっちぎって優勝、日本シリーズも西武を圧倒して4連勝した。巨人のスターであり、国民的スターでもあったゴジラ松井が日本にいた最後の年。パワプロ等でそれよりも前から名前を知っていはいたが、実物の巨人の松井の活躍を私は1年しかみていない。巨人はそこから日本一に返り咲くのに7年かかった。

2004年の史上最強打線という名前は実際の破壊力から額面通りに使われることもあれば、最終的な順位を踏まえ皮肉交じりに使われることもある。本書の中でもこの打線を虚しいと表現しているが、当時野球少年の私は素直に「すごいメンツだ!」と楽しみにしていた。小久保もタフィ・ローズも実際の姿はあまり見ていなくてもパワプロで何度もプレイしていて、ダイエー・近鉄の主砲だということは分かっている。松井が抜けて代わりに4番に入った清原は故障がちでほかの選手も成績を落とすなど攻撃力が物足りなく映っていたところに新しい大砲が来るということは魅力でしかなかった。

「小久保もローズも巨人だって!」と息巻く私に複雑な表情の父の様子が不思議だったのを覚えている。90年代の補強は物心ついていないので知らない。少年には逆指名ドラフトの裏金だのFAだの他球団の助っ人強奪だの金にモノを言わせて選手を獲得していた背景など分からない。小久保の無償トレードは流石にどうしたんだろうとは感じていたものの結局巨人へ入団するということでそれ以上のことは考えなかった。1番の仁志が3盗塁しかしなくても28本打つ。ローズ、小久保の移籍組がそれぞれ40本以上打つ。7、8番の阿部が33本打つ。巨人の選手が打ちまくるのを見るのが好きだったのだ。

阿部の引退で「あの頃」の巨人にいた選手は皆引退した。「今」の巨人には私のノスタルジーを引きずるような選手はもういない。あの頃分からなかったことも大体分かるようになってきた。FA補強についても思うところが全くないわけでもないが、巨人てそうだもんねと「伝統芸」をみているような気持ちである。むしろ今は坂本や岡本といった生え抜きの主軸が堂々と君臨している点で、オガラミがクリーンナップにいた時代よりも余裕をもってその様子を見ていられる(無論小笠原、ラミレスも巨人にとって偉大な存在であることは間違いない)。

現状(2020/8/20時点)打線が湿り気味なのがもうちょっと何とかならないかなと思う。極端な話去年までの西武打線みたいなのがすごく面白いと思う。投手陣は踏ん張っている、一軍半の野手がどうにも殻を破れないのがもどかしいが彼らが山賊化してスタメンに定着したらすごく魅力的ではないだろうか。もうペナントも半分近く消化してきている。坂本丸岡本の復調は勿論のこと、脇役の選手たちにも是非頑張ってほしい。

感想文というよりは自分の回顧録みたくなってしまった。とにかく私はこれからも細々とゆるーく巨人を見ていきたい。

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